【ライブレポート】マキタスポーツ本領発揮、音楽批評と笑いが襲う新たなエンターテイメント

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さらに、最近の話題として世の中の“キラキラ化”を挙げたマキタ。その代名詞がキラキラネームで、自分の子供が通う学校に“電気”と書いて“テクノ”と読ませる子がいるらしいが、キラキラ化は校歌にまで及び、グッと来るメロディやシンコペーションの採用によって、まるでポップソングのように胸を締め付けようとしてくるもんだから逃げるの大変なんですよ、と語った。自ら作ったベーシックな校歌風ソングを、曲調や歌唱方法ともにR&Bや、ヒップホップ調にアレンジしていき、見事に我々の気持ちもザワザワさせてくれたのだが(笑)、こんなふうに誰もが“歌が上手い風”に歌を歌えるわけでも、ましてや“それっぽいラップ”を刻むことができるわけでもなく、音楽的な基礎体力の高さにまた恐れ入る。

また、“大丈夫”というJポップに溢れる魔法のキーワードを、牧歌的な王道メロディに導かれるままにひたすら唱えると、“なんだか大丈夫な気がしてくる”作用を歌にしてしまった曲「きっと、大丈夫」で見せた謎の大団円も、マキタならではの批評眼が光っていた。

── と、マキタスポーツをかなりの優等生のように綴ってきたが、もちろん到底レポートできない内容もたくさん披露してくれたわけだ。彼の批評眼とは、文字通り怖いほど冴えているため、これはもう実際のライブに足を運んでもらうのが一番としか言えない。特別ゲストとして登場した浅草キッドとのトークに関しても、毒っ気は加速するばかり(笑)。ちなみに、当時28歳だったマキタが、年齢なども一切問わずに「ビートたけしの遺伝子を継ぐ者」という項目だけを参加資格とした浅草キッド主催ライブ<浅草お兄さん会>で第5代チャンピオンとなった、という特別な関係性が浅草キッドとマキタのあいだには存在する。

<オトネタ>は、毒にも薬にもならない漂白された世の中の言動に物足りなさを感じている人には是非おすすめしたい場だ。ラストソングの前にマキタもこう話した。

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「……久しぶりに<オトネタ>をやるに際してノイローゼみたいになりましたよ。でも面白い体験でした。どんどん自分の性格が悪くなっていくんです。面白いですね、お笑いっていうのは。悪魔的な心理も働くからこそいいのかな、とかね。で、自分でそういうスイッチを押せばいいんだって、メンタル面でいい修練にもなりましたよ。これからも面白いこと、面白いネタ、面白い行動でみなさんの注目を集めていけたらいいなと思っているわけです」

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と同時に、あくまでもポップなスタンスで構えているのが今のマキタスポーツであり、そこがとても痛快だと思う。先日公開したBARKSでのインタビューにおいても、元来パンクな性分を持つマキタはこう話した。

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「人と同じじゃないことをやりたいっていう天邪鬼的な考え方が根本にあるのならば、今の時代は、人と同じことをやらないこと自体が一番凡庸なことですよね。大衆が存在していない/お茶の間がないっていう時代ならばこそ、今一番のカウンターは、より大勢の人たちに向けて納得されるようなポップスを作ることだとも思います」

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今回のステージ上でも<オトネタ>を毎年継続的に開催していきたいと誓った。<オトネタ>をシンボリックな場としながら、マキタはこれからさらに愛すべき曲者になるはずだ。前々からマキタスポーツには、性別も年齢も国籍も問わない天性の愛嬌がある気がしていたのだが、自らも目指しているように着実にかわいいおじさんになっている。冗談ではなく、これは大きなポイント。これだけの批評眼の鋭さと、それに相反するかわいらしさという鎧まで身につけていれば、ユーモアがあって歌って踊れて喋れて書けて考察して演じる、最強のエンターテナーになるのも時間の問題と思う。唯一無二のミュージシャンとしてのマキタの可能性を感じ、嬉しいゾクゾク感に襲われたエポックなライブであった。

取材・文=堺 涼子(BARKS)
ライブ写真撮影=Yasuhiro Ohara

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