【インタビュー】浅葱、ソロアルバム完成。「もうそろそろ俺死ぬんじゃないかな(笑)」

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2018年にメジャーデビュー10周年を迎えるヴィジュアル系バンド、D。彼らがデビュー時に在籍していたavex内のレーベル「HPQ」から、バンドのボーカリストである浅葱(ASAGI)が、ソロ初となるフルアルバム『斑』を1月31日にリリースした。

◆浅葱 撮り下ろし画像

“和”をコンセプトにSUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN)、真矢(LUNA SEA)を始めLa’cryma Christi、Janne Da Arc、SIAM SHADE、PENICILLIN、DIR EN GREY、黒夢、SADS、NIGHTMAREからA9、Sadie、己龍、GOTCHAROCKA、DIAURAなど、10年以上のこのシーンの最前線で活動してきた浅葱だからこそできるやり方で、ヴィジュアル系の歴史をたどるように代々のスーパーバンドからゲストプレーヤーを招いて制作していった本作について、浅葱に話を訊いた。

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■根本にあるのは人の気持ちを救ってあげたいとか、そういうもの

――こんなゲストプレーヤーを集められる浅葱さんって、いったい何者なんですか?

浅葱:何者‥? えっと、秋田のヴァンパイアですかね。あ、今は宇宙のヴァンパイアです。いや、ソロでは月界の御子です。ハハハッ(笑)。Dというバンドをやっていまして。そのなかで2006年にソロシングルを出したんですけど、その後は2016年にソロのメジャーシングルを出して。今回ソロ初のフルアルバムを出します。

――まず基本的なことなんですけど、ソロとDはどんな違いがあるんですか?

浅葱:一番違うのは世界観です。Dはバンドなので絆を描いたものが多かったりするんですけど、ソロだと圧倒的に孤独で暗い世界観が多い。それが一番の違いかなと思います。

――今回フルアルバムを作るにあたって、コンセプトが「和」になった理由は?

浅葱:最初は、2016年に出したシングルを含めたフルアルバムにしようと思ってたんで、そのときは各国の民族音楽を取り入れたものを作ろうと思ってたんですね。そのなかで、和の曲が最初に思いついて。「月界の御子」という曲はかぐやの子孫が地球にやってきたという世界観なんですけど。“じゃあ月界の御子が月に戻らず、天の羽衣を自分で断ち切って自分の意思で地球に残ったら何をするんだろう”と考えたとき、妖怪を退治しようと思って「物の怪草子」の世界観、「妖刀玉兔」の世界観が次々と溢れでてきました。

――気づいたら和なアルバムができてしまったと。

浅葱:そうそうそう(笑)。制作過程でこれはフルになるなとは感じていましたが。


――そこで、アルバムの話に行く前に聞きたいことがあるんです。そもそも浅葱さんが物語を作るようになったきっかけはなんだったんですか? 子供の頃から妄想、空想するのが好きな子だったとか?

浅葱:例えば「畏き海へ帰りゃんせ」という曲は海がテーマなんですけど、曲を作ってると故郷の海が思い浮かぶんです。海を見ながら物思いにふけったり、海に向かって歌ったりしてたんですよ、幼い頃から。海と山の間で自分は育ったんですね。だから山にもよく行ってて。森が大好きなんですよ。近くの森に行くと熊の爪痕があったりするし、授業中に学校のグランドに山からカモシカがおりてきたり。

――えっと、それは妄想ですか?

浅葱:いや、これが本当なんですよ(笑)。それぐらい自然やら動物に触れることが多かったので、自分らしい曲を作ろうとすると、どうしても自分が育ってきた自然とか動物につながることが多いんです。

――それが、どうやって一つの物語になっていくんですか? 子供の頃からメルヘンチックな妄想男子だったんですか?

浅葱:Dは妖精をテーマにした曲なんかもありますから、きっとそうなんでしょうね(笑)。森に行くと様々な動物の声、木々、風の音が聞こえるんですね。そういったなかで妄想というか。そこで動物の気持ちになってみたり、というのは小さい頃からやってました。森の生き物で、例えば虫。蝶とか色合いが派手じゃないですか? 人間では思いつかないようなバランスで調和してて、しかもそれが森に馴染んでて芸術的だなと子供ながらに思ってたり。

――そこで生物学者になりたいと思ったりはしなかったんですか?

浅葱:ああ、たしかに! でもまったく思いもしなかったです(笑)。その頃は「人の役に立つお仕事をしたい」と思って、お医者さんになりたいと言ってましたね。今は音楽をやってますけど、根本にあるのは人の気持ちを救ってあげたいとか、そういうものなんで。そこは変わってないですね、形は違えど。

――物語はどんなときに思い浮かぶんですか?

浅葱:曲を作りながらが多いです。先に物語を書いて、その景色が思い浮かぶメロディやコード進行を考えたりすることもありますし。でも、かならず歌詞を書く前に物語を作ります。

――一度物語を書いて、それを歌詞に変換していくんですか?

浅葱:そうです。それを毎回やってます。


――物語を書くことも、子供の頃からよくやってたんですか?

浅葱:子供の頃は物語を読むことが好きでした。

――歌詞を書き始めて、物語を描くようになったと。

浅葱:そうですね。今回は特に物語色が強くて。Dでも物語はやってますが、例えばヴァンパイアーストーリーだったら、そのある部分を切り取って曲にしてたんですけど。今回は短編集のように1曲ごとに1つの物語として一旦完結してるというのがやりたくて。そこは、ソロならではのやり方だと思います。

――物語は手書きで書くんですか?

浅葱:パソコンです。曲数が多いので、書いててたまに分からなくなるときがあるので、そういときは手書きで相関図を作って。楽しいですよ。そこで妄想するのが(笑)。

――楽しんでるのが表情から伝わってきます(笑)。音楽家じゃなくて小説家になったほうがよかったのかなと思ったことは?

浅葱:たまーに思います(笑)。今回でいうと「アサギマダラ」にまつわる短編小説も書いたことがありますし。Dに「蒐集家(コレクター)」という曲があって。それは蝶のお話で、今回の「アサギマダラ」とつながっているんですけど。音楽でやりたいことが多すぎて、なかなか本を出すまでには至らないですね。それよりも「歌いたい」という気持ちが一番大きいので。自分が思い描いた物語をメロディに凝縮させて歌う。そこには“コンストラクションの美学”っていうんですかね、そういうものがありまして。メロディがあると文字数が決まってくるので、その中で完成させるのがまたとても楽しくて(笑)。「よし。完璧だ!」ってなったときは、「俺、今生きてるな」と本気で思えるんです。そう思うと同時に「もうそろそろ俺、死ぬんじゃないかな」と思ったり。だから、怖いんです。はははっ(笑)。今回は「アサギマダラ」はそうでした。自分の名前が入ってるし、アルバムの最後に自分を出しきった完璧な曲、完璧なアートができたと思った瞬間「そろそろ死ぬのかな」と思いました。

――まだまだ生きてて下さい! ではここからはアルバムについて具体的にうかがっていきますね。

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