【インタビュー】浅葱、ソロアルバム完成。「もうそろそろ俺死ぬんじゃないかな(笑)」

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■ソロではこれまでよりも更に細かいところまで歌を突き詰めることができた

――アルバムに収録されている物語は、ファンタジックなものだけではないですね。

浅葱:残酷な表現もあるんですけど、古語だからこそ表現しやすかったんです。例えば「アサギマダラ」の“ うれを滅ぼして”を、“お前を殺して”と歌ったら伝わり方も全然変わってきますからね。古語だからこそ、よりコアなところを歌詞では表現できました。

――古語は勉強されたんですか?

浅葱:勉強し直しました。いろんな辞書、古の物語の本を買い集めて、照らし合わせながら。とっかかりは大変でしたけど、後半自由に扱えるようになってからは楽しかったですね。

――アルバムの歌詞を見て思ったんですが。古語は日本語が綺麗ですね。

浅葱:綺麗ですし、響きも美しいです。とくに古語は、短い言葉のなかにいろいろな意味がある。

――そう! たった2文字のなかにものすごい意味が凝縮されている。浅葱さんのお好きな凝縮の美学がここにもあって(笑)。

浅葱:そうなんですよ!「かは」という反語2文字で「〇〇できようか、いやできるはずがない」みたいな意味合いが表現できる。古語って深いなと思いましたね。自分が表現したいものにバッチリ当てはまる古語が見つかったときは「これこれー!」って、ハマったときの快感はありました。それがすっごい楽しいんです。

――アルバムは「和」、「古語」とある意味、古典の授業みたいな側面がありながらも、じつはえらくポップだという。

浅葱:ああー。ありがとうございます。聴きやすさは追求したので。

――ここまでコンセプトを統一したにもかかわらず“こってり感”がない。それぐらい風通しのいい作品になってたことに、まず驚かされたんですよ。

浅葱:嬉しいです(笑)。それがやりたかった事なので。すべてはメロディありきなんです。だから、バンドよりもとにかく歌に比重をおいて、メロディ、というのはこだわったところです。それを表現する歌も、例えばテンポにしてもキーにしても、細かいことに納得いくまでこだわって、歌録りにじっくり時間をかけて。ソロでは、これまでよりも更に細かいところまで歌を突き詰めることができたのも大きかったと思います。


――メロディありきというスタンスを一番感じさせられたのが「アサギマダラ」。和的要素は他の曲よりは薄くて、圧倒的にメロディも突き抜けていて、アルバムのなかで異彩を放ってるんです。

浅葱:そうですね。この曲だけはすべて声で作ったんですよ。スタジオこもって無心に蝶になることを妄想して。蝶は幼虫、蛹、成虫になるじゃないですか? それをAメロBメロサビでやってみたいなと思って。アサギマダラという蝶は、毒の葉っぱを食べて大きくなるんですね。

――なんでそんなこと知ってるんですか? やっぱ『ファーブル昆虫記』とか好きでした?

浅葱:好きでした(笑)。いまでも動物図鑑買ったりしますから。幼虫が毒を食らって大きくなるとか、人間ではありえないじゃないですか? どういう感覚なんだろうと思ったら、こういう感じで歌おうというのが見えてくるんですよね。だからAメロは喉から毒が入ってくる感じで妄想して(笑)。なかなか虫になって歌う人もいないですよね?

――ええ(笑)。「畏き海へ帰りゃんせ」は、怖い物語なんですか?

浅葱:人以外のものになって人間を表現すると、暗い感じの曲になることが多くて。これは、人魚の視点から人と結ばれ、人に裏切られてという物語を描いてますね。

――この曲でSUGIZOさんにヴァイオリンをお願いしようと思ったのは?

浅葱:曲ができたときから夜の海と月が見えて、これはヴァイオリンのソロだ、SUGIZOさんに弾いてもらいたい!と思って。「ぜひお願いします」といって、X-JAPANとLUNA SEAとソロをやってた時期なので断られて当たり前だと思ってお願いしたら引き受けてくださって。SUGIZOさんは器が大きくて素晴らしい方です。上がってきたものも完璧で。曲の景色、海鳥の声、人魚の歌と叫びを表現してくださっていると僕は感じましたね。「これはアート、芸術だな」と思いました。

――最初から曲をパーフェクトにする最後の1ピースとして完璧な形で仕上がってきたと。

浅葱:そうなんです。


――曲もパズルのようにパーフェクトな形へと仕上がっていくところが楽しいんですね。

浅葱:はい。全然関係ないですけど、プラモデルも好きでした。あれも作る過程が楽しいじゃないですか? 既に完成されたものよりも。でも、友達とかは僕が細かくきちんとしたものを作るから「これ作って欲しい!」って頼んできて。「作るのが楽しいのに。なんでだろうな」って。人に頼む気持ちが分かんなかったんですよ。自分の手で作っていって、完成したものを自分で眺めるのが楽しいのに。愛着もわくし。

――曲を完成させるのと同じですね。そこは。 SUGIZOさんと同じLUNA SEAからはドラムの真矢さんが和太鼓も叩いています。

浅葱:そうですね。ドラムの他にも太鼓と鼓をやっていただきました。幼い頃からやってらっしゃったのを知ってたので。今回は絶対お願いしたいなと思ってオファーしました。

――浅葱さん、そんなエピソードを知ってるなんてもしかしてLUNA SEAファンですか?

浅葱:もちろん大好きです!! バンドをやろうと思ったのはBOOWYがきっかけだったんですけど、ヴィジュアル系やろうと思ったのはエクスタシーサミットのビデオを観てからですから。あのビデオを観て、次のライブからメイクして黒服着てました。

――サビがポップに飛躍していく「蛍火」は、ギターがさらにこの曲にポップネスをあたえてくれていて。

浅葱:千聖(PENICILLIN/Crack6)さんですね。トリッキーかつ熱い、とても印象的なギターですよね。さすが千聖さんだと思いました。Shinya(DIR EN GREY)くんのセンスが光るドラムも良い味を出してくれています。

――その次の「大豺嶽〜月夜に吠ゆ〜」、「鬼眼羅」、「物の怪草子」は浅葱さんに加え、樹威(GOTCHAROCKA)さん、yo-ka(DIAURA)さんの“東北トリオ”のコーラスが炸裂してました。

浅葱:元々、昔から樹威とは二人で“東北ブラザーズ”と言ってたんですが。そこにyo-kaが加わってトリオになりました。仲良いんですよ(笑)。


――ここではコーラスも古語で。「大豺嶽〜月夜に吠ゆ〜」では“ビョウ”とかいってて。

浅葱:そうなんです(笑)。狼とか犬の鳴き声を昔の人は“ビョウビョウ”と表現してたみたいなんです。2人に“ビョウ”とか嫌だっていわれたらどうしようと思ってたんですけど、思いきり狼のように叫んでくれました(笑)。

――ユニークな変拍子を入れた「白面金毛九尾の狐火玉」はライブでも盛り上がりそう。

浅葱:これは“九尾の狐”だから9拍子で作ったんです。歌詞が出来上がったと思ったら、偶然9月9日で。じゃあこれは9曲目にしようと思って。9尽くしの曲なんです。ライブでは扇子を使いたいかな。

――その一方で「妖刀玉兎」などは能を思わせる楽曲の仕上がりでしたね。トラックも日本古来のアコースティックで、真矢さんの和太鼓と…。

浅葱:琴だけですね。妖刀玉兎が月の宝としてあって。かぐやの子孫として宝の刀を受け継いでいるところ、正確には勝手に持ち出すところを歌で表現していきました。

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