【ライブレポート】ハーツ、5年ぶり来日公演で見せた不変の美学と進化の軌跡

ハーツの一夜限りの単独来日公演が、1月29日（月）、東京・マイナビBLITZ赤坂にて開催された。

◆1月29日（月）東京公演 画像

通算4作目のスタジオ・アルバム『Desire』を携えて、10月末のロシア・ノボシビルスクを皮切りに12月のロンドン・O2 Academy Brixton、そして地元マンチェスター・O2 Apollo Manchesterへと続くヨーロッパ・ツアーを行なってきた彼ら。日本でのライブは2013年の＜FUJI ROCK FESTIVAL＞出演以来およそ5年ぶり、単独公演としてはデビュー・アルバム『Happiness』発表後の東阪ツアー以来、実に7年ぶりとなる。

ツアー開幕前にメンバー自ら予告していたとおり、セットリストは最新作からのナンバーを軸としつつ過去の名曲も網羅したグレイテスト・ヒッツ的な内容に。デペッシュ・モードやティアーズ・フォー・フィアーズら、自身が敬愛するアーティストたちの影響を色濃く感じさせた初期作から、より開放的でポップな色合いを強めた前作『Surrender』、そしてそのさらなる進化形を示してみせた最新作『Desire』まで、彼らの軌跡と新たな魅力を凝縮した彩り豊かなステージが繰り広げられた。

暗転した舞台にバンド・メンバーと二人のシンガーが現れると、オルガンの音色とコーラスが賛美歌のように美しく響くイントロ曲「Desire」に導かれて、セオとアダムがいよいよ登場。新作の中でもとりわけキャッチーなディスコ・ファンク調の「Ready to Go」を皮切りに、「Some Kind of Heaven」「Sunday」と新旧アッパーチューンを畳みかけ、序盤からダイナミックなパフォーマンスで観客の歓声やハンドクラップ、ジャンプを煽っていく。


楽曲からヴィジュアル、ステージ・パフォーマンスや演出に至るまですべてが耽美な世界観で貫かれ、その揺るぎない美意識を感じさせる一方で、肉体的なグルーヴを備えた彼らのバンド・サウンドはパワフルそのものだ。アダムが奏でるフラメンコ風のギターも印象的な「People Like Us」や、7人のパフォーマーそれぞれがアグレッシブに押しまくる「Miracle」、セオのシャウトが力強く響く「Rolling Stone」など熱のこもったパフォーマンスが続き、躍動するビートと「みんな一緒に！」の言葉に誘われるがままにフロア全体が声を合わせて飛び跳ね踊った「Better Than Love」は中盤のハイライトのひとつとなった。

さらにヒップホップ風のビートを効かせた「Sandman」で会場を揺らし、“I just wanna see you dancing”と歌われるファンク・チューン「Lights」ではセオ自ら華麗なターンを決めてみせる場面も。「次の曲は君たちに捧げるよ」と届けられた「Wonderful Life」や、ハーツ流のプログレッシブ・ハウス・サウンドが高揚感を煽る「Nothing Will Be Bigger Than Us」で会場の熱狂がピークに達する中、最後は白いバラの花束を手にしたセオがエモーショナルに歌い上げるバラード・ナンバー「Wings」でひときわ大きな合唱を巻き起こし、ライブ本編を締めくくった。



アンコールの声に応えて姿を見せたふたりは、オーディエンスを二手に分けて「We are the, we are the」「We are the beautiful ones」のコール・アンド・レスポンスを誘い、そのまま最新アルバムからのアンセミックなリード・シングル「Beautiful Ones」のパフォーマンスへとなだれこむ。現代に生きるひとりひとりが“自分らしくあること”を讃えた同曲の力強いメッセージが会場一体となってのコーラスで高らかに響き渡る、美しくドラマティックな光景が広がった。

再び花束を手にしたセオが、久しぶりの再会となった日本のオーディエンスへの感謝の言葉を改めて述べると、アダムの奏でるピアノに導かれてデビュー・アルバムからの「Stay」へ。切ない別れの場面が描かれたラスト・ナンバーは自ずと会場のシンガロングを誘い、セオが客席に投げ入れた真っ白なバラの花びらが舞い散る中、万感の思いがこもった“Stay”の大合唱とともに東京公演は盛大なフィナーレを迎えた。

ハーツは1月31日までのアジア・ツアーに続いて、ロシア、トルコで公演を開催。初夏から秋にかけて、各国音楽フェスティバルへの出演も多数発表されている。

取材・文◎井上舞（BARKS）
撮影◎YOSHIAKI KAYAKI