【インタビュー】バンドハラスメント、僕と僕を取り巻く世界との関わりを真摯に柔らかく伝えるEp「鯉、鳴く」

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2015年10月の活動開始から、わずか1年足らずで【SUMMER SONIC METROCK 2016】への出演を果たすなど、速いペースでスケールアップを果たしてきているバンドハラスメント。2月7日リリースの最新音源「鯉、鳴く」が彼らの新たな魅力や特異性を堪能できる作品になったことも含めて、今年の彼らはより多くのリスナーを魅了するに違いない。バンドハラスメントに対する期待の高まりを感じさせるなか全員インタビューを実施。「鯉、鳴く」に関する話に加えて、バンドや各メンバーのプロフィールなども交えたロング・インタビューをお届けしよう。

◆バンドハラスメント~画像&映像~

■本人の意志とは関係のないところで世間がつける名前とか
■そういうことを書きたいということをメンバーに話していたんです


――バンドハラスメント結成について聞かせてください。

斉本佳朗(以下、斉本):僕とベースのはっこー君は小学校の頃から友達で、中学校の時に彼をバンドに誘ったんですよ。学校でバンドが流行っていたというのもあるけど、はっこーはあまり学校に来ない、いわゆる不登校系男子だったんです。

はっこー:“系男子”って(笑)。

斉本:家に引きこもってオンラインのネットゲームばかりしていたので、バンドをやることではっこー君が外に出る機会ができると良いなと思って。それで、中学3年の時に、はっこー君と僕と、もう一人の友達と3ピースのコピーバンドを組んだんです。高校に進学する時に別々の学校になってしまったけど、はっこー君とバンドは続けようと言っていて、僕がボーカルとギターを探すことにして。それで、高校の先輩のワタさんと別のボーカルを誘って四人でバンドを始めて、2年前くらいに井深君が入って今の四人になりました。

――高校生当時から目指すバンド像などはありましたか?

斉本:最初の頃から、コアな方には走らなかったですね。ポップな方向を目指そうという話をしていたわけではないですけど、いろんな人に聴きたいなと思ってもらえる音楽を創りたいという気持ちがあって。そういう意識で曲を作っていった結果、今のスタイルになったという感じです。

はっこー:こういう方向性じゃないといけない…みたいに考えることはなかったですね。ただ、エモーショナルなものが好きだということは、一貫してあった気がする。

全員:そうだね。


――エモーショナルさは、音源を聴いて感じました。では、皆さんはどんな風に音楽やロックに目覚めたのでしょう?

斉本:僕は曲を作って、歌詞も書いていますけど、そんなに熱心に音楽を聴いていたわけではなくて。バンドを始めた時もはっこー君と一緒にバンドをやるということが大切で、こういう音楽がやりたいというのがあったわけではなかったんです。ドラムをやることにしたのも、その場のノリというか(笑)。僕の兄がギターをやっていて、はっこー君がベースをやると言ったので、じゃあ俺はドラムかな…みたいな。バンドを組んで最初にコピーしたのはthe pillowsさんだったんですけど、当時の僕はthe pillowsさんも知らなかった。その時に流行っていた音楽……YUIさんとか、BUMP OF CHICKENさんとかは聴いたことがあるというくらいの感じでバンドを始めたので、誰かに憧れて音楽をやっているというよりは、みんなで一緒に何かをすることが僕の中では大切なことになっています。

はっこー:僕は子供の頃は普通にJ-POPとかを聴いていたんですけど、小5くらいの時に友達のお兄ちゃんの影響でBUMP OF CHICKENさんを知ったんです。それで、ボンヤリとバンドという音楽があるんだということを知って。その後、中学に入る頃にthe pillowsさんと出会って、彼らのライブ映像も見たりして、“バンドってこういうものなんだ、カッコ良いな”と思って、のめり込んでいきました。ベースをやることにしたのは、消去法です(笑)。ボーカルとギターは目立つ役割だということはなんとなく分かっていたので、ドラムかベースが良いなと思っていて。本当はドラムをやりたかったけど、その頃に“リズム隊”という言葉を知って、“隊”ならどっちでも良いかなと思ってベースをやることにしました。ベースを始めて、最初に憧れたのはマーカス・ミラーです。


――えっ? いきなり、シブいところにいきましたね。

はっこー:よく言われます(笑)。でも、マーカス・ミラーは派手なベースを弾きますよね。そこに、すごく憧れたんですよ。それをバンドでやろうとは思っていなかったけど、家ではマーカス・ミラーとか、ソロ・ベーシストをよく聴いていました。

井深:僕は家族全員音楽が好きで、幼稚園の頃から車の中で流れている音楽が洋楽だったり、ポップスだったり、ジャズだったりしたんです。だから、僕にとって音楽は昔から馴染み深いものでしたね。そういう環境で育って、中学2年生くらいの時に僕の兄がバンドにハマって、ハードコアとかも聴くようになったんです。最初はうるさいなと思っていたけど、聴いているうちに、それぞれの音楽にそれぞれの良さがあるなということを感じるようになって。それに、兄貴と一緒にYouTubeでライブ映像とかを見て、バンドはカッコ良いなと思うようになりました。ただ、その頃の自分は違う夢があって、スポーツの道を目指そうと思っていたんです。だから、音楽は趣味の一環として聴くだけで良いなと思っていたけど、高校の時に部活でいろいろと上手くいかないことがあって。すごく嫌な時期だったんですけど、その時に音楽というものが自分の中ではすごく救いになって、元々自分が描いていた夢よりも音楽に惹かれるようになったんです。自分が歌うことで、誰かを勇気づけられたり、背中を押したりできる立場になりたいなと。それで、本気で音楽をやろうと決めたタイミングで、このバンドに出会ったんです。僕は本当に幅広いジャンルを聴くので、特定のボーカリストをすごくリスペクトしたりということはないですね。僕は癖があって、それが魅力になっているボーカリストに惹かれるんですよ。そういう人達から少しずつ影響を受けつつ、自分なりの歌を歌っているという感じです。

ワタさん:僕は、高校に入るまで音楽は全く知らなかったです。高校が決まった頃に、親が家に飾るためにエレキギターを買ってきて、それがきっかけになってギターに触るようになって。見よう見まねで弾いてみたら楽しかったので、すぐに習いに行くようになりました。だから、僕も誰かみたいになりたいと思ってギターを始めたわけではなくて。ギターは楽しいなと思いながら弾き続けていて、今に至っています。

――ワタさんはサウスポーのストラトキャスターを使っていたり、基本的にフィンガー・ピッキングで弾いていたりと、かなり個性的ですね。

ワタさん:指弾きはジェフ・ベックとかスティーヴィー・レイヴォーンが好きだというのがあって。それに、僕は音楽の専門学校に行っていて、そこに通っている間に指で弾くことに慣れてしまったんです。それで、基本的に指で弾くようになったんですけど、指弾きは音が太くて丸くなります。だから、シャープな音がするストラトキャスターをメインにしているんです。ハムバッカーPUが乗っているギターは、機種を選ばないと合わなかったりするんですよね。あと、サウスポー・ストラトはカッコ良いから使っているだけで、特に深い意味はありません(笑)。


▲斉本佳朗(Dr) (Vo /Gt)

――続いて2月7日にリリースされる1st EP「鯉、鳴く」について話しましょう。

斉本:今回は制作に入る前に、本人の意志とは関係のないところで世間がつける名前だったりについて書きたいということをメンバーに話していて。それを踏まえて、リード曲の「鯉、鳴く」を作りました。僕は曲を作る時はいつも先にメロディーを考えて、そこにドラム・パターンを打ち込むんですよ。その後ワタさんとやり取りをしてコードやギターを乗せて、歌とギター、ドラムで100%完成形のデモを作った後にベースを入れる。いつも1番まではスムーズに作れるけど、そこから先はみんなで意見を交換し合って、それこそ何十パターンも作って、その中から良いのを選んだら次のパートに行くということを繰り返すんです。そうやってゆっくり、ゆっくり作っていって、もうベースが入るところないやろうという状態になってからベースが入る(笑)。いつも、そういう進め方をしていて、それは「鯉、鳴く」も変わらなかったです。元々はミュージック・ビデオも「鯉、鳴く」で撮ろうと言っていたんですけど、音源が出来上がってから2曲目の「Sally」で撮ろうということになりました。

ワタさん:「鯉、鳴く」は、まずはメロディーにコードをつけていって、コードだけだと見えにくいところがあるので、ある程度のリード・フレーズもつけて斉本に返して。そこからどういう風にするのかということを、パソコン上でデータのやり取りをして詰めていきました。ギターはバレないように、いろいろやっています(笑)。リード・パートを作る時は、頭の中で鳴ったものをギターに置き換える時もあれば、ギターを弾きながら考える時もあって。デモを聴いてテーマ・メロディー的なものが浮かんだら活かすけど、浮かびづらいパートというのもあって、そういう時はギターを持つようにしています。

――「鯉、鳴く」は、しっかりとコード感を出したうえで、イントロやBメロのリフやサビのオクターブ・メロディーなど、効果的なリード・ギターを散りばめています。

ワタさん:そうですね。でも、歌のメロディーを聴かせたいというのが一番にあるので、邪魔しないことを意識しました。

はっこー:さっき話が出たようにベースはデモがほぼ完成した状態で入れるんですけど、僕的にはそれは結構やりやすいんです。なぜかというと、僕は高校生の時にボーカロイドにすごくハマっていたんですけど、当時はボーカロイドが出始めた頃だったんですよ。だから、ボーカロイドの曲をアップする人も、演奏してみたといってアップする人も両方初心者みたいな段階だった。まだ作曲も演奏も上手くない人がいて、曲ができたところに「ベースを入れました」「ギターを入れました」みたいなことが積み重なって、どんどん楽曲の完成度が上がっていっていたんですね。僕はずっとそれを見ていたから、完成形に近いデモを渡された時に、どういう過程を経て、こういうものになったかが分かるんです。佳朗やワタさんが意図したことが理解できるというか。だから、最後の最後にベースを入れるのは苦にならないです。


▲はっこー(Ba)

――それで、ボトムを支えつつベースが出るべき場所で出るというアプローチになっているんですね。

はっこー:そうだと思います。それに、ベースを考える時はベースを持たないんですよ。ベースラインが浮かんでくるまでデモを聴き込んで、浮かんできたものを打ち込みに起こして、最後にベースを持つ。最近はそういう風にしていて、「鯉、鳴く」のベースもそうやって作りました。

井深:この曲の歌は難しかった……というか、僕らの曲は基本的に難しいんですけど(笑)。それに、今回の「鯉、鳴く」は今までの作品からまた一歩先に進んだことを、僕的には感じていて。これまで挑戦したことのないところだったので、挑戦するという気持ちで臨んだし、自分の成長を感じられる曲でもありましたね。だから、レコーディングはすごく楽しかったです。

――井深さんの歌は、どんな曲であれ、どこかせつなさが香っていることが魅力になっています。

井深:さっき話したように、僕は元々いろんなジャンルが好きではあったけど、常にエモーショナルなものに惹かれるというのがあって。せつない歌はすごく心に響くと思うし、そういう歌を歌うアーティストが好きなんです。それで、昔から音源を聴きながら、この人のこういう息の抜き方は気持ち良いなとか、こういうニュアンスで歌うとせつなさが伝わるんだなと思ったりしていたんです。そういう手法を自分の歌にも自然と活かしているところがあって、エモく聴こえるんじゃないかなという気がしますね。僕は歌を録るにあたって、ここはこういう歌い方で、ここはこう…という風に細かく決め込んでいるわけではなくて、感覚で歌っているんですよ。今回の「鯉、鳴く」は“僕”という子がいて、その子が抱えている悩みだとか、胸の奥にしまっている悲痛な叫び、締め付けられている感じといったものを最初に聴いた時に感じたというのがあって。それを表現することを意識して歌ったら、こういう歌になりました。

◆インタビュー(2)へ
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