【インタビュー】バンドハラスメント、僕と僕を取り巻く世界との関わりを真摯に柔らかく伝えるEp「鯉、鳴く」

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■2月から始まるツアーはファイナルのワンマンを埋めるために
■各地でどれだけ魅せられるかというツアーになると思います


――高い表現力を持っていることが分かります。では、続いてカップリングについて話しましょう。

斉本:2曲目の「Sally」は、僕が女性と一緒にいた時に思いついた曲です。この曲で描いている女性と過ごす中で、たとえばシャワーを浴びている時とか、眠りに落ちる瞬間とかに湧き出てきた感覚をすくい上げて曲にすることが多いんです。「Sally」もそういうところから入っていって、冬の曲にすることにしました。季節感のある曲は、その季節にしか聴けないとリスナーに思われるかもしれないという葛藤もあったんですよ。でも、季節ということを超えて、聴いてくれた人が昔の恋愛の冬の光景とかを思い出すような曲になっても良いなと思って。それで、当初のイメージのままいくことにしました。僕が曲を作る時は頭の中で最後まで出来ている曲と、「鯉、鳴く」みたいに出来ない曲があって。「Sally」は最後まで出来ていたので、ドラムもスンナリ決まりました。頭の中で鳴っているドラムを打ち込んで、メロディーとリズムが入った状態でワタさんに渡して、そこから広げていって…という感じでした。

――ループと生ドラムを上手く同居させていることも印象的です。

斉本:「鯉、鳴く」もそうですけど、四人だけの音とか、楽器の数とかにはあまりこだわっていなくて。僕らはそういうことよりも、楽曲としての完成度や説得力を重視しているんです。そういう体質のバンドだから、必要なものは入れるようにしている。音源のドラムは手が10本ないと叩けないようなところもあります(笑)。

ワタさん:僕も、それで良いと思っています。「Sally」のギターというか、今回の音源はピックで弾いたパートが全体の半分くらいあるんですよ。音色的な問題でそうしたんですけど、それが今までとは違っていて。「Sally」は、サビの裏のリードとかはピックで弾きました。この曲のサビはベルみたいな音のシンセが鳴っていて、それを入れるならピックのほうが良いなと思ったんです。


――そういう選択ができるというのは、ワタさんならではといえますね。それに、今回の音源はギター2本の定位をセンターに寄せていませんか?

ワタさん:今回はギターの定位も自分で決めた状態でエンジニアに渡したんです。一度自分でいつもみたいに左右に振ってみたんですけど、すごくバラバラな印象になってしまって。なので、いつもより寄せています。ちょっとイレギュラーな定位かもしれないけど、全体のバランスとして良い感じになったんじゃないかなと思う。ギターの定位という面の引き出しが一つ増えたことも、今回のレコーディングの収穫でした。

はっこー:「Sally」はデモの段階でサビにベルの音が入っていたりして、高音が煌びやかで、冬の空気の冷たい感じとかがあるなと思って。だから、低音はあまりブヨブヨさせずにスッキリさせて、ハイがきれいに聴こえる曲にすることを目指してベースの音色を決めました。それに、この曲はバンド感よりも打ち込み感が強い曲だなと感じたので、打ち込みっぽいベースということも意識しましたね。イメージ通りのベースに持っていくことができて、満足しています。

井深:今までのバンドハラスメントにも恋愛の曲はいっぱいあったけど、「Sally」は季節感のある曲ということで新しいと思っていて。僕は冬と聞くと澄んでいる空気感だったり、煌びやかな夜の情景、それに寒さの中にあるちょっとした温もりとかを思い出すんですよ。「Sally」は、そういうことを表現できると良いなと思って歌いました。この曲のCメロとかは、個人的に気に入っています。“ガッ!”という感情を、息に込められた感覚があって。この曲はAメロとかは敢えて淡々と歌ってみたりしたんですけど、曲として完成した時に、そういうメリハリもつけられて良かったなと思いました。

斉本:もう1曲の「モノ」は元々僕が考えた物語があって、それを前々作の歌詞カードの裏に載せていたんです。その物語をいつか曲にしたいと思っていて、今回のリリースに合わせて完成させました。


▲井深(Vo)

――「モノ」は、生まれつき顔に大きな傷を持った少年を主人公にしつつ人間の醜さや愚かさを描いていて、歌詞を読んで衝撃を受けました。

斉本:そういう人は多いみたいです。でも、その物語を書いた時のことは、よく覚えていないんですよ(笑)。何を思って書いたのかが、今となっては分からない。さっきメンバーに、「俺、なんでこの歌詞書いたんだっけ?」と聞いたら、「なんか知らないけど、夜中にこの歌詞が送られてきて、歌詞カードの裏に載せたいと添えてあった」と言われました(笑)。この歌詞を書いた時は……たぶん、病んでいたんじゃないですか(笑)。

――どうなんでしょうね……。“傷があるから人は醜いわけではない”ということに真理を感じましたし、かといって人の醜さなどを批判しているわけではないというのがすごく良いなと思いました。

斉本:「モノ」は、僕自身も結末を考えて書いたわけではなくて、最後はそれぞれが考えて欲しいという気持ちがあったんです。だから、そこには答えはないし、説教しているわけでもないし、教訓めいたものもない。それぞれの感性で受け止めて、それぞれの解釈をして欲しいという曲になっています。

――そういうメッセージの発し方は確実に“あり”ですよね。「モノ」は静と動の対比を活かしたアレンジも秀逸です。

斉本:この曲は敢えてですけど、ボーカルを先に録ったんです。ボーカルを先に録って、そこに楽器をつけるという。だから、結構大変でしたけど、それが上手くいって良いものになったんじゃないかなと思います。

井深:歌を録った時は、ギターのコードだけが鳴っている状態だったんですよ。それで、佳朗からこういう曲にしたい、こういうニュアンスで歌って欲しいということを聞いて、仕上がりをイメージしながら歌いました。でも、僕自身は、それほど大変ではなかったです。この曲は歌詞に描かれている場面が映像として浮かんできて、それが心に残る曲だなという印象を受けていたから、それぞれのパートをどういう温度感で歌えば良いかが分かりやすかったんですよね。「鯉、鳴く」とかはすごく感情を“ガッ!”と入れたのに対して、この曲は場面に合わせて、敢えて淡々と歌ってみたりしました。淡々と歌うことで、ちょっとした不気味さが出てくるかなと思って。歌を先に録るという変わった構築の仕方だったけど、最後に全部のピースがカッチリ合わさった感じがして、すごく面白かったです。

ワタさん:「モノ」はもうギターというよりは、エレピとストリングスをつけたという印象です。エレピはあまり使ったことがなかったけど、この曲には合うんじゃないかなと思って。それで、僕が勝手にエレピにいろんなエフェクトを足して、イメージしている世界観を形にしました。この曲は、その辺りの作業が、すごく楽しかったです。

はっこー:この曲は物語がメインで、僕の中では曲というよりは物語に音がついているくらいの感覚だったんですよ。サウンド的にもエレピとかストリングスの曲だなと思っていて、ベースは必要最小限のものを入れたという感じです。でも、それが楽しかったんですよ。初の試みだったからすごくワクワクしたし、完成したトラックを聴いた時も手応えを感じたし。こういう曲をバンドでやれるというのは、バンドハラスメントの強みだなと改めて思いますね。


▲ワタさん(Gt)

――根っからの音楽好きなメンバーが揃っていることを感じます。さて、「鯉、鳴く」は必聴の作品になりましたし、2月から5月にかけて行うツアーも注目です。

斉本:今度のツアーはファイナルが4月5日の渋谷O-Crestのワンマンで、僕達が今までワンマンをしてきた中で一番大きいハコなんですよ。今までは小さいハコを埋めていくスタイルを採っていたけど、それだと成長できないし、自分達にあまり合っていないことを感じたというのがあって。今後はワンマンで大きいハコを押さえて、そこを埋めていくというツアーにしていきたいんです。そのほうが後で見返した時に、自分達が歩いてきた道が分かりやすいから。なので、2月から始まるツアーは、ファイナルのワンマンを埋めるために各地でどれだけ魅せられるかというツアーになる。そういうところで、今までとはまた少し違う空気感が生まれると思うので、そこも楽しみにしていて欲しいです。僕自身は、ライブにはモチベーションは感じていないですけど(笑)。

――えっ、そうなんですか?

斉本:はい(笑)。僕は、制作が好きなので。ライブは力を注いで作った曲を人前で披露して、それをみんなが好きになってくれると良いな…というくらいの感覚です。というか、僕は100%の熱量を発信するバンドというのは苦手なんですよ。お客さんが100%で来てくれて、それにバンドが100%で応えるというのは良いけど、“20%:20%”でも“100%:100%”でも同じことなんじゃないかなと思ったりするので。だから、自分達らしい熱量でやれれば良いかなと。そういうスタイルは今の流行りではないかもしれないけど、僕はそういう感覚でライブをしています。ただ、そこに関しては、メンバーそれぞれ違っていますけどね。

ワタさん:ライブの捉え方は、僕は佳朗に近いかな。僕も制作が好きで、とりあえずライブのことは考えずに、本当に作りたいものを作るんですよ。だから、出来上がった楽曲をライブで四人だけでやるのは基本的に不可能みたいな曲が多くて。それを、ライブでどう演奏するのか、どういうシステムを使って音源を再現するのかということを考えて、必要な機材を持ってきて、試してみて…という作業が好きなんです。ライブとか、生で演奏することならではの熱量みたいなものには、あまりこだわりはないですね。

井深:僕は、ライブがすごく好きだし、ライブをするからには、生ならではのものを伝えたいと思っています。お客さんの顔を見ながら歌って、それに対するお客さんの反応を直で見れるのは楽しいことだから。それに、ライブでしか感じられない良さがあるということを僕自身がいろんなアーティストのライブに触れて感じてきていて、バンドハラスメントのライブに来てくれた人にもそういうものを感じて欲しいんですよ。僕は、いつもそういう意識でライブをしています。あとは、今の僕らは200人くらいのキャパのハコでツアーを廻ったりしているけど、去年結構大きなフェスとかにも出させてもらう機会があって。突然規模が大きくなった時に、僕らの曲はその規模でもすごく映えるなということを感じたんですよ。だから、今度のツアーはそういうことも踏まえて、ファイナルのワンマンはもちろん、その先に向かっていくことを感じさせるツアーにしたいと思っています。

はっこー:みんなが話したように、今度のツアーはファイナルがワンマンなんです。僕らの中には、対バン・ライブではどうしても出来ないことをワンマンでやりたいという想いがあって。初めてワンマンをした時から、演出を凝りたいねという話が出ていたんですよ。ショーみたいなライブにしたいねと。エンターテイメント性のあるライブを見せたいと思っていて、4月5日のワンマンもそういう意識で臨もうと思っている。ファイナルでは各地を廻るライブとはまた違う姿を見せられると思うので、ぜひ両方を味わって欲しいと思います。

取材・文●村上孝之

リリース情報

1st EP「鯉、鳴く」
2018.2.7 Release
\1,512 (Tax in) / SANPA-0003
1.鯉、鳴く
2.Sally
3.モノ
4.サヨナラをした僕等は2度と逢えないから(LIVE ver.)

ライブ・イベント情報

<鳴けば少女は鯉となるツアー>
2018.02.09 [Fri] 東京:Milkyway
ACT MELLOWSHiP / 彼女 IN THE DISPLAY / All Found Bright Lights / VOI SQUARE CAT
2018.02.13 [Tue] 広島:CAVE- BE
ACT EVERLONG / THREE LIGHTS DOWN KING
2018.02.16 [Fri] 名古屋:ell.FITS ALL
2018.02.18[Sun] 奈良:RHEBGATE
2018.03.09 [Fri] 福岡:小倉FUSE
2018.04.05 [Thu] 東京:渋谷O-Crest ツアーファイナル ワンマン

<TOWER RECORDS 梅田大阪マルビル店 RECOMMEND LIVE>
2018.02.20 [Tue] 大阪:梅田Zeela
ACT Lenny code fiction/Pulse Factory/バンドハラスメント and more...

<J:COM presents MUSIC GOLD RUSH>
2018.02.23 [Fri] 東京:新宿LOFT
ACT CIVILIAN 、神はサイコロを振らない、Rhythmic Toy World、バンドハラスメント

<TENJIN ONTAQ 2018>
2018.03.10 [Sat] 福岡:public bar Bassic. / LIVEHOUSE CB / Early Believers / graf / Kieth Flack / LIVE HOUSE Queblick / VIVRE HALL / public space 四次元

<IITOKODORI vol.FIN>
2018.03.29 [Thu] 名古屋:今池REFLECT HALL
ACT Some Life postman

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