【インタビュー】元モーターヘッドのフィル・キャンベル、暴走ロック街道をまっしぐら

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元モーターヘッドのフィル・キャンベルがニュー・バンドを率いて1stアルバム『ジ・エイジ・オブ・アブサーディティー』をリリースした。フィルが3人の息子のトッド(G)、デイン(Dr)、タイラ(B)と、アタック!アタック!などでプレイしていたニール・スター(Vo)と結成したフィル・キャンベル・アンド・ザ・バスタード・サンズは、モーターヘッドを思わせる暴走ロック・ナンバーやヘヴィでグルーヴィーな楽曲を特徴にしており、既にライブ・バンドとしても高い評価を得ている。

この新作『ジ・エイジ・オブ・アブサーディティー』はまさに彼らの持ち味を前面に押し出した内容になっているが、バンドの結成の経緯など、フィル、トッド、ニールに語ってもらった。




――素晴らしいアルバムが完成しましたが、今のご気分はいかがですか?

フィル・キャンベル:最高の気分だ。アルバムについては凄く誇りに思っているよ。ファンのみんなに聴いてもらうのが待ちきれないね。

――そもそもバンドがどういう経緯でスタートしたのか教えていただけますか?

トッド・キャンベル:5年ほど前、俺のバースデー・パーティで一緒にプレイしたのがきっかけだった。ジャミングしてみたら凄く上手く行って、そのままプレイし続けたんだよ。

――ニールとは以前から知り合いだったのですか?

トッド・キャンベル:俺が初めて彼と一緒にプレイしたのが18~19歳の頃だったと思う。今俺は35歳だから、20年近い付き合いということになるよ。フィルがニールと知り合ってからも何年にもなるし、デインとタイラも一緒にツアーをしたりしているから、全員がとても親しい仲なんだ。

――あなた方兄弟はハード・ロックを聴いて育ったのですか?

トッド・キャンベル:そうだよ。モーターヘッドやクラシック・ロックもたくさん聴いたし、グランジも聴いてきた。デインもタイラもコンスタントに新しく登場してきたものを聴いていたし、ギターが基盤になっている音楽全部が俺達の成長期の重要な音楽だったと思う。

――ニールはどういった音楽やシンガーから影響を受けているのですか?

ニール・スター:1990年代のグランジだね。ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、シルヴァーチェアなどだよ。でもスティーヴィー・ワンダーも好きだしソウルも好きなんだ。率直に言って、どんな音楽でも良いメロディがあるものが好きだ。スクリームやシャウトをする音楽は好きじゃない。シンガーが歌うものが好きだよ。

――兄弟3人はそれぞれ担当楽器が異なりますね?

ニール・スター:フィルの息子達は全員が色々な楽器を演奏できるんだよ。ドラマーのデインもギターもベースも弾けるし、バンドの中でどの楽器を演奏しても構わないんだ。でも、デインは全員の中で一番上手いドラマーだから、彼がドラムスを担当することになったのは自然だった。それにギターはトッドが一番好きな楽器だから、長男として弟達にこの楽器をやれと指示も出したんじゃないの(笑)?

トッド・キャンベル:(笑)。

――ニールはずっとシンガーでしたか?どんなきっかけで歌うようになったのですか?

ニール・スター:俺が歌うようになったのは他に誰もやらなかったからなんだよ。最初音楽をやるようになったのは、テレビ番組でニルヴァーナを観たのがきっかけだった。彼らが「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」をプレイしているのを観て、それが俺の人生を変えたんだ。できるだけカート・コバーンのようになりたいと思って、ギターを買って、ギターの弾き方を覚えて、少し弾けるようになったら数人の友人達とバンドを組んだんだけど、シンガーが見つからなかった。それで、見つかるまで俺が歌うと言ったんだけど、結局見つからず(笑)、俺がずっと歌い続けることになった。それ以来、俺はずっとシンガーで、どのバンドにいてもずっとギターを弾きながら歌ってきた。このバンドは俺がギターを弾かない初めてのバンドなんだ。


――1stフル・アルバム『ジ・エイジ・オブ・アブサーディティー』が完成しましたが、曲作りで重視したことは何ですか?

ニール・スター:とにかくできるだけ良い曲にするということだよ。どういった楽器を使うかとか、どういったジャンルかなどはそれほど重要ではない。一番大事なのは俺達の耳に凄く良い曲に聴こえるかどうかだった。それがゴールのようなものだったね。

――曲作りを一緒にしてみて、改めて4人の才能に驚かされたことはありましたか?

フィル・キャンベル:当然ないよ。4人とも若い頃から熟達したミュージシャンだったから。でも一緒に曲作りをするのは最高だ。

――歌詞に関してどういったことを歌っているのですか?

ニール・スター:例えば「フリーク・ショウ」はツアーの最後の夜になるとバーが飲み放題になって、クレイジーな夜を過ごし、アルコールを飲み過ぎて楽しい夜になる、というのを歌ったものだよ。他にはストーリーを作った曲もある。「ウェルカム・トゥ・ヘル」は、抜け出せない関係に閉じ込められている架空の人物を作り上げて、そのアイディアを元に歌詞を書いた。自分で特定の話題に絞ろうとは思っていないよ。多くの場合、何について書くかは音楽が俺にインスピレーションをくれるんだ。曲によって感じさせるものが違うからね。ダークな音楽だったら、歌詞も最終的にはダークなものになることが多い。だから違いが生まれるんだ。

――レコーディングはいかがでしたか? あなた方2人はスタジオでのレコーディングの経験も豊富なようですね。

ニール・スター:アルバムを何枚も作って来たし、トッドも自分のレコーディング・スタジオを持っているから、レコーディングのプロセスに関しては、俺のような平均的なミュージシャンよりも遙かに深く知っている。EP『PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS』(2016年)のプロデュースはトッドが手掛けたんだよ。でも今回、彼はミュージシャン兼プロデューサーとしてではなく、ミュージシャンとしてレコーディングのプロセスを楽しみたかったんだ。それが彼がアルバムのプロデュースをしなかった一番の理由だよ。俺達全員、喜んで彼にやってもらいたかったんだけど、今回はロメシュ・ドダンゴダにアルバムのプロデュースをしてもらった。

――「ダーク・デイズ」や「イントゥ・ザ・ダーク」などでのニールのエモーショナルな歌唱が印象的ですが、シンガーとしてはどういう意識でレコーディングに臨みましたか?

ニール・スター:特別なことはなかったと思うな。ただ、歌っている時と俺の精神状態が違っているようなことはないと思う。俺はいつも自分の全力を尽くしたいと思っているからね。スタジオでは全ての曲に、100%自分のエモーションとエネルギーを注ぎ込んだ。もちろん厳しい現実を扱ったような曲の方が声のアグレッションも増すんだろうけど、ね。でも「ダーク・デイズ」と「イントゥ・ザ・ダーク」はシンガーとしては非常に興味深い曲だから、歌うのを楽しんだのは間違いない。できるだけ良いものに仕上がるように力を尽くし、プロデューサーにはボーカルがベストの状態で表現できているかどうかを確認してもらうんだ。

――ボーナス・トラックにホークウィンドのカバー「シルヴァー・マシーン」を選んだ理由は?

フィル・キャンベル:あの曲がずっと大好きで、バンドのメンバーも曲を気に入っていたから。ホークウィンドのデイブ・ブロックもレコーディングに参加してくれたのはラッキーだった。もう長いことライブでプレイしていて、いつも観客は凄く盛り上がるから、当然の成り行きだったよ。

――これまでかなりの数のライブを行なっていますが、ライブも楽しんでいるようですね。

ニール・スター:バンドとしてこの音楽をプレイすることを凄く気に入っている。だから続けていきたいし、ツアーに出てショーをやっていきたいと思っているんだ。それがミュージシャンをやっている理由でもあるからね。ステージの上で得られる感覚は人生の他のどんな場面でも味わえないものだよ。自分で楽しめなくなるまでやり続けるよ。それが俺が決めていることなんだ。歌い続けて、プレイし続けて、それが楽しめなくなったら止める時だ。

――日本にも来てくれると嬉しいですね。

トッド・キャンベル:ああ、俺達も是非行きたいと思っているよ。

取材・文:Jun Kawai
Photo by Dan Sturgess


フィル・キャンベル・アンド・ザ・バスタード・サンズ『ジ・エイジ・オブ・アブサーディティー』

2018年1月26日発売
【初回限定盤CD+ライブEP】 ¥3,000+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※日本盤限定ボーナストラック収録/日本語解説書封入
1.リングリーダー
2.フリーク・ショウ
3.スキン・アンド・ボーンズ
4.ジプシー・キス
5.ウェルカム・トゥ・ヘル
6.ダーク・デイズ
7.ドロッピング・ザ・ニードル
8.ステップ・イントゥ・ザ・ファイア
9.ゲット・オン・ユア・ニーズ
10.ハイ・ルール
11.イントゥ・ザ・ダーク
12.シット・ハプンズ *日本盤限定ボーナストラック
13.シルヴァー・マシーン(ホークウィンド カヴァー)*ボーナストラック
ライブEP〔ライブ・アット・ソロトゥルン〕
1.ビッグ・マウス
2.ナッシング・アップ・マイ・スリーヴ(モーターヘッド カヴァー)
3.スパイダーズ
4.テイク・エイム
5.R.A.M.O.N.E.S.(モーターヘッド カヴァー)
6.スウィート・リーフ(ブラック・サバス カヴァー)

【メンバー】
フィル・キャンベル(ギター)
トッド・キャンベル(ギター)
デイン・キャンベル(ドラムス)
タイラ・キャンベル(ベース)
ニール・スター(ヴォーカル)

◆フィル・キャンベル・アンド・ザ・バスタード・サンズ『ジ・エイジ・オブ・アブサーディティー』レーベルページ
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