【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.43「寄生虫」

CSのアニマルプラネット・チャンネルに「私を蝕む寄生虫」という恐ろしい番組があります。寄生虫に侵された患者の再現ビデオや本人の証言の合間に、CGで拡大された小さな怪物どもが内蔵の壁を喰い破り、血管を泳いで、ついには脳みそを破壊して死に至らしめる画像が挟み込まれていて、観ている人を恐怖のどん底に突き落とします。自分の腹の中にもうじゃうじゃ虫が蠢いている気がしてきてとても不快な番組なのですが、何故か目が離せなくなり、食い入るように終わりまで観てしまいます。番組の最後に対策として「熱帯地方では裸足で歩かないようにしましょう」とか「沼や川の水を飲んだり、ザリガニやかたつむりを生で食べるのは避けましょう」などとアドバイスしてくれるのですが、「そんな奴いるのか」と心の中で突っ込みながらも、絶対しないぞと肝に銘じるのでした。

寄生虫といえばKISSの「Parasite」は名曲です。ANTHRAX、DOOM、筋肉少女帯など多くのバンドがカバーしています。作曲したAce Frehleyは独特なセンスを持った天才です。KISSといえばPaul StanleyとGene Simmonsが前面に出てきがちですが、成功の鍵はAceが握っていたと感じます。前者二人の礎がBEATLESにあるのに対し、Aceの根底にはLED ZEPPELINがあるように思われ、これらがうまい具合に絡み合ってスーパーバンドが誕生しました。Aceのペンタトニックの音を引っかかるように弾くギターソロも唯一無二の無くてはならない大事な味です。Aceが途中で抜けていなければもっともっと名盤を作り続けていたことでしょう。ファンの一人としてとても悔やまれるターニングポイントでした。


Aceはしばらくの間、曲は作っても歌わなかったのですが、６枚目の「Love Gun」アルバムの「Shock Me」で初めてリードボーカルを執ります。そして続く「Alive II」で名曲「Rocket Ride」を発表します。このアルバムは二枚組で、A面からC面がライブ録音、D面の５曲がスタジオ録音になっていて、その中の一曲です。ギターにかけられたフランジャーのエフェクトが絶妙のストレートでシンプルなハードロックナンバーです。このD面は特殊で、人間関係がうまくいっていなかったのか、他の曲では違うギタリストが弾いているようです。しかし、それだけに他にない空気があり、カバーを含む５曲ともとても良い出来です。このD面のためだけに「Alive II」を是非とも聴いてみて下さい。

「私を蝕む寄生虫」によると、生野菜をよく洗わないで食べると奴らの侵入を許してしまうようです。そんなことだけで害されてしまうのですから、誰にでも起こりうる恐ろしい災いです。もし寄生されてしまったら、絶望の中「Parasite」を聴いてAceの偉大さを身にしみて感じながら治療に専念しましょう。






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