Ivy、SIX LOUNGE、サウシー、リーガルリリー競演<列伝TOUR>、ラストは4組で名曲セッション

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スペースシャワーTV主催のライブイベント<スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018>が、3月11日(日)、東京・マイナビBLITZ赤坂にてツアーファイナルを迎えた。

◆<スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018>東京公演 画像

開催11年目を迎える今回の<スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR>にはIvy to Fraudulent Game、SIX LOUNGE、Saucy Dog、リーガルリリーの4組が集結し、2月22日(木)の福岡から3月11日(日)の東京まで、全国各地で計9公演が行なわれた。 以下、ツアー最終日のオフィシャルレポートをお届けする。

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今年も恒例の<スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR>がマイナビBLITZ赤坂で行なわれた。ライブハウスで活動するバンドの魅力を伝えるために発足したスペシャ列伝が、ツアー形式で毎年2~3月に開催されるようになってから、今年で11回目。これまで、NICO Touches the Walls、the telephones、グッドモーニングアメリカ、THE ORAL CIGARETTESなどが出演して、数多くのドラマを生んできたスペシャ列伝の歴史に、今年新たにその名を刻むことになったのは、リーガルリリー、Saucy Dog、SIX LOUNGE、Ivy to Fraudulent Gameの4組。“フェスで盛り上がること”がシーンで勝つための必須条件になっているこの時代だからこそ、改めてスペシャ列伝の原点に帰った今回は、歌とメロディに信念を込めて、それぞれのロックを鳴らす4バンドが集結。2月22日の福岡 BEAT STATIONから始まった9ヵ所におよぶツアーに有終の美を飾る、熱いステージを繰り広げた。

トップバッターはリーガルリリー。「星めぐりの歌」の幻想的なSEにのせて、たかはしほのか(Vo,G)、ゆきやま(Dr)にサポートベースを加えた3人がステージに登場した。ゆきやまが叩き出すドラムの一打一打がビリビリと空気を震わせた「うつくしいひと」からライブはスタート。そこに、たかはしがぽつりぽつりと柔らかいメロディを紡いでゆくと、その演奏は次第にエモーショナルに熱を帯びていく。曲間の区切り目もなくノンストップに聴かせた「ぶらんこ」から「スターノイズ」へ。彼女たちが放つカオティックな音像には、ここではないどこかへと連れ出すような強い魔力のようなものがある。「いろいろなバンドがいて……最初は戸惑ったけど、毎日ハッピーでした」。パワフルな演奏とは裏腹にMCではたかはしのふんわりとしたトークでも場を和ませると、最後はロックンロールな憧れと敬意を強い言葉でぶちまけた疾走感溢れる代表曲「リッケンバッカー」で終了。わずか30分のステージで他の誰でもないリーガルリリーだけの世界でステージを染め上げていた。


2番手に登場したSaucy Dogは、石原慎也(Vo,G)、秋澤和貴(B)、せとゆいか(Dr,Cho)がしっかりとこぶしを重ね合わせたあと、「煙」からライブをスタートした。石原がひとりギターを掻き鳴らして歌い始めると、そのメロディに寄り添うようにバンドサウンドが加わっていく。続けて、石原が足でリズムを踏み鳴らして届けたのは、昨年Saucy Dogの名前を全国区へと押し広げた名バラード「いつか」。音数の少ないシンプルなスリーピースの演奏だが、Saucy Dogの歌には人間の喜怒哀楽と息遣いがくっきりと刻まれている。列伝ツアーを振り返り、「悔しいこともあった」と語った石原。最後は「悔しいことから逃げてばっかりだった自分に“さよなら”をするために書いた」という「グッバイ」でライブを締めくくった。その曲の終わりに、石原は感極まったように、「みんなで大っ嫌いな自分にお別れをして、明日を迎えようぜー!」と叫んだ。決してかっこつけず、聴き手と同じ目線で、今日よりも素晴らしい明日を信じ続ける、それがSaucy Dogの大きな武器だと思う。


1曲目の「くだらない」から、ヤマグチユウモリ(G,Vo)の“これぞロックボーカリスト!”というパワフルな歌声が会場の空気をビリビリと震わせたSIX LOUNGE。そんなヤマグチを筆頭に、イワオリク(B,Cho)とナガマツシンタロウ(Dr,Cho)の3人が繰り出す強靭なロックンロールは、聴き手の心を無理矢理にでもこじ開けていくような破壊力を持っていた。「こんなに熱くなるとも思わなかった。いま清々しい気持ちです!」。ヤマグチが言い放つツアーファイナルを迎えた心境もまた、その音楽と同じようにストレートだ。ライブの後半からは、汗と衝動にまみれたSIX LOUNGEのロックショーは誰にも止めることのできない加速度で高みへと駆け上っていく。イワオが地面にベースを置いて弦を殴るように演奏すると、ナガマツはマイクをなぎ倒しながらダミ声で熱唱。そして、ラスト1曲を残して、ヤマグチが「この一瞬に命を賭けて」と言って届けたのは、「僕を撃て」だった。後悔と悲しい過去にまみれながら、“それでも”を叫ぶ歌に強烈なエネルギーが宿っていた。


トリはIvy to Fraudulent Game。バンド名がコールされると、寺口宣明(G,Vo)、 大島知起(G)、カワイリョウタロウ(B)、福島由也(Dr)の4人が静かにステージに現れた。カワイのシンセと福島が電子ドラムを叩き出す静謐な音像にのせて、寺口の透明感のあるファルセットが重なり、そこにドラマチックなバンドサウンドが花開く「夢想家」からライブが始まった。「E.G.B.A.」では無数の赤いレーザー光線がステージに垂直に降り注ぐと、寺口はステージを転げまわりながらギターを弾く。“今日で死んでもいい”。そんな覚悟で毎回ライブに臨む彼らのステージは、刹那的な狂気すら感じるものだ。MCでは、この日、7度目の“3月11日”を迎えたことに触れて、「笑いづらい日だよな。しょうがねえよ、あんなことがあったから。でも俺は生きてるし、生きていくし、こんな日でも音楽が大好きだし。だから、ここにいるお前たちの行動を全肯定して帰りたい」と語りかけた寺口。ラストナンバーとして届けた「青二才」では、最後に「生きて、生きて、生きて、生きてゆこう!」と叫んで、ライブを締めくくった。さらにアンコールでは、音楽で“不安”を乗り越えるための陽性のポップナンバー「革命」を届けたアイビー。やるせなさや憤り、自己嫌悪を強く表現するバンドだが、その根底にあるのは、音楽の力を信じたいというピュアな想いだ。


全バンドのアクトが終わり、最後のアンコールセッションでは、各バンドのボーカリストを呼び込んで、エレファントカシマシの「今宵の月のように」のカバーを届けた。「(エレカシは)30周年なので」(寺口)と、レジェンドへの敬意をこめて曲紹介をすると、Ivyのカワイが歌い始めるという、まさかの遊び心でも集まったお客さんを楽しませた。そして、ラストは楽器隊のメンバーも含めた総勢12人がステージに並び、斉藤和義の「歩いて帰ろう」をカバーして、3時間に超えるイベントは幕を閉じた。全員が自由にハモり、スキャットを加えながら、時々楽器を入れ替えたりもする。それは、今回のツアーを通じて、すっかり打ち解けたバンド同士の絆も感じられるピースフルな大団円だった。


約1ヵ月弱にわたり、共に切磋琢磨し合いながら全国をわたり歩いてきた4バンドだが、ここからは、この経験を糧に自分たちの音楽と向き合う新しい旅へと向かっていく。いまはまだニューカマーと呼ばれることの多い4バンドだが、やがて彼らには日本の音楽シーンを牽引していく存在になってほしい。そのとき、日本の音楽シーンはもっと面白くなる。

取材・文◎秦理絵
撮影◎古渓一道

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<スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018>の模様は、スペースシャワーTVにて4月29日(日)に90分の特別番組としてオンエアされることが決定している。

■<スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018>東京公演セットリスト

※出演順
■リーガルリリー
1. うつくしいひと
2. ぶらんこ
3. スターノイズ
4. the tokyo tower
5. リッケンバッカー

■Saucy Dog
1. 煙
2. いつか
3. メトロノウム
4. ナイトクロージング
5. 真昼の月
6. グッバイ

■SIX LOUNGE
1. くだらない
2. ふたりでこのまま
3. プラマイゼロ
4. トラッシュ
5. 俺のロックンロール
6. 僕を撃て

■Ivy to Fraudulent Game
1. 夢想家
2. E.G.B.A.
3. 青写真
4. アイドル
5. 青二才
En. 革命

■Encore Session(ALL BAND)
1. 今宵の月のように
2. 歩いて帰ろう

■番組情報

『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018』
放送日時:2018年4月29日(日)22:00~23:30 ほか

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