【インタビュー】KAMIJO、重厚なオーケストラとロックの融合を追求する最新型エピックロック『Sang』

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■それぞれのキャラクターをちゃんと演じることができれば
■表情や温度感といったものは自然と決まってきます


――今日お話をうかがって感じたことですが、『Sang』は前作から3年半ぶりのアルバムですが、逆によく3年半で作れたなと思います。

KAMIJO:いや、構想は3年半前からありましたけど、実際に楽曲を作りだしたのは去年の年末くらいからでした。

――えっ、そうなんですか!?

KAMIJO:はい(笑)。歌入れは2月中旬以降に、3日間で纏めてやりましたし(笑)。だから、制作期間自体は短いんですよ。

――……驚愕です。歌の話が出ましたので、続いてボーカルについて話しましょう。今作は、歌も難しかったと思います。

KAMIJO:そうですね、英語が難しかったです(笑)。

――いえ、そういうことではなくて(笑)。冒頭にも言いましたが、“メタル+オーケストラ”という圧があるサウンドに対して歌が弱いと成立しませんし、かといって歌が濃すぎるとミュージカルのようになってしまう気がするんですね。そういう中で、それぞれの楽曲で絶妙のテイストを出されています。

KAMIJO:歌に関しては、ある意味歌い出しの声色さえ決まってしまえば、後は早いというか。僕が作る曲はキャラクター・ソングなんですよ、全部が。ですから、それぞれのキャラクターをちゃんと演じることができれば、表情や温度感といったものは自然と決まってきますよね。自分自身が素直に歌ったら「mademoiselle」とか「Mystery」みたいな歌になるんです。あとは、「Sang III」とか。その3曲は、もう自然体の感情が出ています。ですけど、「Sang I」とか「Sang II」「Castrato」といった曲はそこで描かれているサンジェルマン伯爵とかルイ17世、ナポレオン・ボナパルトといった人物になり切らないと歌えない。自分の中には、そういう人達のカッコいいイメージができあがっているので、それを表現する歌い方を探すんです。口の開き方をもうちょっと横にしたほうがイメージに近づくかなとか、声の圧はこれくらいかなという風に、いろいろ試してみる。その作業は、いつも入念にしています。


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――キャラクターになり切れるイメージの豊かさと、それを表現できる歌唱力の両方が必要になりますね。“これが自分のスタイルだから”というところに逃げていないことが分かります。

KAMIJO:僕はKAMIJOである前に、楽曲だったり、ストーリーだったりを伝えたいので。僕はVersaillesというバンドを10年くらい前に始めた時に、それぞれの楽曲が必要とする歌を歌えるシンガーとして、新しい自分を創りあげました。ですが、そういう中で「mademoiselle」みたいに自分の素が出てしまう曲があって、それが合えばそのまま活かしますが、全ての楽曲でそれを押し通す気はないですね。

――シンガーである前に、表現者でありたいんですね。KAMIJOさんのスタンスが功を奏して、『Sang』はメタル・アルバムとしても楽しめると同時に、メタルに馴染みのないリスナーをも魅了する作品になりました。

KAMIJO:ありがとうございます。子供から大人まで楽しんでもらえるんじゃないかなという気はしています。僕が目指すものというのは、ハリウッド映画の予告編なんですよ。本編ではなくて、予告編。ハリウッド映画の予告編はいきなり無音になって、その後“ドーン!”と来たりしますよね。ああいうインパクトの強さは子供も、大人も、みんなカッコいいと感じると思うんですよ。ヘヴィメタルはむちゃくちゃカッコいいけど、お爺ちゃんがカッコいいと感じるかというと、そうではない。子供がカッコいいと感じるかというと、そうではない。じゃあ、子供にとってカッコいい戦隊モノを大人がカッコいいと感じるかというと、人による。でも、ハリウッド映画の予告編は、誰もがカッコいいと言いますよね。僕は、そういうものを音楽で創りたいんです。

――その例えはすごく分かりやすいですし、『Sang』を聴いて、それを実践されていることを感じました。続いて、『Sang』の完全限定受注生産豪華盤に収められている『Chamber Music Ensemble』について話しましょう。こちらは、弦楽四重奏とピアノ、そしてKAMIJOさんのボーカルという編成で録音された室内楽アルバムです。

KAMIJO:こういう形態で、打ち込みが一切なしというアルバムを作ったのは初めてです。僕がソロで創っている音楽は中世ヨーロッパをテーマにしているので、その頃と同じ音楽をやってみたいなと思って、そういうライブを一回したんですね。それがすごく良かったので、作品として残すことにして作ったのが『Chamber Music Ensemble』です。

――作ろうかなと思って実現できるのもさすがです。収録する楽曲は、どんな風に決めたのでしょう?

KAMIJO:ライブで演奏した楽曲の中で、僕的にお気に入りの曲を選びました。「Royal Blood」や「Heart」の原曲は完全にメロディアスなスピード・メタルですから意外な印象を受ける人も多いと思いますけど、僕はネオ・クラシカルというのであれば、クラシック・アレンジができないとネオ・クラシカルではないと思うんですよ。だから、僕の中では整合性が取れています

――新鮮な驚きがあるので、ぜひ原曲と今回のバージョンを聴き比べて欲しいです。メタル・チューンを大胆にリ・アレンジした楽曲がありつつ、「Romantique」や「あの人の愛した人なら」「運命」といった原曲に近いエモーションを活かしたものも入っていますね。

KAMIJO:その辺りの楽曲は完成した作品として成立していたので、生の四重奏とピアノという形態で若干のアレンジが加わることで十分良いものになるなと思って。それに、今回は全員クリックを聴かずにアイ・コンタクトだけで演奏するという形を採ったので、よりエモーショナルなものになるだろうというのもありました。

――一発録りということは資料に書いてありましたが、クリックも使わなかったんですか?

KAMIJO:はい。室内楽でやる良さというのは、お互いの空気の読み合いというか、そのドキドキ感が魅力だと思うんです。僕のブレスに合わせて、みんなが入ってくるわけですよ。そういう空気感をパッケージしたくて、クリックも使わないライブ録音でいくことにしたんです。指揮者もいませんが、ピアニストの佐山こうた君ができる場所では片手を振ってテンポを出したりしていました。

――良い演奏をしている中で自分がミスッたりした時に、後から歌だけ録り直すというわけにはいきませんよね。プレッシャーを感じたりしませんでしたか?

KAMIJO:たしかに、たとえばエンディングの手前とかで誰かがミスッたりした場合でも、そのテイクは使えなくて、もう一度頭から演奏し直すしかないという状態でした。でも、プレッシャーに押し潰されてしまうというようなことはなかったですね。長年に亘って歌って来た曲達ですし、一度ライブで歌ったこともあって、それぞれの楽曲の歌のイメージが明確でしたし。それにテンポも僕次第なので、すごく歌いやすくて。もちろん良い意味での緊張感はありましたが、室内楽という形態で歌うことを本当に楽しめました。それに、今回の制作はシングルも含めて、かなりの曲数のレコーディングでしたが、『Chamber Music Ensemble』に関しては一日で全部終わったんです。

――ええっ! 本当ですか?

KAMIJO:はい(笑)。皆さん本当にプロだなと思いましたね。5時間くらいで全部の録りが終わったんです。

――今日のインタビューは、驚くことの連続です。さきほど周りのプレイヤーが自分の歌に合わせてくれたとおっしゃいましたが、逆に言えばKAMIJOさんが全てを背負っているともいえますよね。

KAMIJO:いや、そんな大それた感覚はなかったです。今回のレコーディングで、クリックも何も聞かずに自分の感覚で歌い出して良い、伸ばしたいところは好きなだけ伸ばして良いというのは本来のあり方なんだなということをすごく感じたんですよ。それこそ何十年か前というのは、みんなクリックなんか使わずにレコーディングしていたし、同期は使わずにキーボーディストが手で弾いていましたよね。僕も前の前のバンドは、そうでしたし。今回のレコーディングで、“音楽というのは、こうだよな”と改めて思ったんです。“サビ前は少しリットするよな”とか“気持ちが上がると少しテンポは速くなるよな”とか。それが、すごく気持ち良くて、自分が背負っているというようなことは感じなかった。そういう作り方をしたという意味では、『Chamber Music Ensemble』は『Sang』とは真逆の作品ですよね。

――異なるアプローチの二作を同時期に作ったということも注目です。『Chamber Music Ensemble』も『Sang』同様、素晴らしい完成度を誇っていますし。

KAMIJO:僕自身も良いものになったなという手応えを感じています。“オーケストラをフィーチュアしている”とか“室内楽”といった言葉を聞くと、敷居の高い音楽というイメージを抱く人もいる気がするんですよ。でも、『Sang』にしても『Chamber Music Ensemble』にしても、J-POPとして聴いてもらえると思います。なので、沢山の人に届くと嬉しいですね。それに、僕が今回の二作を一言でいうとしたら、“5年聴けるアルバム”です。他にない音楽ですし、すぐに色褪せてしまうような音楽ではないという自負がありますし、きっと聴くたびに新しい発見があると思いますし。だから、じっくり聴いて欲しいです。

――同感です。それに、『Chamber Music Ensemble』の続編も、ぜひ作って欲しいです。

KAMIJO:『Chamber Music Ensemble』に関しては、実は今作に入れなかった曲も1曲録ったんですよ。それは“96(24bit/96kHz)”で録ったからCDにはできなかったんです。でも、せっかくこういった抑揚のある、ダイナミック・レンジの広い音楽を高音質で録ったので、なにかしらの形で世に出したいなと思っています。他の曲も機会があれば室内楽アレンジにして録りたいですし。次はハープを入れたいんですよ。なので、『Chamber Music Ensemble』は次作も作ることになるんじゃないかなという気はしますね。

――まだまだやりたいことがいっぱいあるというのは頼もしいです。“やりたいことがある”といえば、ソロ・ツアーも、かなり面白いものになっていると聞きました。

KAMIJO:皆さん映画とか、ドラマとかを観られると思いますが、ラストシーンとかで感動的な言葉を言ったり、感動的な場面になったりした時に、良い音楽が流れますよね。僕は、その感覚でライブをしたかったんです。音楽よりもストーリーが前に来ているエンターテイメントを見せたかった。だから、今回作るのはアルバムじゃなくても良かったんですよ。たまたま音楽という形が自分にとってやりやすいだけで、僕は原作を創りたいんです。『白鳥の湖』とか『オペラ座の怪人』とかはいろんな方がカバーして、いろんなところで公演されていますよね、音楽と共に。それを、僕は『Sang』でやりたいなと思ったんです。なので、今回のライブは声優の皆さんに演技をしていただいて、その世界にお客さんが入り込んだところで自分達の生演奏が入るという形態を採ることにしました。ですから、映画を観るような感覚で楽しんでいただけるライブになっていると思います。全身で暴れて、汗だくになって、気持ち良かったというライブも良いと思いますけど、僕としては音楽の中にある主人公の気持ちになって感動してもらいたいんです。だから、チャレンジすることにしました。今はツアーの初日が終わったところで、自分でもどうなるかまだ分からない部分がありますけど、初日の公演では自分が伝えたかったものを、お客さんは良い意味でショッキングに受け止めてくれたみたいです。「こんなライブは初めてだ」という声を沢山いただいています。

――そうだと思います。ミュージカルやオペラではないですし、朗読ライブでもないという、本当に独自のものですからね。

KAMIJO:僕はこういう話をする時によく可能性の話をするのですが、ミュージシャンというのは音楽業界のことやレコード会社のあり方から何から、知れば知るほど夢がなくなっていくんですよね。現実というものを知れば知るほど、可能性というものが狭まっていってしまう。楽器とかの練習もどんどん重ねていくと、それ以上は伸びないというところまで行ってしまったりするし。でも、練習をしている中で新たなことにチャレンジすることで、そこでまた可能性が広がったりしますよね。それと同じように、僕としては今回のライブを観ていただくことで、KAMIJOのライブはまだまだいろんなものが出て来るぞと思ってもらえると思います。果てしない可能性を感じるライブを見せている自信はあるので、ぜひ体感しに来ていただければと思います。

リリース情報

ニューアルバム『Sang』
Now On Sale
完全限定受注生産豪華盤 [CD + CD + Blu-ray + 写真集]
Disc 1 [CD]
1. Dead Set World
2. Theme of Sang
3. Nosferatu
4. Bloodcast -Interlude-
5. Vampire Rock Star
6. Emigre
7. Mystery
8. mademoiselle
9. Delta -Interlude-
10. Castrato
11. Ambition -Interlude-
12. Sang I
13. Sang II
14. Sang III
Disc 2 [CD]
初の室内楽アルバム。弦楽四重奏とピアノの生演奏とKAMIJOの声のみによる室内楽アレンジにてスタジオライヴ録音。
1. Heart
2. Presto
3. Romantique
4. Royal Blood
5. あの人の愛した人なら
6. Royal Tercet
7. Louis ~艶血のラヴィアンローズ~
8. 運命
9. 追憶のモナムール
Disc 3 [Blu-ray]
Nosferatu MV/Castrato MV/mademoiselle MV
写真集 40P
究極の耽美写真集
ポストカード
ステッカー
ミニポスター
品番 : SASCD-091
価格 : 12,000円(税別)

初回限定盤 [CD + DVD + ストーリーブックレット]
Disc 1 [CD]
1. Dead Set World
2. Theme of Sang
3. Nosferatu
4. Bloodcast -Interlude-
5. Vampire Rock Star
6. Emigre
7. Mystery
8. mademoiselle
9. Delta -Interlude-
10. Castrato
11. Ambition -Interlude-
12. Sang I
13. Sang II
14. Sang III
Disc 2 [DVD]
Nosferatu MV/Story of Sang
品番 : SASCD-092
価格 : 4,500円(税別)

通常盤 [CD]
Disc 1 [CD]
1. Dead Set World
2. Theme of Sang
3. Nosferatu
4. Bloodcast -Interlude-
5. Vampire Rock Star
6. Emigre
7. Mystery
8. mademoiselle
9. Delta -Interlude-
10. Castrato
11. Ambition -Interlude-
12. Sang I
13. Sang II
14. Sang III
品番 : SASCD-093
価格 : 3,000円(税別)
全タイプ封入特典「EMIGRE CARD」ランダム封入

期間限定デュオシングル KAMIJO x 初音ミク「Sang-Another Story-」
初回封入特典としてスマホ用音楽カード
「SONOCA」を全20種ランダム封入
発売日:Now On Sale
■完全限定盤[特殊ジャケット仕様]
形態:CDシングル
品番:SASCD-089
価格:2,160(税込)
収録曲:
1.Sang-Another Story-
2.私たちは戦う、昨日までの自分と
3.Sang-Another Story-[Instrumental]
4.私たちは戦う、昨日までの自分と[Instrumental]
■通常盤
形態:CDシングル
品番:SASCD-090
価格:1,620(税込)
収録曲:
1.Sang-Another Story-
2.私たちは戦う、昨日までの自分と
3.Sang-Another Story-[Instrumental]
4.私たちは戦う、昨日までの自分と[Instrumental]

ライブ・イベント情報

<Live Tour 2018 -Sang->
◆Live Member
Gt:Meku 
Gt:Anzi
Ba:時雨
Dr:YUKI
◆Special Guest
初音ミク
◆キャスト(声の出演)
サンジェルマン伯爵:関智一
ナポレオン・ボナパルト:杉田智和
マリー・アントワネット:青木瑠璃子
ベートーヴェン:近藤浩徳
ほか

4月8日(日) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
OPEN 16:30/START 17:00
4月14日(土) 柏PALOOZA
OPEN 16:30/START 17:00
4月21日(土) Sendai CLUB JUNK BOX
OPEN 16:30/START 17:00
4月29日(日・祝) 神戸VARIT.
OPEN 16:30/START 17:00
4月30日(月・祝) 岡山image
OPEN 16:30/START 17:00
5月3日(木・祝) 熊本B.9 V2
OPEN 16:30/START 17:00
5月4日(金・祝) 福岡DRUM SON
OPEN 16:30/START 17:00
5月12日(土) 名古屋ell. FITS ALL
OPEN 16:30/START 17:00
5月13日(日)SHIZUOKA Sunash
OPEN 16:30/START 17:00
5月19日(土) HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
OPEN 16:30/START 17:00
5月26日(土) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
OPEN 16:30/START 17:00
5月27日(日) 金沢vanvanV4
OPEN 16:30/START 17:00
6月2日(土) DUCE SAPPORO
OPEN 16:30/START 17:00
6月3日(日) DUCE SAPPORO
OPEN 16:30/START 17:00
6月10日(日) CLUB JUNK BOX NAGANO
OPEN 16:30/START 17:00
6月16日(土) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
OPEN 16:30/START 17:00

【KAMIJO Live Tour 2018 -Sang- Final】
7月15日(日) Zepp DiverCity Tokyo
OPEN 16:00/START17:00

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