【ライブレポート】Kαin、「解散しないバンドとして、ここに残しておこうと思います」

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結成10周年を迎えたKαinが2017年11月25日、<活動開始10周年記念公演「to the end of time」>と題したワンマン公演を赤坂BLITZにて開催した。本日2018年3月17日にオフィシャル発表されたYUKIYA(Vo)のライブ活動再開を機に、Kαinというバンドを再考すべく、改めて昨年末の公演を振り返ってみたい。

◆Kαin 画像

Kαinのギター&ヴォーカルであり、ENDLESSのヴォーカルでもあるSHIGEが2018年1月27日のMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASUREワンマン公演を最後にENDLESSを無期限活動休止することが発表されていたこともあり、本ライブではどのような発表がYUKIYAからされるのか注目が集まっていた。BARKSインタビューでもKαinの未来について葛藤し、結論を出しかねているYUKIYAの心情が生々しく語られたが、この日のライブから伝わってきたのは2007年から10年間、彼らがオーディエンスと共にライブを通してバンドを成長と進化させてきたからこその溢れんばかりの想い、そして「Kαinは解散しないバンドとして、ここに残しておこうと思います」という言葉だった。

   ◆   ◆   ◆

スクリーンモニターを挟んで中央前方に傾いた十字架が配されたゴシックなステージセットにメンバーが次々に姿を表すと、BLITZを手拍子と歓声が包んだ。オープニングはYUKIYAがマイクスタンドを操りながら歌い、SHIGEとSANAのツインギターも華やかな疾走感たっぷりの「drow」だ。そしてメロディックでアッパーな「Letency Sorrow」ではYUKIYAとSHIGEが肩を組んで歌う見せ場も。



追い続けてきた人にとっては周知の事実だと思うが、彼らは2007年以降アルバムをリリースしていない。だから、セットリストには音源化されていない曲も多く含まれる。しかし、取材時にYUKIYAが言っていた通り、Kαinのライブは初めて見た人を置いていかない。フックになる言葉は歌詞を知らなくても届いてくるし、耳に残るフレーズと身体が自然と動くビートが核になっている曲が多いからだ。

YUKIYAがギターを持ち、トリプルギターで奏でられた「die 4 you」はYUKIYAのローボイスとSHIGEのハイトーンボイスのコントラストが印象的。3人のギタリストが縦横無尽に絡みあえるのも、ATSUSHIのドラムとサポートのkazuのベースがガッツリ、ストイックにバンドを支えているからこそだろう。重厚感とエッジのあるナンバーへとなだれこみ、「葬-so-」を演奏し終わると拍手と歓声。男性の太い声があちこちで上がった。



SEをはさみ、ライブは熱量を増していった。アグレッシブなナンバー「Again」ではコール&レスポンス。YUKIYAが台の上で煽り、多彩なプレイスタイルのSHIGEはまるで歌っているかのようにギターを奏でる。SHIGEがメインヴォーカルをとった「月の葬列」ではロマンティックな世界にひきこみ、YUKIYAのストロークで始まった「Miles」は開放感たっぷりのナンバー。

パワフルに歌うYUKIYAの横でSHIGEがSANAのギターの弦を弾いてみせたりとHiコールとハンドクラップで盛り上がるBLITZに今日が重大なライブであることを忘れそうになった。そして「NUMBER SIXXX.」ではさらにアクセルを踏みこみ、歌うオーディエンスにYUKIYAが「東京! もっと声を聞かせてくれ!」と叫んで、気がついたらライブは後半戦に。代表曲のひとつ「羽根」を切迫感のある歌と演奏で届けた。



終盤、ついにYUKIYAが口を開いた。静まりかえり、息を呑むようにその言葉に耳を傾けるオーディエンス。YUKIYAもひとことひとことを噛みしめるようにゆっくりと言葉を紡いでいった。

「こんばんは、Kαinです。今日が俺たちにとってひとつの大きな区切りとなります。結成以来10年間、一緒に歩んできたSHIGEが今日をもってKαinのステージに立たなくなる……。いろんなことを考えてメンバーともたくさん話しました。けど、どう考えても残された俺たちで“こうしよう”という未来が見えなくて、今日をひとつの大きな終わりにしようと考えるに至りました。俺たちはちょうど10年前の2007年11月11日に最初のライブを行いました。今日、終わりの始まりの日、最後の曲は10年前に一番最初に歌った“始まり”の歌です」──YUKIYA

鍵盤にアルペジオが加わっていく切なくも内側に熱を孕んだ「the END」を熱唱してメンバーがステージを去った。


アンコールでは左右のモニターに青い空や揺れる花が映し出され、開演時と同じようにメンバーが順番にステージに姿を表した。1曲目はポップに開けるサビが心地いい「FLAW」。そして、本編でこの日をひとつの終わりにしたいと告げたYUKIYAが、そのキッカケとなったSHIGEに「何か話す?」と話題を振った。

「10年、アッという間だったなと思います。Kαinを結成する前に初めてYUKIYAさんのライブを観に行って。新宿ロフトだったかな。そこで初めてATSUSHIさんと会って挨拶して、もう10年が経ちます。僕から言えることは、“ありがとう”というその気持ちしかないです。僕のことを尊重してくれたメンバーにまず感謝しています。そして、今まで応援してくれたみんなに直接“ありがとう”と言えるのが嬉しい。10年間ありがとう」──SHIGE

SHIGEの名前を呼ぶ声と拍手。YUKIYAはKαinのこれまでの活動がメディアでもなくスポンサーでもなく、ファンに支えられてきたことに感謝の気持ちを伝えた。さらに、アルバムを作ることをほのめかし、「来年、必ず音源にしようと心に決めている曲を聴いてください。SHIGEが俺たちに残してくれた大事な曲のひとつです」と日本情緒溢れる儚くも美しい曲「桜回廊」と「深淵の月」を披露した。


しかし、この時点でKαinは今後の活動について、まだ明言はしていなかった。辛いけれど、伝えなくてはならないこと。ギリギリまでひっぱった結論がついにYUKIYAの口から語られた。ゆっくりと、しかし、心の揺れを象徴しているかのように言葉数は多かった。全てではないけれど、できる限り、あの日のメッセージを記しておこう。

「今日を最後にSHIGEはKαinのステージを降りますし、今のところKαinの次のライブを決める予定はありません。SHIGEもさっき「辞める」とか「脱ける」とか言わなかったと思うけど、どうしても俺たちはそういう言葉は使いたくなくて。言葉って難しくてね。
 繰り返すけど、今日、ひとつだけみんなと新しい約束をしようと思います。Kαinはこれからもずっと解散しない。解散しないバンドになります。もしかしたら、これから10年間、ライブがないかもしれないけど、俺たちは解散しません。もし次のKαinのステージがあるとして、そこにはきっとSHIGEの姿はないんだろうけど、それを俺たちは脱退とは呼ばないことにしようと思ってます。
 SHIGEが物理的にすごく遠くに行ってしまったとしても俺たちはずっと仲間だし、何かが変わるわけでもない。これから先、誰かが一緒に歩めなくなる時が来るかもしれないけど、Kαinは解散しないバンドとして、ここに残しておこうと思います。
 俺たちのもののようなキミたちのもののような、そして誰のものでもないような……長い音楽人生の中で初めてそういうバンドにたどり着けたような気がしていてね。誰かがこの世にいなくなっても誰かが共に歩めなくなってもKαinはなくならない。どうしてそう思えるかというと、Kαinは俺のものなんかじゃなくて、みんなのそれぞれの中にあるからだと思う。このバンドを支えて、育ててきたのは間違いなくキミたちだし、このバンドはキミたちのもの。アルバムを作るのはこのバンドをひとりひとりに持っておいてほしいからだよ。ここにあったKαinをアルバムの中に閉じ込めてキミたち1人1人に渡すから、できるだけ永く愛してください。
 長い間、俺たちのわがままな活動に付き合ってくれてありがとう。一緒に残してきてくれた音楽だけが俺たちの10年間の証です。心からありがとう。一緒に歌ってください」──YUKIYA


時に言葉を詰まらせながら正直な想いを告げたYUKIYA。明らかにされたのは、SHIGEと一緒にKαinとしてステージに立つことはもうないだろうということ。このメンバーでの最後のアルバムを2018年に届けるということ。そして、今後のKαinのライブに関しては白紙であるということだった。全てを受け入れるかのように聞き入る会場の空気からも切なさが伝わってきたが、だからこそ、今、この瞬間を楽しもうと言わんばかりに「証」は大合唱になった。

「そんな顔するなよ。やっぱり今年も2デイズにして、明日もライブだったら良かったのにな……」とYUKIYAがみんなの表情を見て言うと、SHIGEも「そんな顔するなよ」と言い、初めて会場に笑う声が響いた。YUKIYAが「これだけは言っとく。10年経って……バンドやってよかったよ」と告げると拍手が起こった。

そして、「もっと気持ちを俺たちのそばに」と「Closer」を披露。想いを吐き出した後のヴォーカルと演奏はより人間くさく、ラストは“終わる世界 始まりの歌”とうたう新曲「ATSUSHI #008」で締められた。大きな拍手の中、「覚えていてくれ。俺たちがKαinです。どうもありがとう!」と去っていったメンバー。インディペンデントの変わらぬ姿勢を貫き通したこともあいまって、ずっしりと余韻が残るライブであった。


取材・文◎山本弘子
撮影◎逸見隆明

■<活動開始10周年記念公演「to the end of time」>2017年11月25日@赤坂BLITZセットリスト

01.drow
02.Latency Sorrow
03.聖痕 -stigma-
04.die 4 you
05.nlandempire #02
06.葬-so-
07.Again
08.search for…
09.月の葬列
10.Miles
11.NUMBER SIXXX.
12.羽根
13.the END
encore
14.FLAW
15.桜回廊
16.深淵の月
17.証-akashi-
18.Closer
19.※新曲 ATSUSHI #008

■<藤田幸也音楽活動25周年記念公演>


▼「約束の日」
2018年5月2日(水) 東京・マイナビBLITZ赤坂
Open17:30 / Start18:00
▼「約束の花」
2018年5月3日(木・祝) 東京・マイナビBLITZ赤坂
Open15:30 / Start16:00
出演:藤田幸也
▼チケット
・特典付チケット:¥7,700-(税込)
※全席指定 ※ドリンク代別途必要
・一般チケット:¥5,200-(税込)
※自由席(入場整理番号付き) ※ドリンク代別途必要
※一般チケットは未成年者無料(身分証提示で当日全額キャッシュバック)
※キャッシュバック対象チケットは一般チケットのみとなります
プレイガイド発売日:2018/4/15(日)
(問)NEXT ROAD 03-5114-7444

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