【インタビュー】ミニストリー「社会のディテールを、ヘヴィでラウドな塊にして顔面にぶつける」

twitterツイート

ミニストリーの最新アルバム『AmeriKKKant』は、トランプ政権のアメリカに対するインダストリアル・メタルの武装蜂起だ。火炎瓶をマイクに持ち替え、ヘヴィなギターと冷徹なビート、そして鮮烈なメッセージを武器に群衆を扇動するのがリーダー、アル・ジュールゲンセンだ。約5年ぶりの新作に伴う革命前夜のインタビュー。アルのアジテーションに耳を傾けよ!

◆ミニストリー映像&画像



──アルバム・タイトル『AmeriKKKant』について教えて下さい。

アル・ジュールゲンセン:アルバム・タイトルの発音は“アメリカント”だよ。今のアメリカ社会を表している。それと同時に保守化、右傾化していく世界に向けたメッセージでもあるんだ。アメリカやヨーロッパ、アジアや南米…日本の人々にも耳を傾けて欲しい。世界は危険な状態にある。導火線に火が付いた状態なんだ。このアルバムは世界に対して鏡を突きつけている。「これがお前たちのなりたかった姿なのか?」とね。アルバムのあちこちでトランプへの言及があるけど、『AmeriKKKant』は決して“反トランプ・アルバム”ではないんだ。トランプはニキビみたいなものだ。潰せば膿が垂れるけど、それだけの汚い存在だよ。そんなことより、世界全体のシステムが狂おうとしている。俺はアート、思想、創造性、人間性が失われつつある現代の世界に警鐘を鳴らしているんだ。

──アルバムについて“『詩編69』を継承する『詩編70』と呼ぶべき作風”あるいは“サイケデリックで顔面に叩きつけるようなパンク・フロイド的アプローチ”と説明されていますが、どんな音楽性を志向しましたか?

アル・ジュールゲンセン:その表現はいずれもアルバムを聴いた人たちが俺に対して話したことだよ(笑)。俺が表現するとしたら、2016年にサージカル・メス・マシーン名義で出したアルバム『Surgical Meth Machine』の延長線上にありながら、社会のディテールをさらに掘り下げて、ヘヴィでラウドな塊にして顔面にぶつけるサウンドだ。アルバムの音楽性は、レコーディングのときの地球環境や宇宙のカルマも関係している。その時ごとに世界が異なるんだから、サウンドも変わるんだよ。『トゥイッチ』(1986)が出たのはレーガン政権の初期だった。『ザ・ランド・オブ・レイプ・アンド・ハニー』(1988)を聴けば、当時の俺自身、アメリカ、世界を反映していることがわかる。

──1989年にミニストリーに参加して2012年に亡くなったギタリストのマイク・スカッシアを失ったことは、バンドの音楽にどのような影響を及ぼしましたか?

アル・ジュールゲンセン:マイクはミニストリーだけでなくレヴォルティング・コックス、ラードなど、俺のやってきたバンドの多くでギターを弾いてきた。それに加えて、彼は俺の兄弟のような存在だったんだ。彼が亡くなったとき、ミニストリーはもう終わったと思った。一時は「もうミニストリーとしてのアルバムは出さない」と宣言までしたよ。でも人生は続いていく。現代社会はクレイジーな方向に向かっているし、俺はもう黙っていることはできなかった。それに実際のところ、マイクは生前でもミニストリーの全作品に参加していたわけではない。『ザ・ラスト・サッカー』(2007)ではトミー・ヴィクターがギターを弾いていたしね。ミニストリー以外のバンドと掛け持ちしているメンバーもいるし、いろいろ都合があるんだよ。ただ、マイクのことを考えない日はない。いずれ宇宙の道筋のどこかでマイクと再び会えると信じている。その時が楽しみだ。


──「トワイライト・ゾーン」でのハーモニカや「アイ・ノウ・ワーズ」でのストリングスなど多彩な楽器がフィーチュアされていますが、それらは本物の演奏ですか?それともサンプルを使いましたか?

アル・ジュールゲンセン:ハーモニカは俺が吹いている。『ザ・ランド・オブ・レイプ・アンド・ハニー』の「ゴールデン・ドーン」の頃から吹いてきたんだ。『フィルス・ピッグ』(1996)のハーモニカも俺だし、今回もそうだ。チェロを弾いているのはカリフォルニア州パサデナのノミの市で演奏していたクレイジーなストリート・ミュージシャンだ。“ロード・オブ・ザ・チェロ”という60代半ばの人で、本業は数学の教師で、今までバンドで活動したことがないんだ。彼のことはいつも“ロード”と呼んでいるけど、実は本名を知らないんだ。彼はツアーに同行することになったし、パスポートが必要だから本名を訊いとかなきゃな(笑)。

──「ヴィクティムズ・オブ・ア・クラウン」では元N.W.A.のアラビアン・プリンスがターンテーブルを担当していますが、彼の参加はどのように実現したのですか?

アル・ジュールゲンセン:アラビアン・プリンスとは去年(2017年)、アナハイムで毎年行われているNAMMショーで会ったんだ。政治問題や社会について話して、すぐに意気投合した。それで俺の家に来て一緒に音楽のアイディアを交換することになったんだ。NAMMショーはやたらと人が多いし、滅多に行かないんだけど、たまたま去年は行って正解だったね。アルバムの他の曲では、DJスワンプがターンテーブルを回している。彼はツアーにも参加してくれるし、レジスタンスの一員だよ。彼とは元々エンジニアとして知り合ったんだ。でも話してウマが合って、アルバムに参加してもらうことにした。ベックとかと一緒にやったと知ったのは、後になってからだったんだ。まったく知らない人に突然「ゲスト参加して下さい」と頼み込んだわけではなく、まず友人関係があったんだよ。

──フィア・ファクトリーのバートン・C・ベルとは付き合いが長いのですか?

アル・ジュールゲンセン:もう20年来の友達だよ。マイク・スカッシアが亡くなった今、一番の親友といっていい仲だ。彼は「ウォーガズム」のスピーチ、それから「ウィーア・タイアード・オブ・イット」で歌っているし、何曲かでバック・ヴォーカルを取ってくれた。バートンはLAにいるあいだ俺の家にしょっちゅう出入りしていたし、「ちょっと歌ってくれよ」という感じだったんだ。友情参加というやつだよ。

──ミニストリーは“インダストリアル・メタル”の嚆矢と呼ばれてきましたが、現在のヘヴィ・ロックとエレクトロニクスのクロスオーバーについてどのように考えていますか?

アル・ジュールゲンセン:いや、“インダストリアル・メタル”という枠に誰が当てはまるのかも知らないし、ミニストリーが属するのかもわからない。そもそもミニストリーの出発点はメタルではなかったんだ。途中からディストーションのかかったギターを採り入れただけなんだよ。

──デビュー当時の1983年にはカルチャー・クラブと一緒にツアーしましたが、当時のことを覚えていますか?

アル・ジュールゲンセン:ミニストリーは『ミニストリー・ショック With Sympathy』(1983)というアルバムでデビューしたてのポップ・バンドで、俺は19歳だった。カルチャー・クラブはまさに全盛期で、まったく勝ち目がなかったよ。あのツアーで俺たちを見た人は少ない筈だ。俺たちがプレイしていたとき、場内はガラガラだった。まだ会場に着いていないか、バーに飲みに行っていたんじゃないかな。ボーイ・ジョージは楽屋に閉じこもっていたし、あまり話す機会もなかった。同じ年、ポリスの前座をやったこともあったけど、彼らはフレンドリーで楽しく話すことができたよ。マンガの登場人物ではなく、リアルな人間だった。とは言っても、ポリスの前座をやったことでミニストリーが成功を掴むことはなかった。まあ、それも仕方ない。当時の俺たちはあまり良いバンドじゃなかったからね。若くて経験が浅かったし、ライヴ・パフォーマンスも下手だった。ちょっと前までは、気恥ずかしくて当時のことは封印したかったんだ。自分の赤ちゃんの頃の写真アルバムを見せたくないのと同じでね。でも今では、それが自分の過去だと受け入れているし、笑って受け入れることができるよ。

──1980年代後半から1990年代にかけてミニストリーのドラマーだったビル・リーフリンは後にR.E.M.やキング・クリムゾンに参加することになりますが、彼はどのようなプレイヤーでしたか?

アル・ジュールゲンセン:最初にビルの演奏を気に入ったのは、彼がドラマーというより、アーティストであることだった。彼にとってドラムスとは、自分のアートを表現するための絵筆だったんだ。彼は『フィルス・ピッグ』までミニストリーに参加してくれたけど、その後、いろんなアーティストとやるようになった。だからもう20年以上話していないんだ。何も問題はないしゴシップもない。単にお互いに用事がないだけだ。いつかまた一緒にやりたいね。

──1995年2月以来、日本公演が実現していませんが、ぜひ今年こそ日本に戻ってきて下さい。

アル・ジュールゲンセン:もう20年以上、日本に行っていないのは驚きだよ。前回のジャパン・ツアーは、阪神大震災の直後だったんだ。どこに行っても空気が張り詰めていたのが印象に残っているよ。でも、地震だろうが何だろうが、ミニストリーが日本でプレイするのを止めることはできない。呼んでくれさえすれば、ツアーのスケジュールを調整するよ。

取材・文:山崎智之
写真クレジット:Allan Amato


ミニストリー『AmeriKKKant』

3月9日発売
【30セット通販限定CD+Tシャツ】¥5,000+税
【通常CD】¥2,300+税
1.アイ・ノウ・ワーズ
2.トワイライト・ゾーン
3.ヴィクティムズ・オブ・ア・クラウン
4.TV5/4チャン
5.ウィーアー・タイアード・オブ・イット
6.ウォーガズム
7.アンティファ
8.ゲーム・オーヴァー
9.AmeriKKKa

【ミュージシャン】
アル・ジュールゲンセン(ヴォーカル/ギター)
シン・クウィリン(ギター)
シーザー・ソート(ギター)
ジョン・ベックデル(キーボード)
ジェイソン・クリストファー(ベース)
トニー・カンポス(ベース)
ロイ・マイヨルガ(ドラムス)バートン・C・ベル(ヴォーカル)
DJスワンプ(スクラッチング)
アラビアン・プリンス(スクラッチング)
ロード・オブ・ザ・チェロ(ストリングス)

◆ミニストリー『AmeriKKKant』レーベルオフィシャルサイト
twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報