【インタビュー】マイルス・ケネディ、ギターや歌は“曲を伝えるためのツール”

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アルター・ブリッジとスラッシュ作品のシンガーとして知られるマイルス・ケネディが初のソロ・アルバム『イヤー・オブ・ザ・タイガー』を発表した。父親を亡くした幼少期を題材にしたコンセプト・アルバムとなったこの作品は、ブルースやアメリカのルーツ・ミュージックをベースにしたアコースティカルな曲やメロディアスなロックやハード・ロック・ナンバーが並んでおり、アルター・ブリッジやスラッシュとは異なるパーソナルな作品に仕上がっている。このアルバムの制作の経緯やアルバムの内容についてマイルスに語ってもらった。

◆マイルス・ケネディ映像&画像



――元々2009年にソロ・プロジェクトをスタートさせるとアナウンスしていましたが、今作『イヤー・オブ・ザ・タイガー』はそれと同じものですか?

マイルス・ケネディ:いや、違うものだ。そのアルバムは2016年に完成させたんだけど、俺の最初のソロ・アルバムとしてふさわしいかと考えた場合、自分が作りたいと思っていたアルバムではないと判断したんだ。それで、一旦それをお蔵入りして一から作り直したんだよ。今回の『イヤー・オブ・ザ・タイガー』は、幼い頃に父を亡くしたことがコンセプトのアルバムなんだ。でも、最初に作ったアルバムは、色々なアイディアの集まりという感じで、様々なストーリーを語っていたから、必ずしも一貫したテーマがあったわけではなかった。今回の方がはるかに焦点が絞れている点が大きな違いと思う。

――『イヤー・オブ・ザ・タイガー』は、ブルース、フォーク、アメリカン・ルーツ・ミュージックといった要素が入った作品になりましたが、自然とこういった方向性になったのですか?

マイルス・ケネディ:そうだよ。俺は色々なジャンルの音楽を自分の中に採り込んできたからね。それに、アコースティックが基調の音楽…ブルースは俺が特に大好きな音楽なんだ。俺のそういう好みは10代の頃から始まっていて、アコースティックな面も採り入れたレッド・ツェッペリンのアルバムにも夢中になった。特に『レッド・ツェッペリン III』や『レッド・ツェッペリン IV』にね。その後、ロバート・ジョンソンといったブルースを聴くようになって、しばらく経ってから、よりコンテンポラリーなアーティスト、例えばクリス・ウィートリーなどを発見したんだ。俺は昔からそういった音楽が大好きで凄く聴いていたから、自分のアルバムを作り始めたら、自然に同じようなヴァイブに触れたものになっていた。凄く自然だった。俺の音楽のDNAに刻み込まれているんだと思う。

――シンガーとしても自然体な歌唱が聴けますが、どういったアプローチで臨みましたか?


マイルス・ケネディ:スラッシュでもアルター・ブリッジでも、エレクトリック・ギターがたっぷり入っていて、リフも何もかもが、ある程度厚みのあるものにミックスで仕上げられている。だから、そういったものに埋もれないように、俺は高い声で歌うことが多いんだ。でも、このアルバムでやりたかったのは、低めの声域で歌うことだった。そうすることで、曲と歌詞が違った形で伝わり、違う形で聴いてもらえる。それも、アコースティック・ギターでレコーディングをしたことが良かった。ヴォーカルに沢山のスペースを残すことができたからね。

――アルバムにはコンセプトがあるということですが、いくつか曲を紹介していただけますか?

マイルス・ケネディ:「イヤー・オブ・ザ・タイガー」は、基本的にはこのアルバム全体の過程を描いたものになっている。この旅を母の視点から見ていて、父が亡くなった後、俺達が踏み出そうとしている旅の始まりの“ときの声”のようになっているんだ。それから「ブラインド・フェイス」は父への手紙のようなものになっていて、彼に「自分がやっていることが本当にわかっていたのか?気付いていたのか?」と質問しているものなんだ。というのも、彼はある宗教を信仰していたから、病気になっても医者にはかからなかったんだ。父はその病気で死んでしまうなんて思ってもいなかったと思うよ。だから「あなたは本当に自分がやっていることを理解しているのか」という質問を投げかけているんだ。「ナッシング・バット・ア・ネーム」も父への手紙と言える内容だ。あと「マザー」は母への感謝と賞賛の曲だよ。母へのお礼の手紙という感じだね。彼女は色々なことが起こった間もずっと強い母親でいてくれたんだよ。あれほど強くはいられない人達もいるかもしれない。彼女はいつも俺と弟のことを一番に考えてくれていた。最後の「ワン・ファイン・デイ」は最も前向きな曲だ。俺達は辛い経験をしてきたけど、変化はすぐに訪れる、とても良いことがたくさん近い将来に起こるから、それをじっと待っていろと言っているんだ。だから、本当に前向きな雰囲気で終わるんだよ。このストーリーにはハッピー・エンディングが待っているんだ。

――プロデューサーにはアルター・ブリッジの作品も手掛けているマイケル・バスケットが担当していますね。

マイルス・ケネディ:マイケルとの間には信頼関係が築かれているんだよ。彼とはもう何年も知り合いで一緒に仕事をするようになって…もう17年になるかな。断続的にだけどね。このアルバムはパーソナルなものになるのがわかっていたし、彼がとても合うだろうと思った。でも、アルター・ブリッジとはジャンルがとても違うから、彼がどういうやり方をするかは分からなかったけど、実際にやってみて驚いたね。彼は素晴らしいロックとヘヴィ・メタルのプロデューサーであるだけでなく、こういったアコースティカルなタイプの音楽でも、素晴らしい能力を発揮することがわかったよ。彼も俺のように様々なタイプのジャンルの音楽を聴いて楽しんでいるんだ。特に1970年代のアーティストがやっていたことを、俺と同じく、好んでいるんだと思う。それが俺達にとって凄く重要な共通点になっていて、このアルバムのコンセプトやアレンジや楽器の使い方やサウンドに関して、方向性を統一することができたんだ。

――今作ではシンガー/ギター・プレイヤー/ソングライター…一番アピールしたいのはどういった側面ですか?

マイルス・ケネディ:多分ソングライターとしてだね。ソングライティングが俺が一番好きなことだし、一番時間を費やしてきていることだ。ギターを弾くことや歌うことは、自分が曲を伝えるためのツールなんだ。曲を書くことが最も重要で、一番時間を注いでいることだよ。

――3月からソロ・ツアーが始まりますが、どういったものになりそうですか?

マイルス・ケネディ:3月と5月にやるソロは俺1人の完全なソロ・ツアーだよ。アコースティック・ギターを持って『イヤー・オブ・ザ・タイガー』からの曲を基本に、これまでの25年のキャリアから選んだ曲を演奏する。アルター・ブリッジのハイライト的な曲などもね。夏にやるツアーは、バンドを組んでほぼ全曲が『イヤー・オブ・ザ・タイガー』の曲になる予定だ。

――その他の今年の予定は?

マイルス・ケネディ:今のところ、ソロの活動以外は何も決まっていないよ。多分アルター・ブリッジの次のアルバムの曲を書き始めて、2019年に6枚目のアルバムをリリースできたらと考えているよ。

取材・文:Jun Kawai


マイルス・ケネディ『イヤー・オブ・ザ・タイガー』

【CD】¥2,500+税
※日本語解説書封入 / 歌詞対訳付き
1.イヤー・オブ・ザ・タイガー
2.ザ・グレート・ビヨンド
3.ブラインド・フェイス
4.デヴィル・オン・ザ・ウォール
5.ゴースト・オブ・シャングリ・ラ
6.ターニング・ストーンズ
7.ホーンテッド・バイ・デザイン
8.マザー
9.ナッシング・バット・ア・ネーム
10.ラヴ・キャン・オンリー・ヒール
11.ソングバード
12.ワン・ファイン・デイ
《ボーナストラック》
13.ナッシング・バット・ア・ネーム(デモ・アコースティック ver)
14.ザ・グレート・ビヨンド(デモ・アコースティック ver)
15.ホーンテッド・バイ・デザイン(デモ・アコースティック ver)

【ミュージシャン】
マイルス・ケネディ(ヴォーカル/ギター)
ジア・ディン(ドラムス/パーカッション)
ティム・トゥルニエ(ベース)

◆マイルス・ケネディ『イヤー・オブ・ザ・タイガー』レーベルオフィシャルサイト
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