【ライブレポート】BURNOUT SYNDROMES、“あなた”が照らしたヒカリの先へ

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BURNOUT SYNDROMESによるワンマンツアー<BURNOUT SYNDROMES 全国ワンマンツアー2018 「孔雀 〜いざ真剣勝負〜」>のセミファイナル公演が3月23日、東京・SHIBUYA CLUB QUATTROにて行なわれた。先日BARKSでは、ライブの企画・構成を担当する石川大裕(B&Cho)へのソロインタビューを公開したが、取材時に彼はこう宣言していた。

「期待だけして来てほしいですね」

2016年に行なわれた前ツアーから約1年。石川が練り上げたワンマンライブは期待を遥かに超えるものだった。

◆BURNOUT SYNDROMES ライブ画像(全11枚)

まずオープニング映像として、「燃え尽き症候群防止委員会(通称:MBI)メディア・コントロール主任ディレクターのナツミ」という人物が画面に現れた。ナツミは、「ライブやフェスが盛り上がりをみせる一方で、このままいくと人々の関心がライブにしか向かなくなり、ライブ以外の日常を生きる気力を失い“燃え尽き症候群”が蔓延、世界経済が壊滅する」と危機感を訴える。そして、未来を変えるため今のうちにライブを消滅させなくてはならず、ライブを楽しみすぎないように感情を制御することができるマイクロチップを開発したと発表。さらに、会場の受付で手に押されたスタンプによって、マイクロチップはすでに今夜の観客に埋め込まれていることも明かされ、“BURNOUT SYNDROMES=燃え尽き症候群”というバンド名に掛けた演出により、入場時からすでにライブが始まっていたことに気づき会場が一気にざわめいた。

ナツミの映像に割り込んで、続いて画面に登場したのは「ヒューマンレジスタンス・クジャックス」。MBIの目論見を阻止すべく活動する彼らは、最新型アンドロイド「モエツキーター」を3名会場に派遣したが現在コールドスリープ状態だという。モエツキーター=熊谷和海(G&Vo)、石川大裕、廣瀬拓哉(Dr&Cho)を起動させるため、コマンドを歌って入力するよう告げられると観客から「あ〜!」と声が上がる。そのコマンドはもちろん、“コナミコマンド”だ。

映像内のクジャックスの伴奏に合わせて観客が声を揃えて「↑↑↓↓←→←→(同時押し)青+春」「↑↑↓↓←→←→ 残機は∞」と歌いモエツキーターが起動、廣瀬のドラムが鳴り、“コナミコマンド”が盛り込まれた1曲目「ハイスコアガール」がスタートした。熊谷が下手から、石川が上手から駆けてきてステージ中央でクロスし立ち位置につく。「会いに来たよ、渋谷ー!」石川が叫ぶ。なんてドラマチックな幕開けなんだろう。オープニング映像とライブの内容が連動していることに加え、開演前にBGMとして流れていた映画音楽の効果もあり、まるでテーマパークに来たような高揚感を覚えた。


ライブ中には、盛り上がるフロアに向けて「楽しんじゃだめ! チップで管理されてるんだから!」というナツミの声が飛ぶ。「ライブハウスの照明システムに不正アクセスがあった」というアナウンスのあとには、照明がダウンして暗転。会場にヒカリを集めるようにモエツキーターが促し、観客が自身のスマホのライトを点灯することによってマイクロチップが破壊されるという演出が続いた。

入場時に配られたメンバーのプロフィールシートの裏に「非常時に関して」という項目があり、「音楽イベントでの一番の混乱は会場の停電によるパニックのため、灯りを照らすことのできるものを随時携帯することをおすすめします」と書かれていたことを思い出し、設定の細かさと入念な仕込みに思わずため息が出る。そして、「あなたが照らしてくれた道を俺たちはずっと真っ直ぐに進む」と石川が誓い「ヒカリアレ」が披露された。見事な流れだった。



ここまで演出について触れてきたが、彼らは“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーを掲げて活動している。例えるならば石川は装丁家で、作詞・作曲を手掛ける熊谷はストーリーテラー。特徴的なハイトーンコーラスで楽曲を引き締め、ムードメーカー的役割も担う廣瀬は、本の挿絵を添えているといった関係だろうか。

3人それぞれの強みによって1話5分の短編集が綴られ、熊谷の“表情豊か”な声により観客は様々な物語の世界へと誘い込まれていく。深く太くたくましい声、すべてを温かく包み込む柔らかい声。そして、絶望に打ちひしがれた悲しい声。

「斜陽」の前に熊谷が語った。

「みなさんがこの先生きていくときに、もしかしたらちょっとしたことで燃え尽きてしまって、何やっても全然楽しくないな、生きてる意味無いんじゃないかなって、そんな暗い時代に突入してしまうかもしれません。でもそんなときこそ僕らが、僕たちだけが味方でありたいと思って今こうやって歌を歌っています。いつもあなたの隣で“わかるよ、その暗い気持ち。でももうちょっとふんばってみようよ。もしかしたらなんかいいことあるかもしれないよ。あなたは独りじゃないよ、俺たちがついているよ”っていう、そういう気持ちで。だから僕らは明るい曲だけじゃなくて、暗い曲も作って歌おうと思っています。あなたたちの隣で一緒に歩いていきたいからです。これまでも、そしてこれからも。もちろん、今日もです。」


熊谷は、「斜陽」を書いた二十歳のとき、「明るい未来なんてまるで見えなかった」「SHIBUYA CLUB QUATTROがソールドアウトするなんて全く思いもしなかった」と言った。13歳でバンドを結成してから13年。この歴史のなかで、彼らは苦しみや悲しみもたくさん味わってきたのだろう。痛みを知っているから、痛みに寄り添える。切なさを帯びていたけれど、とても優しい歌声だった。

すべてはファンの笑顔のため。“自分たち対大勢”ではなく、“一対一の関係が複数ある”という姿勢でファンと向き合ってきた彼らは、前回の雪辱を果たし、チケットをソールドアウトさせるという結果を見せてくれた。最後列までびっしりと埋め尽くされた超満員のフロアを前に、生命の誕生について歌う「ヨロコビノウタ」をラストに放ったBURNOUT SYNDROMESは、この日また新しく生まれ変わったのだと思う。

2019年3月に開催が決定しているワンマンツアーで、彼らは東京公演の会場にLIQUIDROOMを選んだ。ここからまた1年、「闇を滑走路にして」、「一寸先の絶望」を恐れずに、「二寸先の栄光を信じて」、駆けていってほしい。BURNOUT SYNDROMESの未来にヒカリアレ。


取材・文◎高橋ひとみ(BARKS)
撮影◎HAJIME KAMIIISAKA

セットリスト

1.ハイスコアガール
2.Melodic Surfer
3.文學少女
4.セツナヒコウキ
5.エレベーターガール
6.POKER FACE
7.吾輩は猫である
8.燃えつきメドレー
・君のためのMusic
・君は僕のRainbow
・Bottle Ship Boys
・ナイトサイクリング
9.君をアンイストールできたなら
10.ヒカリアレ
11.斜陽
12.若草山スターマイン
13.月光サンタクロース
14.FLY HIGH!!
15.人工衛星
16.花一匁

EN1.東名高速道路清水JCTを時速二〇〇キロメートル超で駆け抜けるのさ(※リクエスト曲)
EN2.ヨロコビノウタ

<全国ワンマンツアー2019>

2019年
3月2日(土)広島・SECOND CRUTCH
3月3日(日)福岡・DRUM Be-1
3月10日(日)大阪・BIGCAT
3月16日(土)愛知・Electric Lady Land
3月23日(土)東京・LIQUIDROOM
3月30日(土)宮城・darwin
前売:¥3,900
[プレイガイド先行予約受付]
申込期限:2018年4月1日(日)23:59まで
http://w.pia.jp/t/burnoutsyndromes/

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