【ライブレポート】MIRAGE&Matina20周年イベント。往年のV系シーンが復活

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THE DEAD P☆P STARSとMIRAGEも…と言うよりは、リーダーのKENZIとKISAKIとはもう二十数年来の親友でもありアンチフェミニズムでも活動して来た。その先の世界へ一気に突き抜けるよう、凄まじい勢いで楽曲が騒ぎだす。THE DEAD P☆P STARSは「STAR☆LOVER」を相棒に、観客たちを暴れ騒ぐ熱狂の中へ連れだした。タイトでスピーディ、激しいながらもキャッチーさを魅力にしているように、「STAR☆LOVER」は触れた人たちの感情にはしゃぎたい熱をどんどん注ぎ込む。つかみを持った暴れナンバー、そこがTHE DEAD P☆P STARSらしい魅力。AKI(Vo&G)は「今日は90年代の匂いがプンプンする同窓会のようなイベントになってますが、楽屋は昔からの仲間たちが集まって楽しくやってます。時間だけは止められないものだけどさ、心の時間は何故か止められるんだよな。みんなも、あの頃に戻って楽しんでください」と。

続いて飛び出したのが「JUSTICE」だ。ポップでキャッチーさを全面に押し出した楽曲を魅力に、彼らは触れた人たちの心をドキドキはしゃがせてゆく。体感的な熱狂も嬉しいが、胸の内側がワクワクしてゆく楽曲も、THE DEAD P☆P STARSには欠かせない。そして演奏は「いばらの道」へ。胸をくすぐるギターの旋律の上で浪々と、高らかにAKIが想いを宣言。ドラムビートの合図と同時に、楽曲は心地好い熱狂を持って華やかに駆けだした。とてもポップでキャッチーだ。疾走する開放的な演奏に触れていると、どんな茨の道だろうと、この歌を相棒に駆け抜けてゆく気持ちになれる。胸をスカッとさせながら、THE DEAD P☆P STARSは「いばらの道」を通して光射す道を示していた。その歌に、演奏に触れていると、気持ちが嬉しく奮い立つ。その勇気と輝くパワーを、この歌が、THE DEAD P☆P STARSが教えてくれた。

AKIが「みんなが笑顔で手を振ってくれるとさ、それが一番の喜びなんです。こうしてみんな元気にライブをやっているからさ、音楽を続けてるからイベントも組めるわけで、みんなが来てくれるからまたやりたいなと思うわけで。俺たちには俺たちの良さがある。今日出てるバンドみんなの応援、これからもよろしく頼むぜ!」、KENZI(Dr)が「KISAKIがステージに戻ってきて一緒にこうやって出来て本当に感謝しています。みんな、今日だけはね、あのときのことも思い出しながら観てもらったら楽しいと思います」と述べ、「あの頃に戻ろうぜ」というAKIの声を合図に飛び出したのが「W.A.R」だ。熱いエナジーを一気に解き放つように演奏へ情熱をぶつけるメンバーたち。爆走する演奏の上で、AKIが熱く煽る。舞台前方では熱いバトルが繰り広げられていた。放熱する演奏に触発され、暴れずにいれない。でも、その中に愛を覚えるのも、THE DEAD P☆P STARSのメンバーらが持つ本質的な優しさが滲み出てくるから。胸をぐっとつかむ熱狂、その姿勢をTHE DEAD P☆P STARSが見せてくれた。


90年代のヴィジュアルシーンに激しい華を咲かせた覇叉羅の登場。幕が開くと同時に、そこには覇叉羅のメンバーたちの姿が居並んでいた。彼らは勇壮に、豪快に「VICTIM OF“D”」を突きつけた。激しいギターリフとブラストビートが絡み合い、観客たちの暴れたい感情のスイッチをガンガンに押してゆく。激走する演奏の上で、シャウトし、歌いあげるhideki(Vo)。90年代のヴィジュアル系音楽の香りを、あの時代性が持っていたヤバい刺激を、覇叉羅が現代へ甦らせた。拳を振り上げ、ともに叫び狂えばいい。あの頃に体感した身体を芯から熱く震え立たせる興奮が、覇叉羅の演奏によって甦る。このヤバい空気感が、たまらない。

歪みを上げ唸るギターの音を合図に、楽曲は重厚な激しさを持って走り出す。ハードコアな要素とメロウな魅力を重ねあわせ、観客たちを熱狂の渦の中へ覇叉羅はガンガンに引き込んでゆく。「INSANITY」が注入したスリリングで、ビリビリと痺れるヤバい緊張感。あの空気を僕らは探し求めていた。デンジャラスなあの空気に触れ、意識と身体が嬉しく騒ぎ続けていた。豪快な音を叩きつけ、「加虐性精神分裂症」が飛び出した。激しい衝撃に触発され暴れる観客たち。興奮を導く爆弾を次々投下しながら、覇叉羅は「これが俺たちの作り上げてきたあの時代の空気だ」と言わんばかりに、観客たちをヒリヒリとしたあの頃へタイムスリップさせていた。暴れたい、騒ぎたい、いやすでに暴れ騒いでいるのだが、それでももっともっとその刺激を欲していたかった。

hidekiの「今日は全力でお前らをつぶしにかかるからよ、お前らも全力でつぶしにかかってこい」という言葉を証明するように、覇叉羅は激しく唸る「Passage」を突きつけた。挑むどころではない、喧嘩をふっかける勢いで熱く挑発し続けるメンバーたち。滾る熱した血が身体中を駆けめぐる。これは戦いだ。25分という短い中で魂と魂を、気合いと気合いをぶつけあい、ともに絶叫へ向かう嬉しい戦だ。感情が沸き立つ。いや、もうヤバいくらいに沸騰している。覇叉羅が最後に突きつけたのが、気持ちを嬉しく沸き立たせる激情昂揚歌の「Still」だ。口ずさみたくなるキャッチーさを持ちながらも、触れた人たちの身体中へ暴れ狂わせるアドレナリンを注ぎ込む。誰もがその歌に触れ大きく手の花を咲かせ、興奮の中へ身を寄せていた。このゾクゾクッとした嬉しく震える興奮、出来ることならまた求めたい。もはや、今の時代の中では感じれないからこそ…。


幸樹(Vo/ダウト)、龍兎(G/-少女-ロリヰタ-23区)、MiA(G/MEJIBRAY)、塩谷朋之(B/More)、テロ(Dr/†я i ¢к)という面々が集まり、一限りのスペシャルバンドとして誕生した魔帝那オールスターズ。冒頭を飾ったのが、Matinaの顔とも言えたMadeth gray'llの「missantroop」だ。哀切な香りと嘆きの旋律を抱き疾走する演奏の上で、幸樹が艶やかな声を魅力に妖しくせまりだした。闇の中へ身を浸し、痛みに恍惚を覚え、優しく悶え狂いたい。この悲愴さを抱いた音と歌の調べがたまらなく心地好い。痛みを覚えようとも離したくない、嬉しい嘆きと衝撃だ。続いて飛び出したのが、この日のメンバーでもある幸樹と塩谷朋之が在籍していたMist of Rougeの「地下室」だ。激しく暴れ狂うダークでハードコアでブラストビートな演奏の上で、幸樹が嘆きも抱いた激情した声で歌いあげる。激しく攻める楽曲に触発され身体が騒ぎながら、哀切さも抱いた刹那な歌に心が酔いしれる。何より、あの頃のような刹那く華激で暗鬱な熱狂を全身で抱きしめていたかった。

「思い返すといろんな思い出が浮かび上がってくるんですけど。僕は高校生の頃にKISAKIさんと出会いMatinaに所属しまして、いろんな先輩方の姿を観て育ってきました。僕らは今も戦っているので、あの頃が懐かしかったじゃなく、とことんまで頭振れ!」と言う幸樹。胸をくすぐる美しい旋律が、疾走する演奏の上で輝きを放つ。飛び出したのが、Lubis Cadirの「season」だ。1990年代後半から2000年代前半のヴィジュアル系バンドが持っていた、切なくも華激な衝動と美しいメロディが胸をグッと切なく疼かせる感覚が瞬時に甦ってきた。「とことん暴れようかー、ヤレるかTOKYO」、あの頃から今も変わらない煽りを経て、飛び出したのが、KISAKIがMIRAGEの後に結成したSyndromeの「do・mes・tic」だ。激しく猛り狂うギターの演奏と強烈なブラストビートが炸裂。幸樹は荒れ狂う演奏の上で、グロウル交じりに熱く、激しく挑発し続けてゆく。この衝撃へ、肉体が嬉しい悲鳴を上げてゆく。終盤には、マイクを投げ捨て歌う幸樹。誰もが理性なんて服は脱ぎ捨てていた。思いきり頭を振りながら、あるべき姿に戻っていた。

最後に魔帝那オールスターズが突きつけたのが、テロが在籍していたヴィドールの「人魚」だ。激しさの中にも開放性を抱いた楽曲だからこそ、きっと会場中の誰もが沸き立つ熱情を心に捧げていた。間奏ではフロント陣4人が勢ぞろいし、演奏。一夜限りの特別なバンドだからこそ、演奏する側もあの頃の香りを自分たちでも懐かしみ、自身の懐へ新たな刺激として注ぎ込んでいた。在りし日の記憶を、形を変え甦らせた魔帝那オールスターズの演奏。あの頃へ戻りたい衝動に駆られていた人たちも、きっと多かったに違いない。


AKIRA(Vo)、YAYOI(G)、KISAKI(B)に加え、サポートメンバーにA・O・I(G/SHAZNA)、魔太朗(Dr)という布陣のもと、MIRAGEが復活を遂げた。それは伝説を閉じ込めた殻が割れ、新たな生命が誕生するようにも感じていた。そこには新たな伝説を塗り替えるバンドが鎮座していた。幕が開いた中、シルエット姿で映しだされたメンバーたち。MIRAGEのライブは、AKIRAの歌声からゆっくりと復活の扉を開くように「...Air」からスタート。楽曲が始まると同時に熱を持った演奏が表情を描き出す。哀切さと美しさが広がる空間の中、躁蒼とした調べの上で今にも壊れそうな想いを嘆き、零すように歌うAKIRA。彼の想いを、躍動した演奏が後押しする。とても悲嘆なドラマが、そこには広がっていた。触れてはいれない心の傷をふたたびえぐるように、痛心地好く胸に突き刺さる「...Air」。なんて悲愴な物語の始まりか。

一転、ヒリヒリとした、でも確かな力を抱いたギターの旋律が鳴り渡る。緩急巧みに音の絵を描き、MIRAGEは「流星」を響かせた。魂を浄化するような開放性を抱きながらも、その旋律には嘆く影がまとわりついていた。だからこそAKIRAの壊れそうな、でも確かな力強さを持った歌声が、希望と絶望の狭間の中で揺らめく恍惚を連れてきたのかも知れない。楽曲は一気に感情を昂らせた。激しく疾走しながら荒々しく、「Wind Whisper」を連れてきた。愛しい想いと壊れそうな感情を、嘆きと高揚の境界線の上に立ちAKIRAは歌い続けていた。彼のアンバランスな心を激しく駆る演奏陣が力強く支えてゆく。


「もう20年か、20年色褪せないというか、20年経ってさらに進化したMIRAGEをこの場で見せたいなと思います」というAKIRAのメッセージのあと、飛び出したのが「ESCAPE」だ。。魂を明日へ開放するように響く旋律を相棒に、僕らの心も演奏に合わせ心地好く揺れていた。心に溜まった澱やわだかまりを解き放つように、AKIRAはその先をまっすぐに見据え、歌いあげる。哀切ながらも胸をグッと揺さぶる旋律と演奏が触れた人たちを「あの場所」へと連れてゆく。間奏で見せたツインギターの調べが、なんて胸を昂らせたことか。「何時か色褪せた想いに抱かれて」という想いがとても愛おしい。その褪せた想いへふたたび色を加えるように、MIRAGEは今を塗り重ねていた。「Feeling Melody」では彼らと同じよう生きている感覚を覚えていた。「この夢が醒めれば、きっとまた笑える」と、MIRAGEは想いを嘆いてきた。でも、この夢は醒めないほうが笑える。そんなことも心に抱きながら、刹な演奏にずっと浸っていたかった。

今はこの世から離れ、違う世界で夢を喰らっている愛しい仲間たちへ向け、MIRAGEは「Rain」を届けてくれた。蒼く淡い色合いを見せるギターの調べの上で、AKIRAは込み上がる想いを空へ届けるように、嘆いた声さえ隠すことなく歌いあげてゆく。その想いを、哀愁と浪漫を携えたギターの旋律が昇華していった。その歌声と演奏には痛みと同時に、不思議と惹かれる優しさが滲んでいた。それが、彼らの言霊だと言うように。


続いて観客たちを激しく煽るAKIRA。飛び出したのが「I.D」だ。切っ先鋭いスリリングな演奏が身体をグサグサと貫いてゆく。痛い衝動を抱いた演奏と感情を剥き出しに歌い叫ぶ声に触発され、身体がゾクゾクッと武者震いを覚えていた。激しさをまとい疾走する演奏へ飛び乗り、共に熱狂の中へ飛び込めばいい。フロアー中から突き上がる拳に、メンバーらの煽りに触発されて起きたヘドバンの風景。時を忘れるように続く煽りの光景。その中へ、この日出演したメンバーたちを呼び入れた。ここからは、出演者らと観客たちとの戦いだ。互いが、限界を越える勢いで煽れば、客席でも暴れ続けてゆく。舞台上では、次々とマイクをリレーしながら煽る様が描き出されていた。互いに限界を…というよりも、ファンたちがこの煽りを乗り越えられるのか。この日にしか姿を現さない夢の大セッションだからこそ、満員のオーディエンスみんなも必死に熱狂へ食らい付いていた。

「全員でかかってこい!」とMIRAGEのメンバーたちはッションを通し作りあげた熱狂をさらに熱く燃えたぎらせようと、最後に「百花繚乱」を突きつけた。なんて胸を熱く揺さぶる楽曲だ。痛みへ恍惚を覚える感情と嘆く美しい歌にキュッと心を疼かせる、二つの心の琴線を刺激しながらこの場へ遭遇した人たちへ、MIRAGEは解けたくない感動と興奮の魔法をかけてくれた。果たして、この日のライブは一夜の夢だったのだろうか。また、新たな展開を描く始まりの音色だったのか。その先の姿は、リーダーKISAKIの心のみぞ知ることだ。


KISAKIは「全バンドが解散して環境が変わり色んな事があって全てが嫌になって一年間以上音楽やステージから避ける様な生活だったけど、今回、メンバー、スタッフ、出演バンドの皆さんと腹を割って話しました。みんなが背中を押してくれてやる気になった。その結果本当に素敵なイベントになったなと本当に感動しています。一年以上ステージに立たず、ヴィジュアルシーンは面白くなくなってきたな~と思ってたんですけど。今日のライブは楽しかったな。まだまだいけますね。MIRAGE地元の大阪でもやりたいし、20周年イヤーの一年間限定の活動予定ですが何が起きるかわかりません。その先のことは…」と述べている。

夢幻のような一夜の熱狂を描き上げたこのイベント。果たして、本当に埋葬されてしまうのか。それとも…。KISAKIバンド活動25周年の今、何も無い訳がないだろう。

写真◎zoi/柳本史歩(FOTO LORE)
取材・文◎長澤智典
編集◎BARKS


セットリスト

■Sclaim
Eclipse in the transmigration
Celestial sphere
鳳凰RAVE

■Dear Loving
LOVE ME
I'm here
365
Fly high

■KING
INAZUMA THUNDER GIRL
maxmum the GENELEC
流星
NEVER END,CRY.
KING WAY

■TOKYO YANKEES
Pre emptive strike
Serial killer
Bastard
ACE OF SPADES
RAT RACE
HOLLYWOOD HEARTBREAKER

■THE DEAD P☆P STARS
STAR☆LOVER
JUSTICE
いばらの道
W.A.R

■覇叉羅
VICTIM OF“D”
INSANITY
加虐性精神分裂症
Passage
Still

■魔帝那オールスターズ
missantroop(Madeth gray'll)
地下室(Mist of Rouge)
season(Lubis Cadir)
do・mes・tic(Syndrome)
人魚(ヴィドール)

■MIRAGE
...Air
流星
Wind Whisper
ESCAPE
Feeling Melody
Rain
I.D
百花繚乱

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