【インタビュー】キズ、来夢を苦しめる8つの誤解(後編)

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【その7】キズは新曲を毎年リリースするバンドであるという誤解

――そうなると、ライブはいつでも解散ライブですね。

来夢:あぁ…それはものすごく意識しています。終わりをいつも意識しています。最近のバンドを見ていると、明日が保証されているバンドがすごく多くて。儚くないと言うか。僕はバンドの良さは儚さだと思ってるんですよ。

――キズというバンドの最大の特徴は、そこかもしれないですね。明日はない感覚といいますか。

来夢:明日はないですね。このインタビューが出る頃には僕もキズもいないかもしれないです(笑)。

――その怖さを感じます。不思議なのは、明日はないという感覚なのに、いや、「だから」で繋がるのかもしれないですけれど、明日死ぬかもしれない、だから永遠に、100年後に残る曲を作りたいのでしょうか。

来夢:それはありますね。いま僕がやりたいのはその通りかもしれないです。でも、死ぬかもしれないとか明日辞めるかもしれないという言葉に対して、いまのファンの方は「何言ってるんだこいつ」と見てしまうかもしれないです。「EMIL」という曲に「僕をよくできた人間だと思っている」みたいな歌詞を書いたんですけど、ファンの方が僕たちを「よくできた人間だと勘違いしている」って最近よく思うんです。「俺はよくできてない人間だからバンドやってるんだよ」って思うこともあるし、「良いひと代表みたいな感じで俺を見ないでくれ」って。これも誤解ですね。

――絡み合っていた誤解の糸が、ほぐれてきましたね。

来夢:たぶんもう、100%言い切ったと思います。最期の最期が一番大切じゃないですか。だから終わりを意識して日頃活動してますね。

――終わりを意識できるのは、終わりを一回見たからなのでしょうか。自分の死であったり、身近なひとの死を見ているミュージシャンの方、多いですよね。

来夢:あぁ…それはありますよね。一緒にバンドをやっていた仲間が亡くなったりとか、死は身近にありました。終わりはたくさん見てきたと思うんです。終わり良ければすべて良しっていうじゃないですか。でもバンドが終わるときって基本的に解散とかだし、終わり方が悪いなって思うんです。だから僕はキズを墓場にしたいというのがあります。

――突っ走って欲しいです。ある方が「後世に残る作品はどう作られるのか」をお話されているのを聞いたことがあります。その方によると、キズの「ソールドアウトなのに赤字」だったO-WESTライブが話題になったように、現世の利益や利便性を超えたものが後世に残るそうです。例えば世界的に有名な遺跡もつくられた当時は犠牲を生みましたが、いまでは世界から人が集まる名所になっています。

来夢:確かにそうですね。

――だから、ミュージシャンの方は「赤字だ、はっはっは」くらいがちょうど良いのだと思います。

来夢:王様になるくらいが(笑)。それは興味深いですね。その通りだと思います。遺跡の話に結びつくとは思いませんでした。

――ビジネスは手段であって、手段の先にある「100年後に残る音楽」などの目的をつくれたひとが活動を継続させていると思っていまして。外から見るとその目的は理解しづらいこともあるかもしれませんが。

来夢:まさにその通りで、キズも一度見ただけでは理解しづらいバンドだと思うんですよ。歌詞を書いていて、自分で「なんだこの気難しいバンドは」と思うことがあります(笑)。でも、歌詞も「極力わかりやすく」という傾向が強まっている中で、逆を行きたいなって。考えて考えて、考えた人間だけが辿り着ける世界があるっていうバンドにしたいなと思っていますね。そのためには僕がみんなの数百倍考えないといけないので。

――そうですね!

来夢:僕はそんなに学歴あるわけでもないし頭が良いわけでもないので、難しいところがあるんですけど(苦笑)。


【その8】キズはヴィジュアル系シーン、ロックシーンでひとり勝ちを狙っているという誤解

――なんだかキズにキャッチコピーをつけたいですね。「話題のヴィジュアル系バンド」では収まらなそうです。

来夢:そうなんですよ!何か良いのありますか(笑)!? 実は、ヴィジュアル系というジャンルに対しても疑いを持っていて。ヴィジュアル系と言ってもいま、ジャンルとして確立できていないと思うんですよ。共通点は「メイクしたひと」くらいなものです。そろそろヴィジュアル系から派生すべきだと思ってるんですよ。

――派生、ですか?

来夢:ヴィジュアル系から派生したジャンルをつくるべきかなと思っていて。でも僕はキズというバンドだけで時代をつくりたいとか、変えたいとは考えていません。この姿を見てくれた後輩が自分の正しい意志を継いでくれたらそれでいいんです。僕が過去に先輩バンドマンからもらった憧れとか感動を、同じように後輩に与えられるバンドになっていきたいですね。感動をもらった人間が感動を与える人間にならないといけないという使命感というか、ここで終わらせてはいけないと思っています。その気持ちが強いんで、自分一人で完結しなくてもいいんです。

――誰かが継いでくれることを願っているんですね。それがシーンの作られ方かもしれないです。

来夢:でも、昔はライブのたびに打ち上げがありましたがいまでは減っていますし、難しいところもたくさんあると思うんですけど寄ってくる後輩の面倒は極力見るようにしています。

――そうなんですね。どんな後輩が来夢さんのもとに来るのでしょうか?

来夢:寄ってくるのはちゃらんぽらんなやつばっかですね(笑)。「お前本当にわかってる?」っていう説教から入ることが多いです。先輩が後輩の面倒を見る文化をうまく残していけたらいいな、という意識があります。

――背負うという感じなんですかね。

来夢:背負うと言うか、いま背負っているものを渡せる人間がほしいですね。たぶん、僕ひとりではできないことなので。孤立してるなって思うんですよ、いまのバンドって。僕らもまだ孤立してると思うんですけど。同じ意志を持ったバンドが集まることもなかなかないからみんなワンマンなのかなって思ったりするんですよ。でもこんな時代に孤立していたら何も残せないでしょって。

――ひとり勝ちというよりも全体で上がっていく意識なんですね。

来夢:そうですね。ひとり勝ちは無理だと思いますよ、この時代。だから割と平和的な考えを持ってるんですけど、尖って見えちゃうんですよね。ていうのがすげー悩みですね(笑)ちなみに神谷さんから見て、キズのバンド名の由来はなんだと思います?これは、絶対当てられないと思います!

――ずっと考えてるんです。「傷痕」ですごいヒントを出していますよね…何なのでしょう?

来夢:これは…いやこれはまだ秘密にしておきます。「傷痕」を聴き込んでもここにはまだ結びつかないかもしれないですね。由来は頑なに言わずに活動しているので、ここでもまた誤解が生まれてるんですよ。言えないんです。言わないと決めているんです。そこにも疑問を持ってほしいですね。


   ◆   ◆   ◆

前編・後編とあわせて、来夢が受けていると感じる「8つの誤解」を紐解いてきた。今後は誤解なくキズの曲を聴けるようになりそうだ…と思ったが、キズというバンド名の由来やコンセプトは謎のまま。しかもここを謎にすることで誤解が生じていることを、来夢自身が理解している。ファンの方と謎の解き合いを楽しんでいるということなのだろうか。キズは永遠に謎と誤解を生み続けるバンドなのかもしれない。この記事によって読者の方に新たな謎と誤解を持たせてしまったのではないか。不安は残る。

取材・文◎神谷敦彦(『ヴィジュアル系の深読み話』編集長)
編集◎服部容子(BARKS)

◆【インタビュー】キズ、来夢を苦しめる8つの誤解(前編)

<キズ4th ONEMAN「さよなら」>

2018年9月24日(月・祝)
Zepp TOKYO

[出演]キズ
[開場/開演]17:15/18:00
[前売/当日]4,500円(D別)/5,000円(D別)

[チケット]
■e+プレオーダー先行予約
受付期間:8月26日(日)12:00~9月6日(木)18:00
結果確認・入金期間:9月8日(土)13:00~9月10日(月)21:00

■各種一般発売:9月15日(土)

<キズ3rd ONEMAN「怨ミ晴ラサズオクベキカ」>

2018年5月3日(木・祝)恵比寿LIQUIDROOM
1秒で完全SOLD OUT
※当日券の販売はございません。

3rd SINGLE「傷痕」

2018年3月13日 RELEASE

【TYPE A】
DMGD-003A
¥1,500(tax out)
[CD]
1.傷痕/2.怨ミ節/3.十九

【TYPE B】
DMGD-003B
¥1,500(tax out)
[CD]
1.傷痕/2. 怨ミ節/3.EMIL

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