【短期連載】<SXSW>漫遊記 第三回、「“JAPAN NITE”に長い列」

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その時間帯ならライヴのバッティングも少ないと思い、『FLOOD FEST』でルーシー・ダッカスを見たあと、9ブロックほどダッシュして会場となっているValhallaというヴェニューに駆けつけると、トップバッターの山崎千裕+ROUTE14bandが演奏を始めたところだった。2013年の初出演以来、毎年<SXSW>に出演。今回で6度目となる彼女らは、トランペット走者の山崎千裕を中心とするポップなジャズバンドだ。筆者は2013年に一度、『JAPAN NITE』ではないショウケースライヴで見たことがあった。



日本の音楽を世界に届けるデジタル・ディストリビューター“TuneCore Japan”がデジタル配信の枠を超えて、<SXSW>に出演する日本人アーティストをバックアップするこのイベントにはその他(※出演順に)、神野美伽、TENDOUJI、ドミコ、竹内アンナ、木歩、machina、Attractionsら計8組が出演した。時間の都合で筆者は木歩までしか見ることができなかったのだが、会場にいるのは出演アーティストの関係者以外、ほぼ外国人(って言うか、ここでは我々が外国人なんだけれど)という状況で、筆者が見ることができた6組の演奏は各30分という短い尺ながら、それぞれに見どころがあるものだった。

最後は客席で演奏する熱演で盛り上げた山崎千裕+ROUTE14band。着物で登場した神野美伽。ガレージ・ロックとオルタナとオールディーズが入り混じる曲の数々を、エネルギッシュに聴かせたTENDOUJI。ピリピリとした演奏に加え、日本語で押し通したMCでも硬派な印象を残したギターとドラムのデュオバンド、ドミコ。自作の“alright”に加え、アコ-スティックギターの弾き語りでレニー・クラヴィッツ、スティーヴィー・ワンダー、ガンズ・アンド・ローゼズのカヴァーを披露して、観客を沸かせた竹内アンナ。曲のバックグラウンドを英語で語りながら、オーセンティックなシンガーソングライターの魅力を印象づけた木歩。









しかし、一番印象に残っているのは、やはり神野美伽だ。ニューヨークのジャズクラブで歌ったり、古市コーターロー(ザ・コレクターズ)、クハラカズユキ(The Birthday)とユニットを組んで、ロックフェスに出演したりと、演歌に軸足を置きながら軽々とジャンルを越境してみせる彼女は今回、山崎千裕+ROUTE14bandによるジャジーな演奏をバックに「りんご追分」「座頭市子守唄」「酔歌~ソーラン節ヴァージョン」などを歌った。

圧巻は「酔歌~ソーラン節ヴァージョン」。それまで神野が存分に回すこぶしに聴きほれていた観客たちにコール&レスポンスを求めると、“どっこいしょ!”“どっこいしょ!”という声が客席から上がった。ジャジーな演奏も良かったが、もしこの次があるなら、ド演歌が<SXSW>でどんなふうに受け入れられるかが見てみたい。



その神野がトリを務めた『JAPAN NITE』には他に木歩、PRANKROOM、Rude-D、竹内アンナ、Attractions、ドミコが出演した。また、近年は『JAPAN NITE』以外でも日本人アーティストの出演が増えてきたが、15日(木)の夜、ダウンタウンではTAWINGS、TENDOUJI、DYGL、machina、2年連続で出演したCHAI、そしてYahyelが出演する『SOUNDS FROM JAPAN』というショウケースも開催された。

そこで新感覚のガレージロックを奏でるDYGLのライヴを見ようと思って、出演時間ちょうどに着いたら、会場はすでに満員。なんとか入れたものの、彼らが演奏している40分間、大半が外国人という客席で身動きが取れなかったという状況から、筆者は改めて、アメリカと日本を行ったり来たりしながら活動している彼らの人気を実感することとなったのだった。



撮影・文◎山口智男

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