【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.100「ママ友はプロダンサー 〜安室奈美恵に憧れて〜」

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保育園とは、意外な出会いのある場でもある。息子のクラスにプロダンサーの母を持つ子がいた。母の名は、AKiHA。小学3年生、年長、年少のこども3人を育てながら、プロのダンサーとして活動しているワーキングマザーだ。ダンサー歴は長く、NHK紅白歌合戦などのテレビの歌番組をはじめ、アーティストのライブやMVへ出演している他、子どもから大人までを指導するダンス教室を主宰している。


彼女のブログには、3人のこどもたちとの日常の他、アーティスト・安室奈美恵への敬愛が綴られていて、彼女の一人の女性としての人生と、ダンサー・AKiHAとしての仕事面に深々と多大な影響を与えたことが窺い知れる。自身と重なる部分を多く持つ安室奈美恵は、プロダンサーとして生きるAKiHAとしても、一人の女性・母としても、先をゆく憧れの存在であるとともにバイタリティの根源なのだろう。

このように、日本が誇る女性ポップ・スターの頂点に君臨してきた安室奈美恵がどれほど多くの人々に影響を与えてきたのかは見当も付かないが、身近にこうした類い稀なエピソードを持つ人に触れると気安く“安室ちゃん”なんて呼んじゃいけないなと思えてくるし、かく言う私も安室奈美恵を極めて格好いい女性アーティストとして捉えている大勢の中の一人である。

私が音楽ギョーカイの片隅で生息しながら安室さんと遭遇したことが一度だけある。レコーディング・スタジオのロビーで、当時私が担当していた女性シンガーだと思って話しかけたら安室さんだったというべたな話だ。「すいません、間違えました」と言った私に微笑みで返してくれた彼女を見て、この人には同性でも惚れるなとしみじみ思ったのは20年近く前のことだ。当時は私も二十歳そこそこであったし、安室さんもまだ10代だったはず。

その後、彼女はテレビから姿を消すと共にアイドル的なカテゴリーから脱して新たな道を切り開き、日本を代表するアーティストへと静かに躍進していった。その姿を遠くから見ていただけだが、きっと簡単ではなかったと思う。実力と人気、そして息子への愛が彼女を支えたように映ることも素敵だ。見た目の可愛さとは裏腹に、きっと肝の据わった意思の強い人なのだろう。女性は強くて逞しさを兼ね備えた美しい同性に惹かれるものだから、女性ファンが多いことも頷ける。

話を戻そう。この春、AKiHAの子どもたちは転園した。保育園への送迎に費やさなければならなかった往復2時間分を、子どもたちと別のことに費やすために決意したそうだ。自分は一人息子を抱えているだけで手一杯だと感じているのに、彼女は一人で3男児を育てながら、子の持つ障害にも真摯に向き合っている。だから、彼女の願いが叶ったことは喜ばしいことだが、別れはやはりさみしい。



彼女と、その子どもたちを慕う保育園の母たちは、旗振りママのおかげで全員参加のお別れギフトを用意し、暖かく送り出した。それも彼女と彼女の子どもたちの人柄ゆえのことであるが、他の母たちも全員仕事を持つ身を物ともせずに鮮やかなチームプレイでギフトの準備からサプライズまでスマートにやってのけた姿も素晴らしかった。

保育園という場で、親でありながら、絆や経験を自分が得られようとは考えてもみないことだったが、皆の真剣な想いがひとつの巨大なエネルギーとなると、笑顔を生んだり、その後の暮らしを豊かにするヒントや気づきを与えてくれたりする。こうした日々のドラマは作られたテレビドラマよりもひどく感動するし、心が満たされ、生きやすくなる。子どもが通う保育園の親同士という関係だけでは分からないことも、ほんの一言から始まるコミュニケーションによって、「安室ちゃんがいなかったら今の私はいない」と言い切り、その道のプロの人がこんなにも近くにいることを知れる場合もある。コミュニケーションとは、生きる上でとても大切なことである。



ある日、AKiHAに「子を3人も抱えて、すごいとしか言いようがないです」と本音を漏らしたら、「踊りしかできないんで」と笑顔で返されたことがあった。その笑顔は、かつて安室さんが私にくれた微笑みと完全に重なった。影響力とはこういうことを言うのだろう。

それから、好きなことを仕事にし、憧れのアーティストのバックで仕事ができるようになるまで頑張った人は実に謙虚である。そんな私の自慢のママ友は、安室奈美恵の最新アルバム『Fainally』収録曲の「Do It For Love」MVでその姿を確認することができる。

写真提供:HappyDays
文:早乙女‘dorami’ゆうこ

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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