【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.47「洗濯物」

ツアーの合間に書いています。11日の名古屋と18日の札幌の間、移動日を抜いた3日間の帰宅中です。自分はスマホもタブレットも持っていないので自宅でしか原稿が書けないのです。いつもなら一度ツアーに出ると出っぱなしですが、今回は一旦途中休憩です。この中休みには緊張の糸が途切れる弊害がありますが、何ものにも代え難い大事な利点があります。洗濯です。よく一年の大半を海の上で過ごす漁師さんが陸に上がって命の洗濯をするという表現をしますが、自分達の場合は本当に洗濯をしに戻ってきています。ツアー中は宿泊しているホテルのコインランドリーでするのですが、ライブ後は時間が遅くて使えないので、次の土地に移動してからになります。洗濯機はひとつのホテルに2台くらいしか設置されていないので、着いてすぐに争奪戦になります。衣装は乾燥機にかけたくないので部屋干しです。干すスペースがあまりないので、Tシャツや靴下などの汚れ物がどんどん溜まっていくという寸法です。名古屋で飽和状態になった汚れ物ですが、この3日間のおかげですっきりです。

ツアー中溜まった洗濯物を一気に洗うかどうかは、ホテルの部屋の乾燥具合で決めます。空調が良い快適な部屋では生乾きで臭くなってしまいます。いい具合に乾燥した、人に厳しい部屋に当たったら決行です。備え付けのハンガーだけでは足りないので、針金タイプのものをたくさん持参しています。これだと鏡やエアコンなどのほんの僅かな引っ掛かりがあれば干せます。どこにも隙のない、ガードの堅い部屋だと苦労しますが、そこはだてに30年もライブを続けていません、ベテランのプライドにかけて部屋干しポイントを探し出します。天井や壁に洗濯物を鍾乳石のようにぶら下げて、湿度100％の中、満足して眠りに就きます。乾燥は喉の大敵なので一石二鳥です。


今回は汗臭いバンドを紹介しましょう。勿論不潔という意味ではありません。男臭い、泥臭い、骨太なサザン・ロック（アメリカ南部のロック）バンド、BLACKFOOTです。メンバーのうち二人はインディアンの末裔という筋金入りのハードロックバンドです。ギターが元LYNYRD SKYNYRDのメンバーらしく、スライドギターがかっこいいです。特に気に入っているのは「Marauder」というアルバムです。テーマが砂漠やガラガラヘビだったり、バンジョーが挿入されていたりと西部劇から抜け出て来たような音楽ですが、ブリティッシュぽいリフも満載です。軟弱なものを蹴散らすような野太いボーカルがたくましく、「ロッカーが洗濯なんて気にしてんじゃねえよ」と言っているようです。

ロッカーはワイルドなほうがかっこいいのは重々承知していますが、最近加齢臭が気になるので「レノア」を使うようにしています。





◆人間椅子 公式LINEアカウント
◆【連載】人間椅子 鈴木研一の「ハードロック喫茶ナザレス」まとめ