【インタビュー】首振りDolls、昭和歌謡からメタルまで様々な要素を採り入れた超個性的メジャー1stアルバム『真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー』

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■歌詞を書く時は物語を創って登場人物の性別や年齢、性格まで考えます
■今回書いた歌詞は曲ごとにモデルがいることもあってイメージしやすかった


――『真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー』を聴くと、いろいろな音楽的要素を採り入れて昇華することに長けたバンドだと分かります。Johnnyさんが書かれた「月明かりの街の中で」はR&Rをベースにしたキャッチーな曲で、アルバムの良いフックになっていますね。

Johnny:さっきnaoが首振りDollsのために最初に作ったのが「ニセモノ」だったという話をしましたよね。それで言うと、俺が最初に作ったのは「タイムマシーン」という曲で、「月明かりの街の中で」と同じ系統の曲なんですよ。そういう意味では、自分の最もスタンダードなところがベースになっていますね。1970年代後半の初期パンクのオマージュみたいな曲です。

――こういう曲があることも魅力になっています。首振りDollsは歌詞も面白くて、自身の心情やメッセージを託すのではなく、全曲物語を描いた歌詞になっています。

nao:私もJohnnyも情景を描いて何かを伝えるという歌詞が好きなんです。だから、私が歌詞を書く時は自分の中で物語を創って、登場人物の性別や年齢、性格といった細かいところまで考えます。今回書いた歌詞は曲ごとにモデルがいることもあって、イメージしやすかったですね。

――物語のディテールまで創り込むことでリアルな歌詞になっています。それに、女性目線の歌詞が多いことも含めて、文学的な味わいも特徴といえますね。

nao:私はオタクなので、江戸川乱歩や寺山修司、漫画では丸尾末広とか、つげ義春を始めとした“ガロ系”の作家がすごく好きなんです。それが滲み出ているというのはありますね。

Johnny:俺の歌詞は、自分が好きな世界観とか、カッコいいと思う男性像を描いたものが多いです。「イージーライダー」は、映画の『イージーライダー』の空気を若干出そうと思ったところがあったし。「イージーライダー」は最初にサビのメロディーと“気の向くままに 何処か遠くへ 帰り道なんて はじめからなかったように”という歌詞が同時に出来て、この歌詞は完璧だと思ったんですよ。だから、2番も同じにしたんです。サビが良いから、AメロとBメロはバカな感じでいってもいけるんじゃないかなと思って。だから、歌中の歌詞は殴り書きというか、勢いで書いた感じです。「悪魔と踊れ」は、ちょっと特殊というか。ツアー帰りに車を運転しながら、俺とnaoでキャッキャ言って作ったんですよ。それは今までになかったパターンで、すごく楽しかったです。

nao:あと、私の歌詞に関しては、“デビュー・アルバムで死を歌う”ということをやりたかったんです。荒井由実さんは「ひこうき雲」でデビューして、あの曲は自殺の曲ですよね。それが私の中で衝撃的で、自分もやろうと思ったんです。だから、死にたがっている人のことを描いた歌詞が結構多いですね。それに、“殺せ”とか“死ね”みたいな強い言葉を分かりやすいメロディーに乗せると、すごくインパクトの強いものになるというのがあって。たとえば、山口百恵さんとか中森明菜さんの曲は、歌詞の中に喋り言葉が入ってきます。“バカにしないでよ”とか“イライラするわ”とか。そういう手法が良いなと思って、意識して歌詞を書いている部分もあります。


――それが奏功して、死を題材にして歌詞でいながら、極端に重かったり暗いものにはなっていませんね。

nao:そう。それに、死を歌っている曲が多いけど、実は誰も死んでいないんですよ。“死んでやる”とか“殺してやる”と言ってるだけで、死んではいない。「煙突の街」も“ないはずの今 涙流して”という言葉で終わるんですけど、それは“死のうと思ったけど死ねなくて、今日泣いてしまっている”ということを描いているんです。「切花」も“剥がれる爪構わず逝け 天国へ逃げろ”みたいなことを歌っているけど、最後の“ようこそ 私のもとへ”という言葉は、“この世界にはロックという楽しいものがあるから死ぬことないよ”というメッセージなんです。

――個性的な楽曲に加えて、歌詞も要チェックです。では、続いてプレイや音作りなどについて話しましょう。

John:僕はベース・ラインを付ける時は、歌のメロディーを活かすということを一番重視しています。だから、歌のメロディーが出来上がらないとベースを付けられないんですよ。それに、まずはベース・ラインを口で歌って作るようにしています。楽器を持ってしまうと運指の面とかで制限されてしまうので、口ずさんで作ったメロディーをベースに置き換える。うちはトリオバンドで隙間がいっぱいあって、やりたい放題できるからすごく楽しいですね。たまにやり過ぎてボーカルを邪魔してしまうんですけど(笑)。そういう時は引き算するようにしています。ただ、今作に関してはプロデューサーの戸城(憲夫)さんに、もっと弾けと言われました(笑)。僕はギター・ソロのバックとかはずっとルート弾きをしたいタイプのベーシストなんですけど、そうしたら戸城さんに「つまんねぇよ、お前」と言われて。それじゃあと思って“ガッ!”と弾いたら、OKを貰えました(笑)。今回の中で特に気に入っているのは、「イージーライダー」のサビのフレーズです。この曲のサビは歌が掛け合いになっていて、2回目の掛け合いのところにオブリのフレーズを入れたいなと思って。なかなか良いフレーズが弾けたんじゃないかなと思います。あと、「煙突の街」の2番はベースが和音を鳴らしているんですよね。そういうところも、ベーシストの人に聴いてもらえると嬉しいです。

――アルバムを通してカッコいいベース・フレーズが満載で楽しめます。「浮氣世」のスラップや「ロックンロール」のイントロのベース・ソロなども聴きどころですし。

John:首振りDollsでスラップをしたのは、「浮氣夜」が初めてじゃないかな。僕は指弾きもピック弾きもするんですけど、スラップは苦手なんですよ。でも、この曲のAメロを聴いた時に、これはスラップするしかないだろうと思って入れ込みました。「ロックンロール」のソロはEのペンタトニックを弾きまくる…みたいな(笑)。僕は1コードのフレーズを考えるのが苦手なので、最初は全然弾けなかったんですよ。でも、ライブを重ねるごとに弾けるようになっていきました。

Johnny:ギターはSGとテレキャスターを使い分けようというのが、あらかじめ自分の中にあって。あと、スタッフがストラトを持ってきてくれたんですよ。その3本を曲調とか、弾くフレーズに合わせて使い分けて、さらにそれぞれの音作りも丁寧にしました。あとは、バッキングをダビングする時に、なるべく同じことはしないようにしたというのもありますね。何曲かは同じフレーズを弾いていたけど、戸城さんに違うことをやっちゃえよと言われて、全体的にステレオ感を活かしたアプローチになっています。だから、細かく聴くと、結構面白いと思う。個人的には「浮氣夜」が好きですね。後半の(ローリング・)ストーンズっぽくなっているところが気に入っています。

――一見ストレートなようで、実は丁寧に構築されていますよね。それに、エフェクターを効果的に使っていることもポイントです。

Johnny:エフェクターは結構多用しましたね。「wanted baby」や「夜の衝動」のギター・ソロにモジュレーション・エフェクトを掛けたり、「境界線」はタッチワウを使ったり、「切花」ではトーキング・モジュレーターを使ったし。ファズもビッグマフとオクターブ・ファズを使い分けたんです。「wanted baby」と「サンドノイズ」は、絶対にビッグマフやろうと思って。あと、エフェクターではないけど、さっき話が出た「サンドノイズ」ではシタールも使った。今回のレコーディングで初めて使ったものも多かったですね。元々は、ギターは“アンプ直”が一番良いと思うタイプだったけど、ちょっとずつ知識が深まってエフェクターも使ってみたくなって、最近は積極的に使っています。今回のレコーディングはいろいろ試せて、楽しかったです。

――サウンド面でも良い味付けをされています。あと、「境界線」や「悪魔と踊れ」のギター・ソロでは“ワウ止め”もされていますね。

Johnny:よく分かりますね(笑)。ワウを途中で止めた状態で弾くと、すごく良い感じの音になることをレコーディング中に発見したんです。それで、みんなで一番良い音がするポイントを見つけて、「ここや! 今弾け!」みたいな(笑)。ちょっとでもペダルが動くと音が変わってしまうので大変だった(笑)。でも、一番好きな音が出るポイントを見つけられたのは、大きな収穫でした。

nao:ドラムに関しては、自分ができることしかできないけど、その感じが好きなんです。手数とかもそんなに多くないし、カチッとしたドラムを叩くわけでもないけど、私のドラムはロックンロールだと思っているから。それに、レコーディングする時はいつも以上に“めんたいロック感”を意識するというのがあって。あえて手首を固めて、アップ・ダウンせずにハイハットを刻んだりするんですよ。それは、今回も変わらなかったです。歌は曲によってキャラクターを変えないといけない……男になったり、女になったりしないといけないし、1曲の中で両方になる曲とかもあるので、その辺の歌い分けを結構考えながら録っていきました。歌録りで印象に残っているのは、「夜の衝動」ですね。この曲を最初に私がツルッと歌ったら、エンジニアさんに「メチャメチャ嫌なことを思い出して、落ち込んで」と言われて。「わかりました」と言って、落ち込んでもう1回歌ったら、途中で止められて「ちょっと部屋の電気消してみようか」と言われて。真っ暗な中で歌うことになったので、自分の声の返しをすごく大きくしてもらって、息遣いとかも伝わるように歌ったんです。そういう風にして録ったのは初めてだったので、メッチャ楽しかったです。

Johnny:気持ちは落ち込んでいるのに?(笑)

nao:うん(笑)。こんな風に歌うのも“あり”だということに気づいて、良い勉強になりました。良い意味での気持ち悪さを出せたかなと思います。

――たしかに「夜の衝動」の歌は、いろいろなものが滲み出ている感じの歌になっています。歌に関してはパワフル&セクシーなスタイルを基本としつつ、女性らしい表現の上手さに圧倒されました。

nao:私は、実は常日頃からオネエ言葉を使うようにしているんです。別に男が好きなわけではないけど、オネエ言葉は便利だなと感じたことがあって。なにか注意したりする時にオネエ言葉だと“ズバッ”と言っても角が立たないんですよね。それに、私は子供の頃から女の子に間違えられがちだったんです。今はガサガサの声になったけど、高校生の時は女の子に間違えられるくらい声も高かったし(笑)。そういうところで、自然と女性っぽさみたいなところは身についているのかなと思って。だから、野蛮な感じに歌うのも、女性らしく歌うのも、どっちも得意です。

――シンガーとしてのスキルの高さを感じます。『真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー』は、首振りDollsの魅力や奥深さが味わえる一作になりましたね。それに、本作を携えて5月に行うツアーも楽しみです。

John:首振りDollsのライブの特徴として、目でも楽しめるというのがあって。三人ともステージングが派手なんですよ。そこも含めて自分達の魅力を一番伝えられるのはライブだと思っているので、CDを聴いて良いなと思っていただけたら、ぜひライブを観て欲しいです。特に、フラストレーションが溜まっていて“スカッ!”と発散したいという人にはお薦めです(笑)。

Johnny:ライブは首振りDollsのエンターテイメントの最高峰だと思っています。いろんな形で表現できるのがライブだと思っているし、それを楽しんでもらえる自信もある。なので、少しでも首振りDollsに興味を持った人は、ぜひライブに来て欲しいです。

nao:バンドマンは、夢見てナンボだと思うんですよ。今の私達はこのタイミングだからこそ出せる“夢見てる感”みたいなものがきっとあって、同じ夢をライブ会場でお客さんと共有できるというのは本当に素敵なことだと思う。今この瞬間の首振りDollsを見てもらうことにすごく意味があるので、今度のツアーで私達が近くに行ったらぜひ遊びに来て欲しいです。

取材・文●村上孝之

リリース情報

『真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー』
2018.4.25 in stores
定価:\2,315+tax/CD:KICS-3699
1.イージーライダー
2.境界線
3.wanted baby
4.切花
5.浮氣夜
6.夜の衝動
7.煙突の街
8.月明かりの街の中で
9.悪魔と踊れ
10.サンドノイズ
11.ロックンロール
12.月のおまじない

ライブ・イベント情報

メジャー1stアルバム「真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー」
リリースワンマンツアー2018 「MIDNIGHT COLORS ~真夜中の極彩夢~」
2018年05月13日(日) 東京 代々木 LIVE labo YOYOGI
2018年05月18日(金) 京都 磔磔
2018年05月20日(日) 愛知 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
2018年05月26日(土) 福岡 Kieth Flack
2018年05月27日(日) 小倉 LIVE SPOT WOW!

「Leetspeak monsters 2nd Mini Album『Mixtured night between Life and Death』発売記念主催TOUR Mixtured night Tour~混ざり合う夜~」
4/26(木)福岡 DRUM SON Bigtwin Diner SHOVEL
出演:Leetspeak monsters / Hysteria / チャイルドプレイ

2018年05月01日(火) 名古屋 得三
出演:騒音警察(頭脳警察×騒音寺)

「騒祭2018」
5/03(木)京都磔磔
出演:騒音警察(頭脳警察×騒音寺) / KiNGONS

<十一代目梅雨将軍2man series「鬼の将軍地獄」>
2018年06月01日(土) 東京 池袋 LiveGarage Adm
出演:スキッツォイドマン/純情マゼラン(Opening Act)

<怪帰大作戦~第6怪『帝都奇譚』>
2018年06月02日(土) 東京 キネマ倶楽部
出演:ストロベリーソングオーケストラ/MERRY/R指定

<RISE ABOVE Vol.6>
2018年06月04日(月) 福岡 Queblick
出演:The Folkees/NOWEATHER/アルコサイト/BAN'S ENCOUNTER

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