【連載】フルカワユタカはこう語った 第23回『また、リリースにいたる』

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2月上旬。アルバムのリリースからちょうど1ヶ月、新木場コーストの<ユタカ祭>から1週間、リリースツアーもまだ8割以上を残し、まさにこれから『Yesterday Today Tomorrow』を広めていかねばという時期なのだが、早速次の活動内容を決めるミーティングが開かれた。

◆フルカワユタカ 画像

なんだかこのように“食い”気味で次の活動を考えるのは久しぶりだ。メジャーデビューしてからの数年間は、常にツアーやライブが先行して決まっており、そこに合わせて「いついつまでにアルバムを」、そのアルバムに合わせて「いついつまでにシングルを」と“超”食い気味のスケジュールが普通だった。

ツアー中に次の作品を作り、ツアーが終わればシングルのリリース、でアルバムのリリース、そしてまた次のツアーが始まる。2005年のDOPING PANDAデビューミニアルバム『High Fidelity』から2009年のアルバム『decadance』までの4年間は“ツアー”と“リリース”のバトンリレーでゴールの無いトラック競技を延々と続けているような日々だった。さっき調べたところ、その僅か4年の間に僕たちは12枚ものCDをリリースしている。

そんな中、ラストアルバム『YELLOW FUNK』のリリースは、当時直近のリリースであるミニアルバム『anthem』から1年5ヵ月もかかった。4年間で12枚ものリリースがあったのにも関わらず、最後の2年間で僕たちはたった1枚しか(ベスト盤を除いて)アルバムをリリースしていない。これは活動自体が緩やかだったインディーズ時代にもないスローペースだ。自分たちの実力や伸びしろに疑念を抱き始め(この類いの懐古はこのコラムでしつこいくらいしてるので、いい加減僕も食傷気味であるが・笑)、このまま流れに任せて走り続けるだけではいずれ足が止まってしまう、このルーティンを一度止めて走りのフォーム、もっと言えばトラック競技そのものも見直してみようというのが、今思えば僕たちの最後の2年間だったのだろう。

結局、フォームにも競技自体にも答えは出せなかった。周りが放っておけば僕たちは何年もアルバムを作らなかったかもしれない。が、メーカーや事務所と様々な約束の上で活動が成り立っていたバンドだ。売り上げという名のデッドラインが存在し、最後はやはりツアーを目印に、そこを目がけて滑り込むように『YELLOW FUNK』を完成させた。

しかしながら、今聴くとそのビリビリとした毒っ気が何とも美しい。あの時のあの無様なフォームでしか出せない美しさだ。


▲<フルカワユタカ presents『yesterday today tomorrow TOUR ファイナル』>2018年4月13日(金)@Shibuya WWW

ドーパン(DOPING PANDA)を解散して、僕がソロで活動する為にまず考えたのは音源ではなくライブだった。あの時、ライブやツアーという縛りを全く考えずに音源を作ってみていたら物語は全然違っていたかも知れない。が、そこはバンドマンの性、結局はステージで演奏している未来の僕から世界を逆算していく。

これまでと違ってギターを2本使った編成でライブがしたいな。村田シゲ、新井弘毅、カディオというメンバーを選び、僕の作曲は次第に彼らとのライブを想定したものに変わっていった。もしかしたらドーパンの時よりも一層ライブを意識して作曲していたかもしれない。バンド時代同様な全国ツアーを組み、そのツアーに合わせて作ったのがデビューアルバムの『emotion』だった。

ベボベ(Base Ball Bear)のツアーをサポートしたとき、小出君は楽屋でコードの勉強をしていた。曰く、「今まで2本でやっていたコードのオーケストレーションをギター1本だけで出来るようにする為」とのことだった。当時『光源』の制作中だったので作曲の為の“学び”であったことは間違いないだろうけど、今月から初めて3ピースでツアー(Base Ball Bear Tour『LIVE IN LIVE』)をまわるベボベの、そういった未来からの逆算も、あるいはあったのかもしれない。

僕のソロ2枚目(『And I’m a Rock Star』)は、ある種不純な動機から生まれた。ベボベのサポートをしたことで偶発的に潜伏期間を終えることが出来た僕だったが、せっかく水面から顔を出したのだから何かアピールしましょうよ、というスタッフの勧めもあってアルバムを作ることになった。それは、必ずしも創作意欲に駆り立てられたからというわけでは無かった。いざレコーディングに向けて作品を詰めていくと、結局僕はステージを思い描きながら、むしろ久々にバンドのツアー(Base Ball Bear Tour「LIVE BY THE C2」)を経験した高揚感から、より積極的にライブを意識したアレンジを施していった。その結果だと断言出来るが「next to you」「lime light」「サバク」「I don't wanna dance (これはベボベのサポート前に作ったものではあるが)」といった具合に今の僕のライブセットの中心となる楽曲が多い。

『Yesterday Today Tomorrow』制作の時はライブやツアーを目的とせず「田上さんと作りたい」という純粋な創作意欲から作業に入った。が、ここでも結局、制作スケジュールは周年イベントの<5×20>(@新木場スタジオコースト)に合わせて組まれたし、何より作曲手法自体スタジオに入ってバンドで音を出して作るという方法をとったので、結果としてソロアルバム3枚の中で一番ライブにベクトルの向かった作品になった。

どんな場所から走り始めようと僕たちバンドマンは結局、“リリースとライブのバトンリレー”というトラック競技に戻ってきてしまう。“人前で演奏をする為に楽曲をつくる人達”──例えば「バンドマンとは?」と問われたならば、今の僕の答えはそれだ。


▲<フルカワユタカ presents『yesterday today tomorrow TOUR ファイナル』>2018年4月13日(金)@Shibuya WWW

考えてみれば、これは他のジャンルと比べるとかなり特殊なことだ。例えば小説家は本を書き終わった後に朗読会を開いたりはしない。絵画教室ならともかく、画家がみんなの前で作品を書くことはない。陶芸家は作り終わった器で美しく水を汲む様を観客に魅せる旅には出ない(なんのこっちゃ)。もし、朗読技術までが物書きの評価基準であるとなれば、声の悪い物書きはハンディキャップを持っているということになる。分かりにくい例えで恐縮だが、しかし僕たちはそういう縛りの中で作品を作っているのだ。

自分に合ったキーでメロディーを作る。会場が盛り上がるようなテンポを考える。きちんと演奏できるようなフレーズをつける。これが同じミュージシャンでも職業作家であれば、歌える人、演奏出来る人を連れて来ればいいし、なんなら今のご時世、PCで打ち込んでしまえば問題はない。彼らは際限なく頭で鳴ってる音を形にしていくことが出来る。だが僕たちはそこがゴールでない以上、ある種の妥協も受け入れながら作る必要がある。そのストレスがメンバー間での不協和音となり、あのアルバムは「○○が△△のパートを差し替えている」とか「ドラムだけスタジオミュージシャンだった」などといった、ファンならば耳を塞ぎたくなるようなそんないびつな作品が、中には名盤と呼ばれるものでさえ存在するのも、バンドならではのことだ。


ミーティングで僕は今度のリリースはバンアパ(the band apart)のマーちゃん(原昌和)との共作にしたいと提案した。

バンアパを知った10年以上前から僕はずっとマーちゃんのことを天才だと思っている。音楽は言うまでもないが、ツイートやMCまで全部ツボだ。随分昔だが、とあるフリーペーパーでマーちゃんがコラムを連載していて、「外出中にお腹を下してしまい用を足すために急いで帰宅した。が、家は留守で誰もいない上に鍵を持っておらず絶体絶命に。そこで、ドア用郵便受けを破壊して家に入った」という話があって、その表現力とか語彙力とかがとにかく抜群で、息が出来なくなるほど笑ったことがある。と、例えばこういう風に本人に伝えたとすると「息は出来てたでしょ?」と本気で詰め寄ってくるのだが、そのシニカルさが赴き深くて何とも言えない。この件が決まった時、ラインで「(一緒に作業するのを)今から吐き気がするぐらい楽しみにしてるよ!」って送ったら「吐き気はしないでしょ?」とぶった切ってきた。そこはさ、例えじゃない、えずいちゃうくらい楽しみにしてるよっていう。

制作作業は本当に楽しかった。想像通り、集中すると自分の宇宙に入り込んで戻ってこなくなるタイプにして、ハーモニーの“積み”に関しては本当に完璧主義者で、ほんの数小節のベースラインを決めるのに何十分もかかることもあったが、むしろ彼の感性や思考回路を間近で体感したいからこその共作であり、マーちゃんの宇宙を覗き込むのは本当に素晴らしい体験だった。

ただ……、制作の外においてもマーちゃんの感性や思考回路は独特だ。「え? 俺の宇宙って何? ユタカってオカルトなの?」──マーちゃんは具体的根拠が曖昧な話を好まない。例えば「日本人はギターの音の抜けが悪い」とか「俺のリズムは“跳ね”気味」などと言えば「え? オカルトなの?」と返ってくる。

▼今聴くとそのビリビリとした毒っ気が何とも美しい。あの時のあの無様なフォームでしか出せない美しさだ。
「え? ユタカ、フグでも食べたの? 走りながら歌うの?」

▼“人前で演奏をする為に楽曲をつくる人達”──例えば「バンドマンとは?」と問われたならば、今の僕の答えはそれだ。
「え? ユタカ、いつ誰に“バンドマンとは?”って問われることがあんの?」

▼陶芸家は作り終わった器で美しく水を汲む様を観客に魅せる旅には出ない。
「え? ユタカ、なんか悩みでもあんの? オカルトなの?」

このコラムをマーちゃんが目にしないことを心の底から願う(笑)。

そんな彼が一番嫌いな言葉は“グルーヴ”。「グルーヴとか言い出しちゃうと、もう末期だよな」──マーちゃん、あんまりしつこいと俺のこと嫌いになるかもしれないけど、でもね、嘘じゃないんだ、俺のギターは跳ねてしまうんだ、俺のグルーヴは誰にも真似出来ないんだ。ロックはロマンの産物なんだ。


▲フルカワユタカ feat.原昌和(the band apart) ニューシングル「ドナルドとウォルター」

来月発売されるニューシングル「ドナルドとウォルター」。僕のメロディーとグルーヴがマーちゃんのハーモニーとアンサンブルにバッチリとけ込んだ、シニカルでロジカルなんだけどエモーショナルでロマンティックな素晴らしい一曲。先月のツアーファイナル(4月13日@渋谷WWW)で早速演奏したことを知ると「ライブの映像か音があるなら欲しいな」って気にしてたけど、マーちゃん、もう聴けたかしら?

マーちゃんのコードワークを歌いながら弾くのは激ムズだったよ。でも、予想通りライブ映えする名曲で、フロアはあっという間にグルーヴまみれだったさ。生粋のバンドマン2人が作った曲だもの、当たり前だよね。いつか一緒に演ろうぜマーちゃん。


■フルカワユタカ feat.原昌和(the band apart)「ドナルドとウォルター」

2018年6月6日発売
1,700円(税抜)
1. ドナルドとウォルター
※その他、ボーナストラックとしてアンプラグドの音源集を数曲収録予定

■<フルカワユタカ presents「5×20 additional, PlayWith シックス」>

▼〜with SICS〜
6月29日(金) 下北沢SHELTER
w/ POLYSICS
開場19:00/開演19:30

▼〜with 6 & STOMPIN' BIRD〜
8月31日(金) 下北沢SHELTER
w/ HAWAIIAN6, STOMPIN' BIRD
開場19:00/開演19:30


【チケット】
4,000円 (+1ドリンク代別)
オールスタンディング/整理番号付
・SMA☆チケット http://www.sma-ticket.jp/artist/furukawayutaka
・e+ http://eplus.jp/furukawa-520ad/

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