【インタビュー】ヴィレ・レイヒアラ完全復活、S-TOOLの強靭なヘヴィ・メタル・サウンド

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フィンランドのメタルバンドの祭典<Suomi Feast 2018>で、S-TOOL(エス・ツール)が来日、日本公演を開催した。

◆S-TOOL映像&画像

1990年代にゴシック/メランコリック・メタルで人気を博したセンテンストが2005年に解散となり、シンガーのヴィレ・レイヒアラは、自らポイズンブラックを結成して活動をスタートし2010年に来日公演を行うものの、2015年には無期限の活動休止状態となり、シーンから姿を消してしまっていた。

そんなヴィレが新バンドS-TOOLとしてシーンに復帰したのが2016年、<Suomi Feast 2018>でのライブで、本邦初公開のパフォーマンスを見せてくれた。これまでのメランコリック路線ではないS-TOOLのステージに戸惑うファンもいたかもしれないが、冒頭から観客を自然と引き込む熱いグルーヴと圧倒的な存在感は健在だ。白いファイヤーバード・タイプを抱えて歌うヴィレの歌声は絶品で、レフティであるサミ・レッピカンガス(G)とのツインで刻むリフ、多弦を使うキンモ・ヒルトゥネン(B)とアクス・ハントゥ(Dr)のリズム隊も凄まじく強力だった。強靭なヘヴィ・メタル・サウンドは、約60分で場内をサウナに変え、メタリカのカバーも披露、新しいバンドの魅力を見せる絶好の機会となった。

大阪、名古屋、東京での4日間のショーを終えた翌日、ヴィレを中心にメンバー全員がインタビューに同席してくれた。



──8年ぶりの日本のステージはいかがでしたか?

ヴィレ:素晴らしい気持ちだよ。S-TOOLという新人バンドにもかかわらず、ライブをやる度に自分たちが受け入れられている実感があってとても嬉しかった。

──ヴィレ以外のメンバーは初めての日本でしたか?

アクス、キンモ:そうさ。

サミ:心身ともに始めて。

──素晴らしいバンドでのカムバックが嬉しいです。

ヴィレ:ありがとう。素晴らしいミュージシャンと出会えたからね。以前から知ってはいたけど、まさか自分のバンドで一緒にできるとは思っていなかった。実現して嬉しいし、ライブで楽しんでできる事が何よりだよ。ライブでオーディエンスとお互いにカッコいいノイズを出し合って最高だね。

──ポイズンブラックの後は、どんな活動をしていたんですか?


ヴィレ:息をしていただけだよ。ポイズンブラックが終わって、正直これでもう自分は終わりだと思っていた。曲は書いていたし遊びでレコーディングもしたりしたけど、積極的に何かをするわけでもなくて、その程度。でもそれが結果的にS-TOOLに繋がった。

──ポイズンブラックでは、センテンストからの音楽性を徐々に変えようとしていたように感じましたが、実際はどうだったのでしょう。

ヴィレ:意図的ではなかったけど、結果的にはそうなった。自分の心のおもむくままにやってきたけど、気分の良くないときに作ったものは、歌詞やギタープレイにも出るしね。でも自然にだよ。特に意識はしてない。

──キャリアの中で苦しかった時期もあったのでしょうか。

ヴィレ:正直、しばらく葛藤した時期もあった。でも考えても仕方ないし、まずは自分が考えなくする事がベストだと思ったな。センテンストの強烈なイメージがある事も自分で感じていたから、ポイズンブラックのときも、自分の中から過去のセンテンストが排除されれば、周りからの印象も変わると思った。でも今のS-TOOLはセンテンストではないし、演っているのは同じ俺だから、何をやってもセンテンストに聴こえるということもあるかもしれないね。でも大きく違うのは、センテンストでは俺は歌しか歌っていなかった。ギターのミッカが曲を書いていたから。

──今回新しいバンドを始めたきっかけは何ですか?


ヴィレ:俺が書きためた80曲くらいの楽曲を聞いた妻から「1曲だけはマシだから、何かすれば?」って言われたんだよ(笑)。その時は特にバンドメンバーもいなかったから、ソロアルバムでも作ろうかとも考えた。センテンストのドラマーの紹介で、ミキシング/エンジニアとしてアクス(Dr)にコンタクトを取ったんだけど、アクスは曲をとても気に入ってくれてね、「実はドラマーもいない」「ギターは誰?」「いや、ギターも居ない(笑)」という会話から、アクスが長い友人のサミ(G)を紹介してくれた。アクスとサミは、常々いつか一緒にバンドやれたらいいねと話していたらしい。ベースもアクスがキンモ(B)を紹介してくれた。他にも人脈は当たってみたけど、結局他はピンと来なくて、このメンバーがイケると感じたんだ。

──S-TOOLは熱いロックンロール・バンドになりましたね。

ヴィレ:バンドサウンドだから、このメンバーならではだよね。ロックンロールと言ってもらえるのは凄く嬉しい事だね。そういう音楽を狙っているよ。俺は16歳の頃からオールド・スラッシュが好きだし、その影響も出ているかな。

──サウンドは変化しても、ダークでネガティブな歌詞は健在で、本質は変わらないのですね?

ヴィレ:何故だか、知りたいかい?これが俺の世界観さ。個人的な事になるけど、この世界は良いところではない、できれば自分も良いところだと思って暮らしたいが、そうでない現実がある。自分の混沌とした気持ちを自分の音楽で吐き出す場が作品なんだ。怒りや悩みを音楽で吐き出すと、とても気分が良くなるよね。

──そこがアイデンティティですね。



ヴィレ:アートは自己表現だ。政治や経済への不満の気持ちを表現している、自分自身の気持ちでなきゃいけないと俺は思っている。だから、よく「王の名の元に」とか、殺し合いや剣を振りかざしたりする事を書くのはありえない。それは自分の事ではないからね。

──虚飾を排除したストレートな音楽をやりたいですか?

ヴィレ:そうだね。やりたい事を自然にやっているだけだけど、単純にロックンロールと言うには軟弱かもしれない…やっぱり基本はメタルだよ。俺たちは、裸になる事はあっても騎士が剣を振るような事はない。今どき、スタジオで作るアルバムは何だってできるけど、俺たちの真価が問われるのはライブだ。ライブですらテープを流すバンドもあるけど、本来ライブで評価されるべきだろう?それを大事にしているよ。

──今後の予定は?

サミ:来週、フィンランドでオジー・オズボーンとマリリン・マンソンがヘッドライナーの<Rock Festival South Park>というフェスティバルに出る。他にもフェスティバルの予定がいくつかあるよ。





──最後に日本のファンへメッセージを。

ヴィレ:君たちクレイジーだよ。

アクス:今回、4回のライブがほとんどソールドアウトで本当に素晴らしかった。僕にとっては初めての経験で、日本が大好きになった。

ヴィレ:スタッフやファン、みんなが凄く良くしてくれたおかげでメタリカになった気分だよ。

キンモ:空港で降り立った瞬間から、全ての仕切りが素晴らしかったし、オーディエンスも最高だった。特に印象に残っているのは、ピックをファンへ配り過ぎてしまって残りが1枚になってしまったことかな(笑)。その時にスタッフへ「どうしよう」と相談したら、スタッフがピックの写真を撮ってすぐさま同じものを用意してくれた。あれは本当にありがたかった。こういう全てがスムーズに運ぶ状況に僕らは慣れてないんだ。いつもはこんなに上手く行かないからね。そして食べ物も美味しかったな。

サミ:お寿司が美味しかった。ワサビがいいよ。俺も同じくピックがなくなってしまって、スタッフに用意してもらったよ。日本はファンも礼儀正しくて、とても素晴らしいツアーだった。

全員:本当にありがとう。






取材・文:Sweeet Rock / Aki
写真:Yuki Kuroyanagi

<S-TOOL ~ Suomi Feast 2018 ~>
2018.5.27 Shibuya Cyclone
1.Lights Out!
2.Hammering
3.There lies life
4.Ain't This What you Wanted
5.Back to Zero
6.This is Real
7.Shovel Man
8.Hit the Lights(METALLICA Cover)
9.Your Despiser No.1
10.Until the Lid Closes
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