【ライヴレポート】清春、「2018年5月25日。真夜中、哀歌の詩集」

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現在、sadsの対バン形式シリーズ・ギグ<The reproduction 7th anniversary『EVIL 77』 VS 7 days>でオーディエンスを踊り狂わせている清春が、5月25日の深夜、東京・TOKYO FMホールにて行なったポエトリー・リーディング公演<kiyoharu poetry reading 『夜、哀歌の詩集 LYRICISM』>もまた、忘れ得ぬ名演だった。この夜の模様を振り返っておきたい(※本公演はTOKYO FM「やまだひさしのラジアンリミテッドF」と連動、公演内容の一部が生放送された。

◆清春 画像

この催しは、2017年に大きな話題となった全66公演に及ぶマンスリー・プラグレス公演<エレジー>から派生したもの。残念ながら、筆者は5月11日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて開催された二部制の初演を目撃することが叶わなかったのだが、その夜のただ事でない空気はSNS等を通じてすぐに伝わってきた。

何よりも気になるのは、清春が観客の目の前でどんなふうに詩を読むのかということ。アルバム『エレジー』のDISC 2に収められた「“elegy” poetry reading」という手がかりはあるものの、実際に観てみるまでは全貌が掴めない。なお、5月25日の夜、清春はsadsの一員としてROTTENGRAFFTYの名古屋公演にゲスト出演。その直後に東京に戻り、そのままこの深夜公演に臨んだことも付け加えておきたい。


午前1時40分に照明が落ち、闇の中から清春のシルエットが現れる。ステージ上手には机や椅子が置かれた書斎風の一角があり、下手にはエレキギターで空間演出を執り行う中村佳嗣(G)の姿も見える。「赤の永遠」の一節を清春がつぶやき始めた途端、観客は息を呑みながらその様子に見入る。原曲の情景をより深く示す一瞬一瞬に、皆が心奪われてゆく。放心状態の場内を次に彩ったのは、「夜を、想う」だ。手にした鈴を時おり打ち鳴らし、言葉を舞い踊らせる。一切のMCもなく次々と展開していくステージは、文字通り夢幻のよう。プラグレス形態の<エレジー>で成し遂げた領域も賞賛に値するが、清春という表現者の本質を曝け出すかのようなパフォーマンスは、全編、かつてない緊張感に満ちたものだった。

まるで泉のように湧き出す清春の言霊。そして、静寂。この夜、特に感嘆したのは、「シャレード」で見せた甘い夢のようなひと時だ。流れるメロディにのせて、ただ詩を読み進めるだけではなく、原曲に近い形で唐突に歌い出す場面も巧みだった。緻密な計算と大胆な思いつきとを両立させる清春の技にオーディエンスは陶酔し続けた。

たとえば、闇よりも暗く妖しい「GENTLE DARKNESS」、清春の鳴らす鈴の音が遙か彼方へと聴衆を導く「空白ノ世界」、クライマックスで鮮やかな歌声を披露した「ゲルニカ」など、名場面を挙げればキリがないほど。ラストの「美学」の気高い美しさに我を忘れていると、清春が最後の一篇を読み始めた。本編の最中、彼が時々、机の上に置かれた紙に何かを書き付けているのは気になっていたのだが、まさかそれが即興で紡がれた詩だったとは……。この即興詩の内容をここで明らかにすることは控えたいが、彼が“愛の人”だということを改めて実感させられるような贈り物だった。


「2018年5月25日。真夜中、哀歌の詩集」──清春

清春がそう言い終えて微笑んだとき、時刻は午前3時10分を回っていた。まさしく清春の新境地、そして未だかつて誰も足を踏み入れたことのない表現形態だった。オーディエンスの反応を敏感に察知して、その場で歌詞を変えるなど、そこには朗読会とも演劇とも異なる次元の言葉がゆらめいていた。あの<エレジー>公演をさらに深め磨いた究極形が<夜、哀歌の詩集 LYRICISM>なのだろう。この真夜中に集った観衆は、言葉を愛し、言葉に愛される詩人にしか出せない美学を目に焼き付けたのだ。

次回開催は未定とのことだが、清春の探究心に直に触れることのできるこの公演が、今後大きく広がっていくことを願う。もちろん、この愛すべき詩の数々は、回を重ねるごとに、より深く遠い地点に到達するだろう。我々に常に思いがけない喜びをもたらしてくれるロックスターが此処にいる。魂を吸い取られるような、神秘的な一夜だった。

取材・文◎志村つくね
撮影◎柏田芳敬

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