【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、6thアルバム完成「現実か非現実かわからない場所へ」

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■「人当たりは柔らかいけど
■楽曲は鬼だ」って言われました(笑)

──魔法がかかったようにカップのコーヒーや指輪が巻き戻っていくミュージックビデオはジャケット写真ともリンクしていて神秘的ですね。

AKIHIDE:棄てられた遊園地がその状態から、どうなっていくかが絵本のストーリーだったので、壊れていたものが戻っていくというテーマで作りたかったんです。実際の撮影では壊しているんですけど、逆回転させることで元に戻っていくという。

──ということはギターも壊しているんですか?

AKIHIDE:そうなんですよ。ギタリストなので壊しちゃいけないんじゃないか?っていう意見もあったんですけど(笑)。逆回転の撮影は順番もこんがらがるし、難しいんですよ。指輪がふわっと宙に上がるシーンも実際にはセットの上から落とすので、握るタイミングというか離すタイミングというか、それがなかなかうまくいきませんでした。それとアルバムジャケットはみんなで力を合わせて作ったので、ミュージックビデオでもそのセットを使うことで世界観をお届けしたいなと。『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』を知ってもらうための招待状みたいな感覚で制作したものです。

──ジャケットやアーティスト写真のアートワークもAKIHIDEさんの提案ですか?

AKIHIDE:僕がラフな絵を描いて、デザイナーチームがカッコいいものに仕上げてくれました。パネルにプリントした紙を切って貼って重ねたり、パネルをレイヤーさせたり、現実なのか非現実なのかわからないようなものにしたかったんですよね。今作を作るに当たって影響を受けたのが村上春樹さんなんです。もともと好きな作家さんなんですけど、春樹さんの小説も非現実的な世界にいざなってくれるじゃないですか。僕も日々の悩みや憂いから離れた場所に連れていってくれるアルバムにしたかったので、その入り口としてジャケットは大事にしたいと思っていました。

──初回限定盤の衣装は白、通常盤の衣装は黒ですが、その意味合いは?

AKIHIDE:最初は黒の衣装をオーダーしていたんですが、僕がフィーリーのキャラクターになったものも撮影したかったので「かぶりものが欲しいです」ってリクエストしたら、スタイリストさんが新たに白い衣装を作ってくださったんです。よく見るとおし花がついていたり、8枚のTシャツがつぎはぎに繋がっていたり、かなり凝っているんですよ。なので、白い衣装ではお化けのフィーリーを演じていて、黒い衣装では絵本を客観的に見ているストーリーテラーというか、ある意味リアルな自分です。


──そういう意味合いがあったんですね。アルバムの前半はロック色が強いと感じましたが、そこは意図的に?

AKIHIDE:完成したものを改めて聴くとロックな前半とアコースティックな中盤とエンディングに向かう後半と3部作みたいになっているんですが、自分では全然意識していなくて、楽曲と絵本の雰囲気を照らし合わせて、こんな感じかなって感覚で作っているんです。ただ今作ほど歌詞も曲も絵も何回も見直して聴き直したことはないかもしれないですね。何度もプレイリストを組み直して1年ぐらいかけたので。

──これまでのソロで最も時間をかけて制作したアルバムでもありますか?

AKIHIDE:そうですね。これまでは半年おきにアルバムをリリースしたこともあったし、今までビックリするぐらいのスピードで作ってましたからね。今作は作っては立ち止まっての繰り返しでしたね。絵本も最初は40000字ぐらいあったんですけど、絵を増やすことで文字を半分に減らしたりとか。

──3部作っぽいというお話が出ましたが、4曲目の「Wonderland」は、まさに切り替えの立ち位置なのかなと。どういうふうに場面転換をつけていったんでしょうか?

AKIHIDE:そこも意識したわけではないんですが、今回、曲によってジャンルが違うと思うんですよ。「プラネタリウム」はシンセを使ったニューウェーヴ的ロック色の強い曲で、絵本の冒頭の星空ともリンクしますし、「Wonderland」もニューウェーヴ色を前面に出しつつ、『不思議の国のアリス』をモチーフにした一歩違う世界にいく曲。そこからアコースティックな「ブリキの花」という曲に切り替わるのも、今思ったら運命的だなって。後半の「風の歌」と「瓦礫の王様」も繋がりのある構成にしているんですけど、遊園地が滅びていく絵が頭の中に浮かんできて自然とハマっていったんですよね。

──3曲目の「My Little Clock」には蓮花さんがゲストボーカリストとして参加していますね。

AKIHIDE:はい。同じレーベルのアーティストで何度か仕事で携わらせていただいたことがあるんです。最初は自分で歌おうと思っていたんですけど、どうもしっくりこなかったんですね。絵本に“時計姫”というロボットのキャラクターが出てくるんですが、彼女の声には魔法のような力があって人間もロボットも癒されてしまう。天使のような声という設定なので「これは俺の声じゃないな」と(笑)。蓮花さんなら、素敵な声で歌ってくださるだろうと思ってお願いしました。

──サウンドは時計の針がすごい速度で回っている印象を受けました。

AKIHIDE:この曲はポリリズムだらけで、それが機械的というか時計的だなと感じたんです。でも、あえてシンセは使わずにピアノと僕の12弦ギターとベースだけで演奏しようと。機械っぽい音は実は人間が弾いていて、人間っぽい音はシンセだったり。その不思議感を出したかった曲です。

──凝ってますね。ちなみに新たに挑戦したジャンルの曲もあると思うのですが?

AKIHIDE:「朝顔のマーチ」はちょっとジャズっぽくてシンプルめの曲ですが、3年前からジャズクラブでジャズのミュージシャンの方々と演奏しているので、ロックのフィールドで活動してきた僕にインプロヴィゼーションを教えてくれたことや、ツアーでジャズやシャンソンをカバーしてきたことが血になり、肉になってできた曲ですね。「月夜のララバイ」もそういう経験があったから生まれてきたんだと思うんです。コード感やメロディ、リズムのトリックに影響が如実に出ているかもしれない。

──メロディには哀愁がありますが、リズムはラテンぽくもあり、開放感が感じられます。

AKIHIDE:最近のジャズ/フュージョン系の方がよく使う手法なんですけど、同じテンポなのにとり方を変えるだけで全く違うリズムになるんですよ。普通にやったらシャンソンっぽいメロディになると思うんですが、リズムがだいぶ遊んでいるから、ひとクセある曲になったのかもしれないですね。アコーディオンがハマった曲でもあります。

──そういう意味でもアルバム全体にリズムが凝っているという印象を受けました。AKIHIDEさんのソロには自然と同化するような癒される楽曲もありますが、今作は不思議な異世界に行く感覚があります。

AKIHIDE:ありがとうございます。レコーディングやライヴに参加してくれているミュージシャンから「AKIHIDEさんは人当たりは柔らかいけど、楽曲は鬼だ」って言われました(笑)。曲がすごく難しいって。

──難しいですよ。いつもよりテンポが速い曲が多くありませんか?

AKIHIDE:そうかもしれないですね。メロディラインを大事にしつつ、アレンジの面白さは追求しました。

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