「親が楽しんでいる姿を見るのが、子どもの幸せ」“こどもフジロック”の核心

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■ フジロックでは緊張しているお母さん・お父さんがすごく多いように見える

──そうは言っても、やはり子連れは大変でしょう?

ドラミ:もちろんまわりは山ですから、自分と子どもの身を守るための雨耐用グッズなど必要なものはあります。レインスーツもペラペラのじゃなくてしっかりしたものを。大人が不快に思うことは子どもも不快ですから、そういう準備は絶対必要です。

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──子ども向けのフェスめしはありますよね?

ドラミ:出店は100店ほどと聞いています。“こどもフジごはん”としてその中から毎年10店舗ほど取材をして、アレルギーがある子でも安心して食事を楽しめるように、お店側にも協力を仰いでメニューの全原材料を開示したり、子ども向けに唐辛子やマスタード抜きなどをお願いできることなどを紹介していて。もちろんそれだけじゃ間に合わないので、例えば離乳食とかだったら持ってきたほうがいいんじゃないかっていう提案は発信しています。

──他、思わぬ落とし穴とかなければいいけど。

ドラミ:私は初めて連れて行ったとき、最終日に「あぁー終わった。無事でよかった」と思っていたら、その日の夜中に子どもが熱を出したんです。そういうときの対応が自分は準備できていなかった。日中であればフジロック救護班がいるので「何かあっても大丈夫」と思っていたんですけど、もうフェスは終了。夜中の2時とかに「どうしよう」と思って。

──絵に描いたようなトラブルだ。

ドラミ:「だからみんな調べていこうね」って記事に書きました(笑)。最寄りの病院はどこにあるのか、持っていけるものはなにか、とか。

──大丈夫だったんですか?

ドラミ:大丈夫でした。結果的には宿の方が氷枕とか準備してくださって、救急に行くほどじゃなくなったので、朝になってから病院に行きました。

──風邪引いちゃったのかな?

ドラミ:風邪でした。はりきっちゃったんで。でも、そういうことってどこにいても同じことじゃないですか。大人でも子どもでも体調崩すし。

──注意深い目を持っていれば、大概のことはクリアできそうですね。

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石飛:それは体験して勉強しながらであって、まさに子育てってそういうことです。

──親として鍛錬の場にもなるわけか。

ドラミ:ものすごくなりますね。シミュレーションのレベルがハンパない(笑)。日常ではない意識の配り方と、「親っていうのは何をすべきなんだろう?」をものすごく考えさせられる場です。まず私の場合、1歳の息子があそこで「どんな風になるんだろう」と。

──楽しむのか飽きちゃうのか…わからないですね。

ドラミ:参加自体、彼の意思ではないし。出発の時に説明はしましたよ、「フジロックというところに君は行きますよ」と。「今はわからないかもしれないけど、将来的に君はそれで“クールだ”と言われるから行こうね。ママの好きな場所に行きますよ。ちょっとお仕事手伝ってもらうかもね」ぐらいに(笑)。

──で、どうでした?

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ドラミ:本人はものすごい楽しんで、息子はBARKS編集長をみつけ「イエーイ」ってハイタッチをしに行き、みなさんに遊んでいただいたりするぐらい、彼のほうが余裕ありました。イヤーマフつけて、忌野清志郎さんが描いた子ども用フジロックTシャツを着せてたら、いろんな方が「かわいい」ってハイタッチをしてくれる。

──子どものほうが楽しみ方を知っているようですね。

ドラミ:そう。私は知らない人とコミュニケーションをとることはしてこなかったんですけど、そこを息子が勝手に切り開いていくんです(笑)。カップルがイチャイチャしているところにヌッて入って行って、じっと見て、カップルも「なんかちっちゃいの来たぞ」みたいな。そしたら写真一緒に撮ったりしてインスタに「ちっちゃいの来た」って勝手に上げられてたり(笑)。お客さんとのコミュニケーションも子どものほうが先を行っている。

──結果的に、親が楽しませられる点もある?

ドラミ:初めて感じる感覚とか初めて見る場面が多かった。あとは優しさですね。フジロックのお客さんは本当にみんな優しくて、私は誰からも舌打ちをされたりしたことがない。これまで1歳、2歳と連れて行ったけど、手伝ってくださる方がほとんどで、嫌な顔もされない。それってすごいことだなと思っているんです。

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──そうですね。日常だったらそうはいかないかもしれない。

石飛:フジロック・マジックだよね。

ドラミ:私が思うに、ここ2年はお子さん連れの人よりもお子さんがいない大人チームのほうが優しく接してくれる気がします。私もそうなんですけど、子ども連れの人って余裕がないんです。「自分と自分の子どもが迷惑かけないように」ということだけで精一杯。

──そういう人と人との交流も、日高さんが描いたフェスの風景なんだろうか。

石飛:そういうことですよね。そして日本型のスタイルとして進化した、ということだと思います。

ドラミ:グラストンベリー・フェスティバルを観に行ったとき、おじいちゃんから孫まで三世代でThe Whoを合唱していたんですね。「Who Are You」を一緒に歌っているところに子どもたちや赤ちゃんも普通にいて、おじいちゃん曰く「俺は50年観てるんだよ!」って、生活に根付いているのがすごくうらやましかった。すっごい楽しそうだったし、毎年家族で来てることを誇りに思っているんです。仲間が20人くらいいて、酒飲んで、子どもはジュース飲んで。寝てる子ももちろんいますしね。だけどみんながみんな楽しそうで、無理してない感じ。私には、フジロックでは緊張しているお母さん・お父さんがすごく多いように見えるんです。

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