【インタビュー】古澤剛、初のフルAL『夢で会いましょう』に込めた願い

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■ どんどん奥に行くと
■ みんなつながってるところは同じ

── そして小渕健太郎さんとは2曲を共作。

古澤:「天の川」の時は小渕さんのレコーディング手法を見て目からウロコで、歌を録音することに対する新しい価値観を与えてもらいました。こんなにこだわって作ってるんだなと思ったんですけど、「Hey Brother!」はまったく逆で、遊び心だけを大事にする小渕さんを見ることができて、思い切りが良くて何に対してもポジティブに取り組めるのがすごいなと思いましたね。レコーディングの時も面白かったんですよ。

── これ、何の音が鳴ってるのかわかんないんですよ。何かがシャカシャカ、ドカドカ言ってる。

古澤:そうですよね(笑)。スタジオの駐車場にある、鉄パイプでできた車止めみたいなのを持ってきて、これ叩いたらどう?とか。小渕さんが遊びに熱中する子供に戻っちゃって、いろんなものを叩きまわってるんですよ。ゴミ箱を叩いたり、扉をガチャガチャさせたり、壁をこすったり。小渕さんがそれをやって、僕がマイクを持って録って、その音を切り貼りして組み合わせていって。最初に小渕さんが、そこらへんにあるもので演奏したり手拍子したり、“そんな感じの楽しさを出そうよ”とおっしゃったんですけど、まさかこういう形になるとは小渕さん自身も想像していなかったと思いますね。

── ライブですよね。この楽しさは。

古澤:この曲があったことで、アルバムのバランスをいいところに持ってきてもらった気がします。歌も向かい合って同時に歌っていて、「天の川」の時はすごく綿密に細かく歌を録ってエディットしたんですけど、「Hey Brother!」は潔く二人で録っちゃおうということで、向かい合って2、3テイク録ってそれで終わり。ずれてるところもあるんですけど、二人で歌ってる感じがすごく出て良かったなと思います。

── 剛さんの祖父を歌った曲も素敵です。「GRANDPA MAN」はまるでおじいちゃんの自伝みたいな。

古澤:そうそう、メッセージ性とかではなく、おじいちゃんのいた風景と、その背中や人柄をそのまんま焼き付けただけの古い写真みたいな歌です。もともと曲が先にできていて、デモを作る時に仮の歌詞を乗せておこうと思って、なんか曲がおじいちゃんっぽいからおじいちゃんのことを歌ってみようと思って、その場で書いたんですよ。

── ああ、ブルースっぽい曲調が郷愁を誘うような。

古澤:アメリカで言うとシカゴの道端とかになるんでしょうけど、僕の田舎だと田んぼのそばの古い家の軒先みたいな(笑)。そこにおじいちゃんの姿が見えていて、書いてみたらすごくハマるな思って、社長にデモを送った時には“仮の歌詞なので曲だけ聴いてください”と言ってたんですけど、そのまま変わらずにアルバムに入ってしまった(笑)。「GRANDPA MAN」のストーリーが気に入っちゃったんですよね。2015年に作って、そのあとライブでは欠かさずに歌ってきて、自分でも歌うのが好きな曲です。

── あまりにパーソナルな歌はポピュラーに通ずることがあると思うんですよね。これはまさにそのパターンだなと思います。聴き手のそれぞれの、古い記憶を呼び覚ますところがある。

古澤:そうですね、どんどん奥に行くと、みんなつながってるところは同じだと思うので。おじいちゃんは本当にエピソードがいっぱいある人で、たとえば「死ぬまでに1000万円貯める」と言って、誰にも通帳のありかを教えなかったんですけど、なぜか死ぬ一週間前におばあちゃんに通帳のありかを告げたらしいんです。悟ってたんでしょうね。そういう逸話がいっぱいある人だから、歌に残したくなっちゃって。すべて意図されていたような人生で、最後は川で魚釣りをしている時に死んだんですけど、事故ではなくてそこで寿命をまっとうしたんだというふうに家族は思ってるんですよ。川の主を釣り上げて使命を果たしたんだろうなって……俺も死ぬ時はステージ上で歌いながら死ぬぜって。すげぇ迷惑だと思いますけど(笑)。

── それはちょっと困る(笑)。

古澤:この曲は演奏も素晴らしくて、右にラップスティール、左にハモンドオルガン、リズム隊も大好きなライブメンバーで。すごくシンプルな編成なので、音色の素晴らしさが際立ってるなと思います。

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