【インタビュー】古澤剛、初のフルAL『夢で会いましょう』に込めた願い

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■ 聴く人にとってベストなエネルギーを発見できるアルバム

── そして、数はあまり多くないラブソングですけれども。「Thank You & Love You」はとてもいいラブソング。

古澤:これはですね、何と言ったらいいのか……相手をひどく傷つけてしまった時に生まれた曲という感じですかね。誰だってちょっとした言葉だったり、やむを得ないやりとりで人を傷つけてしまうことは絶対あると思うんですよ。“ああ、やってしまったな”って、ただその人のことを愛してるだけなのに、なぜいろんなことを求めてしまって、こんがらがって、お互いが求めるものがずれちゃって、こういう結果になってしまうんだろう?って。結局戻るところはシンプルに“君を愛しているだけなんだ”という、それだけが伝わったならもういいですという感じですね。これは恋愛のLoveというよりは、人間同士のLoveに近いです。受け取る人がどう感じるか?が一番大事なので、あまり言及したくないんですけど。

── I Love Youは誰にでも使えるから。

古澤:そうですよね。君に対して伝えるべきことは“Thank You”と“Love You”という言葉だけだよ、と。何をほかに求めることがあるんだよ、という感じですね。

── そうすると、アルバムの中に男女間のラブソングがほとんどなくなるんですが(笑)。

古澤:そうなんですよね(笑)。小渕さんとの「天の川」があるから、これ以上ピュアなラブソングは今のところ僕には書けないなと思って。逆のそのあと作った「チキン南蛮〜絶妙な男〜」が、僕の中ではかなりのラブソングなんですよ。

── ああ〜。確かに男女間のストーリーではある。

古澤:ちょっと違う方向から行ってますけど。絶妙にダメな男になることで君への愛を伝えていこうという、男の言い訳でもあるし、君のことを満たすのは容易なことじゃないよという気持ちもあって、“君のことを愛してるから君の仕事を増やすよ”というひん曲がった気持ちです。女性が聴いた時にどう思うかが不安ですけど(笑)。

── 女性のみなさんぜひ意見をお寄せください(笑)。

古澤:だからこの曲で言いたいのは大サビだけです。“君への感謝は とても計れない/どうか君が望むように”という、これを伝えたいがためにその他の部分ではひん曲がったことを言ってるんです。俺が家事をしない理由は、俺が何でもやってしまったら“私なんて必要ないのね”って言うだろうし、かといって怠けすぎてもダメだし、絶妙に、世間の中の下ぐらいの男を目指すという哲学です(笑)。

── 説得されちゃいますね(笑)。

古澤:「天の川」で素直な思いを吐き出して、その恋が成就して「チキン南蛮〜絶妙な男〜」につながるとしたら、ちょっと笑えないですけど(笑)。でもそうなんですよ。あなたに思いを伝える時が一番燃え上がって、成就したあとは人間同士許し合わなきゃいけないことがいっぱい出てくるから。両方現実なんですよ。「天の川」であんなに“あいたくて あいたくて”と言ってたのに、「チキン南蛮〜絶妙な男〜」では“僕は食器を洗わない”という、一つの人生のストーリーの中で、同じ相手であっても起こることだと思うんですよね。恋愛にはきれいな面だけあってもおかしいし。

── うーん。深い。

古澤:全然深くないです(笑)。結果的にこうなっただけで。でも作品に嘘はないので、本当に書きたかったことを書けました。

── そしてアルバムのラストを飾る「夢で会いましょう」。ドリーミーで、メロディアスな、オールディーズ・ポップス調の、これは本当にいい曲。

古澤:ありがとうございます。去年の9月にやったワンマンライブのタイトルが<夢で会いましょう>で、そのあと曲ができたんですけど、言っていることはこれもシンプルで。設定としては、お父さんと子供がいて、お父さんは事情があって子供たちのもとを離れなきゃいけない。実際にそういう家族を見て作ったんですけど、お父さんから子供たちにかける言葉を想定して“ひとりぼっちの夜は夢で会いましょう”という発想が最初にありました。

── ああ。なるほど。

古澤:坂本九さんの「上を向いて歩こう」という曲があるじゃないですか。すごくシンプルな歌ですけど、“上を向いて歩こう/涙がこぼれないように”というフレーズがすべてだなと思っていて、そういうシンプルさの中にメッセージを込められないかな?と思っていたんです。できたとは言いませんけど、そこを目指している自分がいました。

── 言われてみれば。あの頃の古き良きポップスの香りが濃厚にしている。

古澤:「上を向いて歩こう」は演奏も素晴らしくて、アメリカで1位になったのも当然だと思うし。そういうものの影響を受けて、「夢で会いましょう」はその入り口に立っているというか、ここから先に楽曲を作っていく上で、こういったエネルギーのある曲は必ず毎回作っていくだろうなと思うような1曲ですね。結果的に“ひとりぼっちの夜は夢で会いましょう”というフレーズは、アルバムが存在する意義でもあるので。ライブに来て癒されましたとか、元気が出ましたとか言ってもらうたびに、じゃあアルバムがそばにあれば元気になってくれるだろうし、そういう意味を込めて“ひとりぼっちの夜は夢で会いましょう”というメッセージなので。メッセージというか、願いですね。僕の歌がそういう存在としてあなたのそばにずっといてほしいという願いです。

── 結果的に一つのメッセージを持ったコンセプトアルバムになりました。

▲アルバム『夢で会いましょう』

古澤:まったく意図しなかったんですけどね。でもこれから何度も聴くたびに、もっとコンセプトが見えてきそうな気がするんですよ。作っている最中は必死で曲を磨いていて、出会った人たちと一緒にいいものを作る喜びがすべてだったんですけど、きっとそれが正解なんですよね。その時の出会いに導かれるがままにアルバム収録曲が出来上がって、聴けば聴くほど自分の中でコンセプトが見えてくる。それが楽しみな作品でもあるんですね。

── 作った本人がそうなら聴き手はもっとそうですよ。アルバムから感じ取れるメッセージはそれぞれ違うと思うし。

古澤:“古澤の曲はスルメ曲だ”とよく言われるんですけど、これもきっとスルメアルバムになると思うんです。繰り返し聴くことで、その人にとってベストなエネルギーを発見できるアルバムなんだろうなと。繰り返し繰り返し、聴いてほしいなと思いますね。

── 最後に一つ、触れておきたいのが、剛さんと親交の厚い俳優の安田顕さんがアルバムに寄せてくれたライナーノーツ。これが非常にグッとくる文章で。

古澤:はい。これはもう一つの作品だと思ってます。一つの詩を添えてもらった感じがしますね。そこに書かれている気持ちが本物だということがすべてで、“アルバムに言葉を添えるのが私の夢でした。”というのも僕はずっと知っていたので。思い切ってお願いしたら、実現しました。

── ミュージシャン、友人、スタッフ、そしてファン。これは本当に出会いをつなげた作品だと思います。

古澤:本当にいろんな人にたくさんの刺激をもらって出来上がったアルバムだと思います。感謝しかないですね。

取材・文◎宮本英夫

  ◆  ◆  ◆

【リリース情報】

1stアルバム『夢で会いましょう』
2018年7月4日(水)発売
TECG-30123 ¥2,778+税

<収録曲>
1. Intro~夢で会いましょう~
2. はじまりの空
3. キミノチカラ
4. 明日の少年
5. 歩み
6. GRANDPA MAN
7. Hey Brother! with 小渕健太郎
8. 天の川 with 小渕健太郎
9. チキン南蛮~絶妙な男~
10. 雨のTokyo Night
11. Color
12. Thank You & Love You
13. 夢で会いましょう

【ライブ情報】

<弾き語りワンマン LIVE TOUR 2018~僕らをつなぐ歌がある~>
7月8日(日) 北海道・札幌くう
7月15日(日) 神奈川・横浜中華街TRES
7月20日(金) 大阪・FLAMINGO THE ARUSHA
8月18日(土) 広島・オルガン座
8月19日(日) 福岡・LIV LABO
8月21日(火) 大分・CANTA LOOPⅡ
8月25日(土) 宮城・カフェモーツァルト

~僕らをつなぐ歌があるSpecial Night~
9月29日(土) 名古屋・BLUE NOTE

【インストアイベント情報】

<古澤 剛 1st Album「夢で会いましょう」発売記念イベント>
ミニライブ & 特典会
・ミニライブの観覧はフリーとなり、どなたでもご覧いただけます。
・特典会は会場にて古澤 剛のCDをお買い上げの方を対象に実施致します。

7月7日(土)
千葉・イオンタウンユーカリが丘 西街区 1F さくらの広場
(1)14:00~ / (2)16:00~

7月14日(土)
埼玉・上尾ショーサンプラザ 1階 センターコート
(1)14:00~ / (2)16:00~

7月16日(月・祝)
千葉・イオンモール船橋 イオンバイク前 イベントスペース
(1)14:00~ /(2)16:00~

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