【インタビュー】doa、11thアルバム『ISLAND』完成「描いたのは心の休憩時間」

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■ペダル・スティールやギターバンジョー
■そういうところでも独自のものに

──大田さんの印象深い曲は?

大田:2曲目の「HOME SWEET HOME」です。1年前くらいから地元の愛媛県宇和島市で、ラジオ番組をやっているんですけど、この曲はそのきっかけにもなっていて。というのは、僕は自分が書いた歌詞が現実になったことが何度かあるから、地元でも仕事がしたいという想いを詞に乗せてみようと思ったんです。その後、地元に帰ったら、そのラジオの話が決まったという。

──おおっ、すごいですね! それに、「HOME SWEET HOME」の歌詞は故郷がある人の誰もが共感すると思います。

徳永:ですよね。

吉本:いや、僕は共感できません。

──えっ、なぜでしょう?

吉本:“卒業して何年経つだろう”という言葉が出てくるじゃないですか。僕は学校の卒業というものを経験したことがないんですよ。小学校6年生のときにオーストラリアに行ったんですけど、オーストラリアは1年生から12年生まであって、10年生までが義務教育なんですね。10年生が日本でいう中3なんですが、10年生の途中で学校をクビになりまして(笑)。1年遅れて学校に行っていて、その時点で日本の義務教育期間は終わっていたので、そこでもう学校は辞めてしまったんです。オーストラリアに小学校の卒業式というのはないから、卒業ということを経験したことがない。だから、この曲には共感できない(笑)。

徳永:それは、かなり特殊な例だから(笑)。

吉本:ははは。冗談だって(笑)。

徳永:この曲は帰省の曲ですけど、それも大人の夏休みじゃないですか。大田さんが歌詞を書いたのはアルバムのテーマが決まる前だったけど、テーマにフィットした曲になったのも良かったなと思います。

大田:実際に帰らなくても、故郷を思うだけで心が癒されるしね。あとは、「愛LAND」も「HERO」も僕が歌詞を書かせてもらっていて、そこに対する思い入れがありますね。「愛LAND」は、タイトルを「ISLAND」にするか「愛LAND」にするか、すごく迷ったんですよ。でも、僕の中で「ISLAND」はちょっと違ったんです。かといって、「愛ランド」だと「ふたりの愛ランド」みたいになってしまうし。

徳永:懐かしい(笑)。

大田:“チャゲさん!”っていうね(笑)。なので、「愛LAND」にしました。内容は、人生を孤独な航海になぞらえて、そういう中で“君=愛LAND”と出会えてよかったということを歌っています。「愛LAND」は曲もすごくよくて、名曲だと思います。

──同感です。今までのdoaにはなかった新境地の曲ですし。

徳永:この曲はコードが2つか3つしか出てこないんですけど、ドリーミーな感じ。だから、新しく感じるんだと思います。それこそ「島へいきたいね」という話になって作ったんですよ(笑)。ミュージックビデオ撮影で島に行けそうな曲というイメージで作りました(笑)。

大田:行けたよね、淡路島だったけど(笑)。

徳永:現実は厳しかった(笑)。元々はサポート仕事で地方に行ったときに「愛LAND」のメロディーが浮かんできたんです。僕は、地方に行ったときは、よく午前中に散歩をするんですよ。知らない街を歩いたり、海や川に行ったり。そういう中で、この曲のメロディーを思いついて、またスマホに“ダダッダダッヘイッ!ヘーイ!”とか入れて(笑)。そういえば、もうそのときから“アイランド”と歌っていました。この曲もコーラス満載で、僕ら3人じゃないとできない曲かな。

──同感です。それに、ペダル・スティールがドリーミーな雰囲気を醸し出しているのもdoaらしいですね。

徳永:ペダル・スティールはまったく弾けないのに好きで買って、練習を重ねてやっとここまで。

大田:だいぶ名手になってきているよね。

徳永:だんだんね(笑)。ちょっとずつコツがわかってきたんだ。ペダル・スティールは難しいんですよ。ギターと違って足で音程を変えるから、足がつりそうになるんです。それに、靴を履かないとうまく踏めないので、家の中で練習するときもブーツを履いています。

吉本:それは、気持ちから入る的なこと?

徳永:ブーツみたいに底が固くて、平らな靴じゃないとダメ。底が柔らかいスニーカーだと音程が安定しないんだよ、2個とか3個のペダルをベタッと同時に踏まないといけなかったりするから。

大田:民族楽器は奥が深いね。

徳永:本当に。僕の中で特に印象が強い曲は「シェイブアイス」で、これはちょっぴり冷たい女性をカキ氷に例えた曲です。もともとは、スタッフに「シェイブアイスって知っていますか?」と聞かれたことがあって、よくよく聞いたら、流行りのオシャレなカキ氷のことで、“やべぇな、俺知らないぞ”と。でも、そのときに「シェイブアイス」というタイトルで、ちょっぴり冷たいオシャレな女性をシェイブアイスに例えた曲を書きたいなと思ったんですよ。でも、知らないままではどうにもならないから、実際に食べにいったら、もうビックリしましたよ。ふつうのカキ氷と食感が全然違うんですね。生クリームみたいな感じで、“なんじゃ、これ?”って(笑)。野郎が1人でデカいシェイブアイスを食べて、その感想をメモっているという(笑)。

大田:本当に1人でいったの?

徳永:そこはツッコまなくていいから(笑)。

大田:だって、キモいじゃないですか(笑)。

徳永:音楽のためだから、いいんだよ(笑)。でもね、食べにいったのが冬だったから、店に僕以外誰もいなくて。しかも食べながら、なんかメモっているわけでしょう。たしかに、ちょっと怪しい人だと思われたかもしれない(笑)。「シェイブアイス」は、そういう実体験で得たものをもとにして書いた曲です。

──リアリティー重視ですね(笑)。「シェイブアイス」は歌詞に加えて、楽曲も魅力的です。この曲は“カントリーをやろう”ではなくて、いいメロディーの素材をカントリー・テイストで仕上げていますよね。こういうアプローチは、カントリーに対する造詣が深くないとできない気がします。

徳永:ギターチューニングのバンジョーを買ったんですよ、最近。弾いていたら楽しくなって、「シェイブアイス」はこれを使ったアレンジにしようと思ったんです。だから、言われたとおり“カントリーありき”で作った曲ではない。そういうところで独自のものになっているかなとは思います。

──たしかにそうですね。

徳永:あとは、「シアワセ」も気に入っています。この曲は僕が歌詞を書いてリード・ボーカルも取って。夏休みといっても学生じゃないから、大人は1ヶ月半とか休めないじゃないですか。忙しい日々の中で、“そういえば、今日は休みだったな”という日に、自分ではない誰かを見て幸せを感じることがあると思うんですよ。若い頃にイメージしていたものではない幸せに気づく瞬間が。そういうことも“大人の夏休み”の中のひとつの出来事かなと思って書きました。

吉本:それは、大人やね。

徳永:そうでしょう(笑)。で、「シアワセ」は一見明るいアコースティック調の曲のようでいて、実は哀しい曲なんですよ。もし哀しいことがあったとしても、少しのことで救われたりするということを歌いたいなと思ったんです。

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