【ライブレポート】アモルフィス、長い歴史の上に培われたアモルフィスの道

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2018年6月13日(水)、渋谷クラブクアトロにてアモルフィスが来日公演を行った。世界一のメタル先進国といわれるフィンランドで国民的バンドと呼ばれる人気を誇り、5月に発売されたばかりの最新アルバム『クイーン・オブ・タイム』も当然のようにナショナル・チャートの1位を獲得。日本市場においてもここ数年は単独ツアーと<ラウド・パーク>フェス出演を交互に行い、すっかり“常連”だ。2016年だけでも2回来日、さすがに来すぎか?…とも思ったが、なんのなんの。チケットは堂々のソールドアウト、当日券はナシ!会場の入口では「ええっ!?」という落胆の声が飛び交う。場内に入るともちろんフロアは立錐の余地もない状態だ。

◆アモルフィス画像

メンバーが1人また1人とステージに上がるごとに、声援は大きくなっていく。まだアルバムが発売になって1ヶ月しか経っていないというのに、「ザ・ビー」のイントロが鳴り響くと一日千秋の思いで待っていたかのように会場は一気に沸点に達した。

もはや本国ではあり得ないほどのクラブ・ギグだが、バンドは原点回帰を明らかに楽しんでいる。「ザ・ビー」の重低音リフで横に揺れ、「メッセージ・イン・ジ・アンバー」のフォーク・メロディに合わせて縦にジャンプしまくる。近距離からの観客のレスポンスに呼応して、ライヴはシャーマニズム的に盛り上がっていく。フロントマンのトミ・ヨーツセンはグラウルとメロディアスなヴォーカルを使い分けながら、彼らを煽動する。フィンランド人のバンドの中では背の高い部類ではないものの、そのステージ上のプレゼンスは絶大なもので、身長3メートルぐらいはありそうに見えた。


バンドに復帰したオーリ=ペッカ・ライネも、全身からハピネスを放っている。久々の来日に、彼は“日本”と書かれたハチマキを着けてプレイ。初期のアモルフィスでは凶悪さすら感じさせた彼のベースだが、よりオーガニックに変貌を遂げたスタイルは現在のアモルフィスにフィット、ヤン・レックベルガーのドラムスと化学反応をなして絶妙なグルーヴ感を創り上げていた(なお東京公演の日はヤンの誕生日で、観衆から「ハッピーバースデー」の歌が贈られた)。

トミが加入した2005年以降、比較的新しめのナンバーを中心とした今回のライヴ。エサ・ホロパイネンとトミ・コイヴサーリのギター・コンビも絶妙な時にダークに、時にメロディアスな世界観を築いていく。ヘヴィでダークでありながら、民族音楽的なメロディを交えたサウンドは世界のメタル・シーンを魅了してきた。そのメロディは日本人の耳に馴染むというよりも、心に馴染むものだ。ライヴ本編の終盤には「アゲインスト・ウィドウズ」「ザ・キャスタウェイ」という初期曲がオールド・ファンのハートを熱くさせた。…いや、オールド・ファンばかりではない。後者では老若男女のファンがひとつの塊となって「ヘイ!」と拳を突き上げていた。






当初予定されていたセットリストを若干シャッフルして、本編ラストは新作からの「ハート・オブ・ア・ジャイアント」で締め括られた。『クイーン・オブ・タイム』に伴うツアーはまだ序盤。東洋的な旋律も持ち備えるスケールの大きなこの曲は、これから世界各地のステージを揺るがすことになるだろう。アンコールの「ハウス・オブ・スリープ」では「you don't know~♪」と合唱が沸き上がった。1990年代からほぼすべてのショーで演奏されてきた「ブラック・ウィンター・デイ」は、アモルフィスの軌跡を照らす光の道標といえる曲だ。このイントロが奏でられると、多くのファンはこれが真のラストだと察知。まだそこまで体力が残っているのか、と驚かされる歓声を送った。

アモルフィスの道は長い歴史の上に培われたものだ。それはヘヴィ・メタルの歴史であり、スオミ人としての歴史、また日本のファンと分かち合ってきた歴史でもある。そして彼らの道は、前方に向けて伸びていく。『クイーン・オブ・タイム』ツアーはまだ始まったばかり。彼らの道が再び日本と邂逅することを願う。

文:山崎智之
写真:Mikio Ariga

アモルフィス『クイーン・オブ・タイム』

2018年5月16日日本先行発売
【完全生産限定CD+Tシャツ】 ¥5,000+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※日本盤限定ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ザ・ビー
2.メッセージ・イン・ザ・アンバー
3.ドーター・オブ・ヘイト
4.ザ・ゴールデン・エルク
5.ロング・ディレクション
6.ハート・オブ・ザ・ジャイアント
7.ウィ・アカースト
8.グレイン・オブ・サンド
9.アモングスト・スターズ
10.パイアーズ・オン・ザ・コースト
[日本盤限定ボーナストラック]
11.ハニーフロー

【メンバー】
トミ・ヨーツセン(ヴォーカル)
エサ・ホロパイネン(リードギター)
トミ・コイヴサーリ(リズムギター)
オーリ=ペッカ・ライネ(ベース)
サンテリ・カリオ(キーボード)
ヤン・レックベルガー(ドラムス)

◆アモルフィス『クイーン・オブ・タイム』レーベルサイト
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