【インタビュー】加藤和樹、AL『Ultra Worker』発表「“やればできる”を証明していきたい」

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■ 自分に絶対ないという感情はない

── 「Ultra Worker」は曲調的にラテンの雰囲気がありますが、それもまた、新しい試みのひとつですよね。

加藤:そうですね。「Ultra Worker」はこれまで自分が歌ってきた楽曲にはなかった雰囲気。僕のバンドのベーシストでもある鈴木健司さんに「ライヴで盛り上がる楽曲を作ってください」とお願いしたら、高揚感ある曲にしてくれました。

── 一方、EDMの曲調に艶のある歌声がマッチした「Butterfly」に関しては、「HERO」、「Ultra Worker」とは一変して、夜の街を舞台に満たされない愛が描かれています。

加藤:最初にデモが上がってきた段階で、大人の恋愛を描こうと思ったんですよ。でも、アレンジによってガラっとイメージが変わったので、そこからインスピレーションを得て、夜の街で働く人たちにスポットを当てて歌詞を書いてみようと思ったんです。それにあたっては、これまで演じてきた中に、ドラマ『インディゴの夜』や舞台『私のホストちゃん』など、ホストの世界を描いたものもありましたからね。そういう役者としての経験値を生かして書いた物語でもあります。

── 俳優活動と音楽活動、そうした相互作用もあるわけですね。

加藤:そうなんです、違う誰かの人生を生きることによって、自分の体験として言葉や物語を編めるっていう。そういう意味でも、役者をやっていてよかったと思います。

── それぞれの曲の主人公になりきって世界観に入り込めるからでしょうね、歌い方にしても曲によってガラっと違いますし。

加藤:曲の特性というのがそれぞれに絶対あって、それに合う声もあると思うし……自然とそうなるんですよ。

── 「stay by your side」の歌声はとても穏やかで温か、「Butterfly」を歌っているのと同一人物とは思えないほどです。

加藤:ははは、確かに。そういう振り幅が自分らしさだと思うし、10曲あれば曲ごとにいろいろな側面、表情が見られるというのも、アルバムならではの楽しさかなと。それに、自分に絶対ないという感情はなくて、多かれ少なかれ、どれも自分の中にある感情だったりしますからね。今回は、そういう自分の持っているものすべてをひとつの作品に集約させることができたな、という達成感もあります。

── 中盤の影を感じさせる曲たちでは、自分の存在意義を見出そうともがく「L∞P」、変わることのない愛を求める「魂」、自問自答する「Calling Me」と、それぞれに繊細な表現をされていて。

加藤:そう感じ取ってもらえてうれしいです。中でも、同じことの繰り返しだったりする毎日の中で、立ち止まってしまう自分から脱却したいともがく「L∞P」は、自分も同じ経験があるからこそとても共感できますね。一度芸能界を離れたとき、某ファストフード店で働いていたんですけど……。

── それもまた驚きです。

加藤:毎日15時から24時まで、働いていましたよ。こういう日常も悪くないな、このまま就職するのもありなんじゃないかって思っていた自分もいたんですけどね。いい仲間にも恵まれて、同じような日々ではあってもまったく同じではないわけで、常連さんや次から次へとやって来るお客さんとのちょっとしたコミュニケーションも楽しかったりして。

── “やればできる”が座右の銘であることにしても然り、加藤さんはどういう状況でもポジティヴ要素を見つけられる方なのでしょうね。

加藤:っていうことなんですかね?(笑)。確かにあまりマイナス思考にはならないかも。基本的になんとかなるって思っているし、自分にはできないこともあるけど、自分にしかできないこともあるはずだし。それは「HERO」にもつながっていくことで、人と比べたって意味はなくて、自分は自分ですから。

── 作品にも今お聞きしている言葉にも、生きるヒントがたくさんあります。

加藤:10代、20代のころは勢いも大事ですけど、30代になって後輩たちも増えてきた中で、今の自分を見つめる機会も増えてきたんですよね。この仕事をしていると、僕らって商品にすぎなくて、「代わりはいくらでもいる」って言われ続けてきたわけですけど……。

── どんな人も、その人の代わりは絶対にいないですよね。

加藤:そういう意地や根性はあるし、自分はここにいるぞ、自分は自分なんだ!という強い想いは、自分自身、今回のアルバム制作を通して再確認しました。

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