【インタビュー】GOSPELS OF JUDAS、1stアルバム発表「氷室さんから受け取ったメッセージは、“音楽だけで、どこまで物語を作ることができるか”」

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■ 彼のギターはすべてを伝えてくれる

──では、歌詞の話に。森雪之丞さんによる「Bloody Moon」「Play Within A Play」とGin Kitagawaさんによる「Mystic Beauty」「Star Fire」、GODBROTHER名義の「LIAR~世界中の哀しみ集めて~」「RAIN」とインストを除く6曲はすべてJun Inoueによるものですが。

Jun Inoue:先ほどお話ししたように、森さんの世界観があったので、そこを軸にしつつ各曲をつなげていって。一番最後の「Cryin’ with my Guitar」はまた違う物語なんですけど。

──他の曲がSF的な歌詞に対して、「Cryin’ with my Guitar」だけはリアルですね。Jun Inoueが思う“YTさんとギターの関係性”を想像しました。

Jun Inoue:そのとおりです。特にラストナンバーという指定があったわけでなく彼から受け取ったんですけど、とにかくギターソロがまず耳に飛び込んできて。そのギターソロに辿り着くまでに彼がどういう言葉で歌ったら、ギターソロの場面で音楽的に一番高いところに行けるかなということを逆算して歌詞を書いていったんです。そうすると必然的にアルバムの物語には入れられなかった。それに、楽曲の感じとしてフィナーレを飾るナンバーだと思ったのでラストに据えました。もちろんフィクションですので、彼のリアルを語っているわけではないんですけど、ギター賛歌ですよね。ギターと共に生きたある男の歌。で、言葉では表せないからギターソロに入るという。彼のギターはすべてを伝えてくれるんです。という意味では、ギターソロを聴いてもらう曲と言い換えることもできますね。

YT:この曲の歌詞はしっくりきました。日本の楽曲にはわからない歌詞も少なくないですけど、彼が書く歌詞凄く納得できるし、この曲は特にいいなと思えましたね。

Jun Inoue:「Cryin’ with my Guitar」以外は、ひとつの物語になるように各曲の歌詞を書いていったんです。森さんとかに書いていただいた歌詞も含めて。

──収録曲順にも関わってくるストーリー展開ですね。

YT:もちろん制作中に変わっていった曲順もありますけど、「Mystic Beauty」と「Area 51」が冒頭にあるという流れは当初から決めていましたね。

▲YT、Jun Inoue

Jun Inoue:曲順に関して言えば、「Nexus -Overture-」というインストが1曲目にあって「Mystic Beauty」「Area 51」で第一幕を閉じたかったんです。第二幕は4曲目の「Interlude 1」、第三幕は8曲目の「Artificial Selection」、最終章は「Interlude 2」からという構成ですね。それに、時間軸が前後する部分は映画を意識したところでもあって。「Area 51」で第一幕が終わって、第二幕の「Pris’ Dream」は“別れ”の曲なんですが、最終章の「White Moon」というラブソングは、実は“別れる前”の話なんです。アルバム全体を通して聴いてもらうと、“あれ、「White Moon」の2人は「Pris’ Dream」の2人のことかな?”って遡って聴いてもらえるような構成にもなってます。

──回想シーン的な手法も用いられているという。インストの収録位置はストーリー展開部を意味しているわけですね。インストからつぎの曲につながる部分の流れも見事。巧くミックスされてます。「Interlude 1」「Interlude 2」の“作曲者=Silky Voice”は、Jun Inoueさんのソロアーティスト名義だそうで。

Jun Inoue:そこに置こうという意図のもとでインストを作りましたからね。僕は作曲も作詞も、いわゆる音楽に関することは何でもやります。ちなみに「ギターインストが欲しい」ということは僕がYTにお願いしました(笑)。

YT:「Artificial Selection」も後から作ったんですよ。

Jun Inoue:最初は「ギターインストは要らない」って言ってたんですけど、「いやいや、それはないでしょ」と(笑)。マニアックな話ですけど、「ジョー・サトリアーニを超えてくれ」というリクエストをしました。

──YTさんを中心としたプロジェクトにもかかわらず、「Artificial Selection」以外にギターインストがないですもんね(笑)。ファンからもギターインストは熱望されるところでしょうし、さすがはプロデューサー。そういうリクエストを受けて、どんなギターインストにしようと?

YT:僕が作るものなので、やっぱりギターリフがしっかりしたインストであること。たとえば、ジョー・サトリアーニはメロディアスなギターインストを作るけど、リフものってあまりないじゃないですか。「Artificial Selection」に関しては、しっかりとリフが鳴っている上でメロディーを弾くようなインストにしようと思ってましたね。

──「Artificial Selection」を含めて、YTさん作曲ナンバーが全16曲中11曲を占めるわけですが、そのどれもがメロディーがキャッチーでギターリフがカッコいい。しかもグルーヴしているという、バークリー時代にJun Inoueさんと組んだバンドのコンセプトにも合致するものばかりで。

YT:そう言っていただけると嬉しいですね。

──「Mystic Beauty」は氷室さん王道といってもいいメロディーに対して、ギターリフに趣向が凝らされています。一聴すると変拍子に聴こえるフレージングなんですけど、変拍子ではないというトリッキーさ。

YT:普通ではないリフを狙うというか、せっかく自分が演るんだったら人とは違うことがしたいというか。聴き流されてしまったり、反応してもらえなかったりでは面白くない。では、どうするかというと、耳を惹くフックを作るということですよね。リフを作るときはそういうことを考えているので、そういう部分に反応していただくと嬉しいです(笑)。

──思うつぼ、というわけですね(笑)。ギター的な聴きどころで言うと、GODBROTHER名義の「RAIN」はアグレッシヴ。弾きまくりの躍動感が凄い。

YT:はい。かなり(笑)。

Jun Inoue:速いですよね。この曲はレコーディングをLAで行ったので、ドラムは氷室さんのサポートでお馴染みのチャーリー・パクソン。「Bloody Moon」「Play Within A Play」「LIAR~世界中の哀しみ集めて~」「RAIN」はチャーリーのドラムですね。

──それ以外のドラムは?

YT:Tesseyさんの曲はシーケンスだし、それ以外の曲は僕が作ったものですね。

──プロジェクトの性質上、ドラムも含めてデジタル色が強いのかなと想像していたんですが、むしろサウンドから受ける印象は生のバンド感だったんです。そういう受け取り方で間違いないでしょうか?

YT:もちろん!

Jun Inoue:そうだと思います。デジタルのデジタル感って、すでに昔のものっていうか。僕なりの近未来感は、デジタルだからこそ、その中で体温のあるものが際立つというか。血の通うものがメインになってくるんじゃないかなということで。

──それって、デジタルと生演奏のミックス具合にも関わってくる話でしょうか?

Jun Inoue:彼はヴォーカルを聴きながら、それに合わせてドラムを作るんです。その方法論は僕にも共通していて、ヴォーカルとドラムありきで、他のパートを色付けていくという作業をしていますね。軸となるのはヴォーカルとドラムなんです。

──ヴォーカルの話も訊かせてください。Gin Kitagawaさんが歌った2曲(「LIAR~世界中の哀しみ集めて~」「RAIN」)はGODBROTHER名義のもので、GOSPELS OF JUDAS名義の4曲(「Mystic Beauty」「Bloody Moon」「Star Fire」「Play Within A Play」)が氷室さんヴォーカル。それ以外の楽曲に関してはすべてYTさんが歌われています。そのセレクションというのは?

YT:氷室さんに歌っていただいた4曲は、結構前の段階で録っていたものなんですよね。

Jun Inoue:基本的に僕は、YTが歌うものだと思って歌詞を作っていたけどね(笑)。

──つまり、メインヴォーカリストはYTさんということですよね。

Jun Inoue:そうです、そのとおりです。

YT:曲を作っているときには自分で歌うというイメージは頭の中になかったんですよ、正直なところ。ただ、このプロジェクトが進んでいくにあたって、知らない人が新しく入って歌うというのも違うのかなと。となると、自分で歌わないとダメなんじゃないかなと思うようになって。

──…………そんな消去法ではないですよね(笑)?

Jun Inoue:そうですよ(笑)! 氷室さんから「YTが歌えよ」って言われたことがデカいんじゃないの?

YT:ホンマは、そこが一番だけどね。氷室さんに言われたら「わかりました」って言うしかないでしょ(全員爆笑)。

▲YT

Jun Inoue:YTの歌はブルージーですし、色っぽいのでミックスしてても楽しいですよ。

──ヴォーカルはもちろん、生のバンド感がほとばしっているという意味では、ライヴがますます楽しみになってくるアルバムということもできるんです。

Jun Inoue:ライヴでは、アルバムの1曲目からラストまで、曲順通りに演ります。来てくれた人にアルバムを生で体感してもらうというコンセプトで。

YT:メンバーは僕がヴォーカル&ギター、Gin Kitagawaがベース&ヴォーカル。ちなみに彼もバークリーからの仲間です(笑)。で、Tesseyさんと彼(Jun Inoue)がトラックを流すという4人編成です。楽しみにしていてください。結構凄いですよ……って自分で言っておこうかな(笑)。

取材・文◎梶原靖夫(BARKS)
撮影◎大橋祐希

  ◆  ◆  ◆

【リリース情報】

▲アルバム『IF』

1st ALBUM『IF』
2018年7月18日発売
価格:¥3,240 (Tax in)

1. Nexus 〜Overture〜
2. Mystic Beauty
3. Area 51
4. Interlude 1
5. Pris' Dream
6. LIAR 〜世界中の哀しみ集めて〜
7. Bloody Moon
8. Artificial Selection
9. Star Fire
10. Interlude 2
11. White Moon
12. Silent Train
13. Tears in Rain
14. RAIN
15. Play within a play
16. Cryin' with my guitar

【ライブ情報】

<GOSPELS OF JUDAS LIVE “IF #2”>
日程:2018年9月2日(日)
会場:青山Future SEVEN
1部:開場16:00 / 開演 16:30
2部:開場19:00 / 開演 19:30

日程:2018年9月8日(土)
会場:心斎橋VARON
1部:開場16:00 / 開演 16:30
2部:開場19:00 / 開演 19:30

チケット 一般発売日:8月12日(日)
チケット料金:¥5,000(税込)
入場時に1drink ¥500

  ◆  ◆  ◆

<GOSPELS OF JUDAS LIVE “IF”>
日程:2018年7月15日(日)
会場:Future SEVEN
1部:開場16:00 / 開演 16:30
2部:開場19:00 / 開演 19:30

<LIVE “IF” レコ発記念ライブ>
日程:2018年7月18日(水)
会場:新代田 LIVE HOUSE FEVER
開場19:00 / 開演 20:00

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