【インタビュー】TETSUYA (L’Arc-en-Ciel)、1st EP完成「常に攻めの姿勢で音楽を作る」

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■見るたびに気づくことがあると思うし
■ループして戻る構成も楽しんでもらえる

──いい雰囲気で盛り上がるでしょうね。「I WANNA BE WITH YOU」と「READY FOR WARP」はMusic Clipも作られましたが、違う曲なのに同じシチュエーションで、同じカット割りになっているという独創的な手法が印象的です。

TETSUYA:そういうMusic Clipってあまりないじゃないですか。というか、これまでやったことのある人っているのかな? たぶん誰もやっていないと思うんですよね、同じシチュエーション、カット割で別々のMusic Clipを撮るという手法は。監督と打ち合わせをしている中でフラッシュアイディアとして出てきたものが“2つの世界を行き来するパラレルワールド”。今回のEPは、夏をテーマにした5曲を収録しているんですけど、僕の中ではもう全曲シングルカットできるくらいの曲を集めたつもりなんですね。だから、Music Clipは普通タイトル曲だけなんでしょうけど、もう1曲なんとかして撮りたかったんです。そこで監督と意見を交わしたらアイディアが閃いて。これなら2曲撮れるし、誰もこういうアイディアでMusic Clipを作ってないだろうから。

──同じ構成で撮るのならラクなのかなと思う人がいるかもしれませんが、実はかなり難しい気がします。

TETSUYA:そうなんです。異なるテンポに合わせて、同じ動き、同じ表情をしないといけない。リップシンクもしてますしね。同じ演技をするんだけど違うんです。だから、同じシーンで違うセリフを違和感がないように言うようなものですよね。そういう意味では、全くテイストの異なる2曲のMusic Clipを撮るよりも大変な部分がありました。


──2曲を続けて見るとトリップしたような不思議な感覚を味わえます。それに、“ヴァン ヘイレン モデル”のギターや、映画『バック トゥ ザ フューチャー』シリーズに登場する車“デロリアン”も楽しめました。

TETSUYA:ネタとしては、ちょっと古いですけどね(笑)。

──そんなことはないです。“おっ!”と思いましたよ。

TETSUYA:本当ですか? 撮影用の車とか小物とかが借りられるところってあるじゃないですか。でも、デロリアンを用意しているところなんて、たぶん一ヶ所もないんです。なので、僕が未来から乗ってきました(笑)。

──は、は、は、はい(笑)。

TETSUYA:実は最初からデロリアンを使おうとしていたわけじゃないんですよ。“2つの世界を行き来するパラレルワールド”というシチュエーションのMusic Clipを撮ろうという話になる前に、監督のアイディアの中に車のシーンがあったんですね。その後も車のアイディアは残っていて、監督から「こういう車が借りられます」という一覧をいただいたんですけど、どれも本当に普通のレンタカーだなぁみたいな感じで(笑)。「僕の知り合いにデロリアンを持っている人がいるんです」という話を監督にしたら、「ぜひ」という話になって。その場でその方に連絡して、「いいよ」ということでお借りしたんです。

──デロリアンを所有している知り合いがいるという人は滅多にいませんよ(笑)。

TETSUYA:僕はその人と縁があるみたいで、街中で車を運転していて前からデロリアンがくるなと思ったらその人だった、ということが過去に3回くらいあるんです。

──不思議ですね。それにネタが古いとおっしゃいますが、今回のMusic Clipのコンセプトにデロリアンは最適だと思います。

TETSUYA:結果的に、デロリアンがないと成立しないものになったので、本当によかったと思います。

──同感です。それに、同じカット割りと同じ動きでいながら、着ている衣裳や持っているギターが逆になっているのもいいですね。

TETSUYA:パラレルワールドなので、“Aという世界”と“Bという世界”に存在している違うTETSUYAです。だから、着ているジャケットが違っていたり、選ぶギターが違っていたり、仮面をつけた男性と女性の並びが違っていたり、というふうにしています。ぜひ両方見てほしいですね。見るたびに気づくことがあると思うし、ループしてまた戻るという構成も含めて楽しんでもらえると思います。

▲通常盤[初回仕様]

──すごく楽しくて実は何度か続けて見てしまいました。話をEPに戻しますが、3曲目の「FATE」はダークでスタイリッシュなナンバーで、夏をテーマにした作品の中で絶妙なフックになっています。

TETSUYA:でもね、これも夏つながりなんです。夏といえばホラーじゃないですか。「FATE」はそういうイメージの曲なんです。だけど、大変でしたよ、いわゆる“産みの苦しみ”というか。作業的には何時間かかったかな……原形のデモを作るのに半日、歌詞を書くのに3~4時間?

──えっ? えっ? えっ? めっちゃ早いじゃないですか。

TETSUYA:うん、本当に早かった(笑)。もうなんの迷いもなかったです。歌詞なんて、それこそ書く前に書けていたくらい。僕はいつもいろいろなテーマをノートに書き留めているんですよ、“こういう歌詞で、こういう言葉を使って”というのをランダムに。作詞するときにはそのノートを見るんですね。殴り書きした言葉の中からメロディーに合うものを見つけていくんですけど、「FATE」はその時点でほぼほぼもうできているなというくらいすぐに埋まっていたという。

──衝撃です。独創的かつ新境地を感じさせる曲調ですし、歌詞は“人間とは”という大きな目線とも取れるし、パーソナルな思いを重ねられるものになっていますよね。なので、作るのに時間がかかっただろうなと思ったんです。

TETSUYA:だから、僕も迷っているんですよ。

──えっ? えっ? えっ? 何に迷っているんでしょうか?

TETSUYA:正直に「すぐに出来た」と言うのがいいのか、「なかなか出来なかった」と嘘をついたほうがいいのか(笑)。たとえば、“何度も歌詞を書いたけど全部破り捨てて、もう一度ゼロから書き直した”とか、“何度も作り直しを重ねて、特にサビは5回くらいメロディーを変えたんです”みたいな話にしたほうがいいのかなって。

──正直に話されたほうが、衝撃度は高いですよ。

TETSUYA:でも、有り難みが少なくないですか? そんな簡単に作った曲なのかー、みたいな感じになりそう(笑)。

──完成したものが、どこにでもあるような曲ならそうかもしれないですけど、独創的ですからそうは感じないと思います。

TETSUYA:僕、こういう曲調は全然得意ですよ。

──楽曲カラーはそうかもしれませんが、EDM感がありつつEDMではないというバランスや、シンセベースと生ベースが共存しているアレンジは新鮮です。サビもちょっと今までになかった雰囲気ではありませんか?

TETSUYA:そうですね。すぐに出来たといっても、それは原形の話で、そこからアレンジには時間をかけて、“もっとよくしよう、もっとよくしよう”と煮詰めていったんです。最初はギターソロを入れようとは考えていなかったんですよ。レコーディング現場で、「ここ、ソロ弾いてもらっていいですか」とギタリストにムチャぶりしたんですよ(笑)。そうしたら、とんでもなくカッコいいフレーズが出てきてビックリしました。

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