【インタビュー】メトロノーム、エレクトロ・ポップの最新形を提示する20周年記念作品『廿奇譚AHEAD』

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メトロノームがニュー・アルバム『廿奇譚AHEAD』を完成させた。20周年を記念する作品という位置づけの同作は、メトロノームの真骨頂といえるエレクトロ・ポップの最新形を提示すると同時に、新機軸の楽曲が多いことが印象的。長年にわたるキャリアで得た財産に頼ることなく、今なお新たな道を切り拓き続ける彼らの意欲には圧倒されずにいられない。必聴といえる新作について、メンバー三人に大いに語ってもらった。

■“廿奇譚AHEAD”という言葉には先へ進んでいく思いが込められている
■リード曲は今後のメトロノームに勢いがつく曲にしたいなと思った


――『廿奇譚 AHEAD』の制作は、どんなふうに始まったのでしょう?

フクスケ:曲作りを始める前に、僕の中にアルバム・タイトルと新しいヴィジュアルの大まかなコンセプトがあったんです。それを、みんなに伝えたところから、今回の制作は始まりました。“廿奇譚AHEAD”というタイトルに沿った曲を作ってほしいと言ったわけではなくて、ただ単に「こういうタイトルでいきます」とだけ言ったんです。それを受けてそれぞれが曲作りに取りかかって、あがってきた9曲にオープニングSEの「廿奇譚AHEAD」とシングルの「弊帚トリムティ」を加えたのが今回のアルバムです。

――今作はメトロノームならではの“電脳感”は継承しつつより幅を広げていることや、全体的にロック感が増していることが印象的です。

フクスケ:ロック感が増しているというのは、言われるとたしかにそうかもしない。でも、それは意識しなかったですね。それぞれが持ってきたものを三人でアレンジし直したりすることはなくて、どの曲もほぼ原曲のままなんです。なので、曲調の幅広さにしても、ロック感にしても自然な結果です。

リウ:フクスケ君から“廿奇譚AHEAD”というタイトルと衣裳のコンセプトを聞いたときに、僕は冒険に出るようなイメージを受けたんです。コンセプトに沿わなくていいと言われたけど、曲を作るにあたってそういう匂いを感じさせたいと思って。それで、「回遊論」はイントロが特にそうですけど、ゲームやアニメの旅立ちのシーンをイメージして、ドラマチックな感じにしました。


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――「回遊論」は、サビもドラマチックですよね。それに、狂騒感がありながら翳りを帯びているという独自のテイストも注目です。

リウ:「回遊論」は、曲調的には再起動後の自分が書いている王道っぽい方向性で、今回もそういうものを1曲書きたいと思って作りました。あと、「回遊論」の歌詞を書いたときは、アルバム・タイトルと衣裳に加えて、アーティスト写真を撮影する場所も決まっていたんですよ。廃虚とか廃遊園地というイメージがあって、そこから膨らませて歌詞を書いたので、ちょっとせつない感じになりましたね。自分的にアーティストとして、ミュージシャンとして、こういうふうに生きたいという意志を、物語っぽくフワッと書いた歌詞になっています。

シャラク:今回のアルバムの曲で、自分の中で特に印象の強い曲をあげるとしたら「血空」です。自作曲ではなくてフクスケ君が書いた曲なんですけど、フクスケ君らしくない。彼はメジャー感のある曲を頑なに作らないイメージがあったけど、彼のソロ作を聴くとそういう曲が多いんですよね。それで、メトロノームでもそういう曲を書いてくれませんかと、フクスケ君の事務所の社長に言ったんです。本人には言わずに、外堀から攻めるという(笑)。そんな話をしていて、最初にリード曲の候補を出しあったら「血空」が出てきたので、“あっ、来た!”と思いました(笑)。

フクスケ:そうだったんだ(笑)。ただ、「血空」は僕的にはメジャー感ということを意識したわけではなくて、軍歌っぽい曲がほしいなと思って作ったんです。“廿奇譚AHEAD”という言葉には、ここからまだ先へ進んでいくよという思いがこめられているので、リード曲は未来に戦いに行くというか、今後のメトロノームがもっといっぱい活動できるように勢いがつく曲にしたいなと思って。そういうところからイントロのリフとかも出てきたんです。あとは、曲全体を通してちょっと古い感じの要素を採り入れて、20年が散りばめられている感じにしました。

――軍歌をイメージしたことで、出だしにサイレンの音が鳴っていたりするんですね。それに、古い要素を散りばめたとのことですが、サビの途中でビートが変わるリズム・アレンジなどは最新の楽曲にふさわしいです。

フクスケ:そうなんですか? それは、まったく知らなかったです。


▲フクスケ

――無意識に新しいことをされるというのは、普段から最新のミュージック・シーンにアンテナを張っているからこそという気がします。

フクスケ:どうなんでしょうね。でも、時代にズレていないならよかったです。今回僕の中で印象が強いのは、シャラクが書いた「主人公ルート」ですね。自分がギタリストだからというのもあるけど、この曲はアコースティック・ギターが押し出されているというのがあって。それに、僕はループしたコード進行をずっと弾いているのがとても好きなので、この曲を弾くのはすごく楽しいんですよ。洗練感のあるオケのうえに乗っているメロディーもとてもきれいで、いい曲だなと思いますね。

シャラク:「主人公ルート」は、メトロノームは他にライブでアコギを使う曲がありまして。その曲をやる前は、スタンドについたアコギがステージに出されるんですよ。アコギを使うのはその曲しかないから、アコギが出てきた時点で、お客さんは“あっ、あの曲だな”とわかってしまうんですよね。バレてしまうのが嫌で、じゃあもう1曲作ってやろうと思って作ったのが「主人公ルート」です(笑)。そうやって曲を作って、常日頃思っていることを綴った歌詞を乗せました。歌詞を書くというよりは、ブログを書くような感覚でしたね。

――シャラクさんは自虐的な歌詞を書かれることが多いですが、誰しもが自分もこういうところがあるなと感じるものになっていることを、あらためて感じました。皆さんがあげた曲以外にも、演劇的かつ不思議な世界観の「不安の殿堂」は、独自の病みつき感に溢れています。

シャラク:映画の中でも“ドタバタ・ミュージカル”みたいな作品が特に好きなんです。ロック・ミュージカルも観ますけど、ロックよりもオペラ的なものが好きですし。オイラはそういうものを他の活動ですることがあって、それをメトロノームでもやってみたいと思ったんです。シングルはちゃんとメトロノームっぽいものということを意識して作るけど、アルバムの中の1曲ならいいんじゃないか…みたいな(笑)。そういう感覚で作りました。

リウ:「不安の殿堂」を聴いて驚く人もいると思うけど、僕はシャラク君とは長いつき合いということもあって、シャラク君らしいという印象を受けました。こういう楽曲は好きだし、より世界観を深められるといいなと思って、この曲はアップライト・ベースを使ったんです。


▲シャラク

――そうなんですか?

リウ:はい。今回「不安の殿堂」と「血空」「主人公ルート」はアップライトです。曲を聴いたときの第一印象で、きっとフィットすると思って。アップライト・ベースは当然フレットレス。音色とフレットレスということが相まって、その3曲は、より雰囲気を深めることができたんじゃないかなと思います。

フクスケ:僕もシャラクとはもう高校生の頃からずっと一緒に音楽をやっているので、彼が好きな感じとか、やりたいものとかはわかるんですよ。だから、「不安の殿堂」を聴いたときも違和感はなかったし、こういう曲をメトロノームでやるのは面白いんじゃないかなと思いました。こういう曲がアルバムに沢山なのは違うだろうけど、1曲だけ入っていることで、すごく映えていますよね。アルバムを聴き飽きない要素の一つになっているという意味でも、いいフックになったと思います。それに、「不安の殿堂」はAメロとかはギターが入っていないので、今からライブでやるのが楽しみです(笑)。ギターを弾かないときのほうが楽しい…みたいな(笑)。

シャラク:楽しんでください(笑)。あと、「不安の殿堂」は、オイラの中で歌詞がちょっと新しい。他の曲は“ダメだ”とか“ツラい”“ツラいけど、がんばろう”みたいな感じだけど、この曲は“ダメだ、もう誰かに丸投げしよう”という感じなんです。シャラクを生かすチームみたいなものを作って、なんとかできないかなと(笑)。普段からよくそういう話をしているんですよ。バンドマン同士が集まって、アパートとかを買って、みんなで住んで、毎日「〇〇さん、起きてる?」とか声をかけ合うという。老々介護みたいなことができないかなと(笑)。それが「不安の殿堂」の歌詞に表れています。

――な、なるほど。そういう不安というのは、いわゆる中2病的な憂いを帯びた不安感とはまったく違っていますよね。

シャラク:そう。人というのは若いときは“死にたい”とか“死にたくはないけど、消えたい”みたいな気持ちに取りつかれたりするけど、そういう時期を経て、死なないためにはどうしたらいいかを考えるようになる(笑)。そんな、ここ最近の自分の内面のリアルな不安を書きました。

――続いて、8曲目の「我が為に鳴くパンドラ」は、メトロノームらしさの最新形を味わえる1曲といえますね。

フクスケ:僕はこういうミドルテンポの曲で、ギターでズンズン刻むのが好きなんです。でも、シャラク君やリウ君はあまりそういう曲を作ってこないので、そういう方面のものもほしいと思って自分で作りました。歌詞は、もう過ぎてしまった過去を思い出して、あのときやっておけばよかったなと思うという設定です。タイトルにもなっている“パンドラ”というのは、棺桶のことなんですよ。つまり、自分の葬式を空から見たときに、あのときもっとちゃんとしておけばよかったなと必ず思うということに、みんな気づけよという曲です(笑)。

――だから、ちょっと他人事っぽい歌詞なんですね?

フクスケ:そう。“こうしておけばよかった。後悔しないために生き方を変えよう”ということではなくて、もうどうにもならない状態を描いているという(笑)。途中に出てくる“僕の居ない所で僕に思いを馳せる”というのは、葬式で送辞が語られているところのイメージです。

――すごい発想をされますねぇ(笑)。

フクスケ:最近は、“生き死に”が気になりだしているんです。知人が亡くなることが増えてきているので。そういうところから出てきた歌詞で、視点の面白さを狙ったわけでもない。僕の中では、ごく自然な歌詞です。

シャラク:「我が為に鳴くパンドラ」はメトロノームらしい曲ですよね。この曲はサビの歌い方が自分の思う“メトロノームのシャラク”という感じなので、すごく得意ジャンルというか。ここ最近そういう曲がなかったので、このタイミングで提示できてよかったと思います。

リウ:「我が為に鳴くパンドラ」もベースが印象深いですね。最初にフクスケ君から送られてきたデモのベースは全然違っていたんですけど、スラップをしたらもっとノリとか、ライブ感が出るかなと思って。スラップをしてアッパーになり過ぎたら違うかなというのもあったけど、イメージが違ったらまた録り直せばいいや…くらいの感覚でガラッと変えたんですよ。そうしたら、みんながいいと言ってくれて、“よしっ!”と思いました(笑)。この曲のベースは、すごく気に入っています。

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