【インタビュー】植田真梨恵、1年ぶりシングルに新機軸「きれいなものを描きたい」

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植田真梨恵が7月25日、約1年ぶりとなる8thシングル「勿忘にくちづけ」をリリースする。“人から人へと受け継がれていくもの”を思いながら制作したという表題曲には、懐かしさを感じさせる旋律とピアノの調べ、美しい日本語詞が紡がれた。自身の故郷・久留米の伝統工芸“久留米絣 (くるめがすり)”のPR動画主題歌を依頼されて完成した同曲「勿忘にくちづけ」は、現在『チョーヤ「夏梅」』CMソングとしてもオンエア中で、灼熱の夏に涼しげな香りを注いでくれる。

◆植田真梨恵 photo-gallery

カップリングには、心の雨模様が晴れ空へ変わりゆくようなアレンジが秀逸な「雨にうたえば」、THE BEATLESの「strawberry fields forever」で有名なメロトロン独特の音色を用いた「distracted」(※初回盤はiPhoneでRECしたボイスメモVer.)を収録。そのどれもが、植田真梨恵の新境地とも言える仕上がりであり、歌詞や主旋律はもとより、彼女らしい細部にわたるサウンド的なこだわりが楽曲をより表情豊かなものにしている。「新しい植田真梨恵をまた一からお届けしたいな。と思ってます。」と語るロングインタビューをお届けしたい。

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■今一度、植田真梨恵が本当に
■大切にしたいところは何だろうと

──「勿忘にくちづけ」は、リード曲としてはこれまでになかったゆったりとしたアコースティック調の曲で、特にリラックスしたヴォーカルで歌を紡いでいく感覚が新鮮でした。この曲は、どんなふうにして出来上がった曲ですか?

植田:この曲は、私の故郷・久留米の伝統工芸に“久留米絣 (くるめがすり)”というものがあるんですけど、その久留米絣のPR動画を作るということで、テーマ曲のオファーをいただいて作った曲なんです。特に明確なお題はなかったのですが、久留米絣は藍染で、あらかじめ糸を縛って、藍に染まる部分と染まらない部分を作った上で織ることによって模様を作っていくものなんです。結構、気が遠くなるような工程の作業なんですね。そういう久留米絣というものの藍色の部分や、縦糸と横糸で織りなしていく機織りをイメージしながら、そして伝統や、人から人へと時代を超えて繋いでいくというようなことを考えながら作りました。

▲植田真梨恵 画像ページ【1】へ

──アコースティック・ギターが基調となっていますが、そのアコギが左右でアルペジオとバッキングで分かれているアレンジが、細やかに編むようにも聴こえてきます。そういったことも意識して作っていたんですか?

植田:音数が少ないので、アルペジオとバッキングの両方のギターがちゃんと聴こえるほうがいいなと思っていたんです。普段のデモは、ギター1本の弾き語りで作るんですけど、この曲はデモの段階から、そのアルペジオとバッキングを入れていたんです。どちらもないと曲の雰囲気が出なくて。その状態でまず先方にも聴いていただいて、そこから必要最低限の必要な音を入れていきましたね。

──加わっているのが、ピアノとシェイカーなどパーカッションくらいですね。

植田:はい。音数は少ないんですけど、パーカッションが実は細かくたくさん入っているんです。シェイカーとコンガとシンバルと、Bメロあたりの木霊のような音は、木の実をこすり合わせてカラカラカラって鳴らす楽器で(笑)。その他にも、いろんな音を入れていますね。

──シンプルなサウンドに聴こえるけど、そうではないと。

植田:むしろ私のなかでは、たくさん音を入れたなと思ったほどでしたね。そもそも書いているときは、この曲がシングルになると思って作っていなかったので。ただただ「勿忘にくちづけ」という曲の世界観を構築する上で、必要なものを入れていったら、パーカッションやピアノをのせるべきだという感覚が強くなったんです。なので、アレンジしたというよりも、必要な部分を構築するもののひとつとして、音をのせていくという作業ですね。

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──この曲はアレンジ自体を誰かにお願いするという発想もなかったんですね。

植田:そうですね。緻密に色んな音を足して作り上げるというイメージではなかったので、自然な流れで、そうなっていきました。ピアノはライブシリーズ<Lazward Piano>でも一緒にやっている、西村(広文)さんにお願いしまして。ジブリ作品にあるような、風がトンネルをスーッと抜けて、森の中へというような、日本のアニメーションの和っぽさのイメージを伝えました。新海誠さんの作品とかもそうですけど、きれいな湿り気のある現代の和っぽさを出したい曲なんだっていうことをお話ししたと思います。

──そういうサウンドに歌が立っていますね。ヴォーカルは声を張らずに、丁寧に紡ぐように歌うというイメージはありましたか。

植田:この曲を書いたくらいの頃から、“きれいなものを描きたい”という気持ちが、どんどん強まっていたんです。ワーッと歌うだけが歌じゃない。私がまとっている“こうでなければならない”というところをなるべく外して、今一度、植田真梨恵が本当に大切にしたいところは何だろうと考えて。そう思ったときに、こういう、声を張らないで歌う、情景の浮かぶような楽曲がとても素敵だと思ったんです。

──歌の表現力という意味では、冒頭とエンディングは、同じ旋律で同じ言葉が歌われていますが、肌触りが異なります。そこに時間の経過と気持ちの変化を感じました。

植田:あー、嬉しいですね。伝わってる(笑)。

──歌詞についても、より磨かれていますね。言葉を費やさずとも、行間で味わうような贅沢さを感じた歌でしたし、受け継がれていく愛や豊かさを感じます。この曲で、勿忘や勿忘草をイメージしたのは?

植田:曲を書く上では、思考に自由に動いてほしいところと、“これを書きたい”という大切にしたいものだけをすくいとるところとでは、まったく違うんですけど、その両方が大事だと思うんです。あまり大事に大事に歌詞を書いていると、すごく硬くなってしまうことがあって(笑)。この曲に関しては、そのへんのバランスが、偶然うまくいった曲で。曲のなかで大事にしたい部分と、ふと導かれるように出てきた、“勿忘にくちづけ”というワードがたまたまいいバランスで自然と生まれたので。勿忘は、消えて行ってしまうようなことを、忘れないでほしいということを考えていて出てきました。

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──偶然うまくいったという話でしたが、今だからこそ表現できる、歌える歌という感覚もありそうですね。普遍的な内容も含めて、いいときにお題をもらった感じだったんですかね。

植田:よくインタビューでもお話しするんですけど、私は巡り合わせとかタイミングみたいなものを、不思議で面白いなと思っていて。“勿忘”も後からびっくりしたんですけど、勿忘草の別名が、“藍微塵(あいみじん)”というらしいんですよ。藍色の藍に、微塵と書くんですけど。

──元々の久留米絣とも繋がっていくと。

植田:縦糸と横糸のように、細かい花が並んでいることからそう呼ばれているらしいんです。そういう謎の、引っ張り合いみたいなものは、多分巡り合わせだし、面白いなって感じます。そういうことばかりですね。というと、めちゃくちゃスピリチュアルな人間のように聞こえますが(笑)。

──ははは。でもそういう引きに気づくのはきっと、ちゃんとアンテナを張っているからなのかもしれない。

植田:そうですね、研ぎ澄まされた状態でいなければ、ですね(笑)。

──レコーディングは順調でしたか?

植田:とてもスムーズにいったと思いますね。実験的な部分も、“ここはこうしていきたい”という部分も、すでに頭の中にあったので。迷わずに楽しく、面白くできました。特にパーカッションは、いろんな音を試しながらできたので、とてもいいレコーディングでした。

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