【インタビュー】SHE IS SUMMER、言葉の硬さや柔らかな響きからストーリーや意味を楽しめるミニアルバム『hair salon』

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ユニクロ「ブラトップ」のキャンペーンソング「どこまでもBRATOP&GO」での歌唱やキャンペーンムービーへの出演などを経てジワジワとその名が知られはじめているSHE IS SUMMER。エレクトロポップユニット・ふぇのすたのヴォーカルとして活動していたMICOのソロプロジェクトとして2016年から活動を開始。これまで2枚のEPと1枚のフルアルバムをリリースしてきた。8月1日には、プロデューサーに片寄明人を迎えたニューミニアルバム『hair salon』をリリースする。

■今回の作品の前半の曲は風景が浮かんだり匂いだったりという
■感覚をどれだけ掻き立てられるかを意識して作りました


――SHE IS SUMMERの「SUMMER」って、夏の「SUMMER」?

MICO:いえ、人名の「SUMMER」なんです。「(500)日のサマー」という映画に出てくるヒロインのサマーがすごく魅力的な女の子なので、舞台に立っている間だけでも、そういう風になりたいという意味を込めてつけた名前なんです。でも、この名前に引っ張られて夏っていうイメージがついて、良かったこともいっぱいあったと思います。名前に引っ張られることってありますから。

――音楽性も名前に引っ張られた?

MICO:名前の由来が映画なので、最初は“映像から導かれるような音楽”という発想があったんです。私の歌詞は時間に逆らいたいという気持ちを書くことがすごく多いんですけど、最近はそういうテーマを大事にしています。

――時間に逆らいたい?

MICO:曲や物語の中では時間に逆らえる。曲の中だけは過去に戻れるから、そういうことを書いてることが多いんですよね。

――聴いている人もそうかもしれないですよね。例えば高校時代に聴いてたものを聴くと、その時に戻れるとか。時間に逆らうために聴く人もいると思うんです。

MICO:そうですよね。時間って、「時間」という概念を誰かが作っただけで、そもそも本当に流れているのかなという疑問が結構あって。私は、行動が重なって時間になっている気がするんですよ。だから、時間というものに対しての疑問が人より多いのかもしれないです。

――哲学的な話ですね。でも、時間の概念って、本当に曖昧で。楽しい時間って本当にあっという間ですね。逆につまらない時間は長く感じる。MICOさんの考え方でいうと、何もしていないつまらない時は行動が重ならないぶん、時間が長く感じてしまうのかなと思います。

MICO:確かに。だから夏って短い。きっと、いろんな行動が積み重なっているからなんだろうな。そういうのも後付けですけど、このアーティスト名は自分を上手く表しているなと思います。

――結果的に必然だったんですね。

MICO:やっぱり、「これだ!」って思ったものってそうなのかもしれないですね。最初にSHE IS SUMMERっていうアーティスト名にした時って、もう一度バンドをやりたいという気持ちがあったから、バンド名としてつけようとしていたんですけど、うまくメンバーが集まらなくって。でもいつバンドになってもいいようにプロジェクト名として走り出して。最初は一人なので、「SHE IS SUMMERというアーティスト名はひとりだと思われにくいし、どうなんだろう?」という疑問も出てきたんです。でも徐々にもう他の名前は考えられなくなっていて。そういう「これだ!」と思った名前というのは何か重要な意味があるのかもしれませんね。


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――そして今作『hair salon』なんですけど、これまた名前の話になっちゃいますが、なんで『hair salon』?

MICO:さっきも名前に導かれるものがあるって話をしましたけど、その通りで。今回は今までとちょっと違う作り方をしたんですよ。だから、タイトルのつけ方も今までにないやり方をしようと思ったんです。

――それはどんな感じ?

MICO:私は、意味にすごくこだわってしまうんですよね。意味がなさそうに思えるものに対しても「どういう意味があるんだろう?」って考えすぎちゃうタイプ。それがたまに足かせになったり、自分のストッパーになってるって感じたりもしていて。それで、今回のミニアルバムのタイトルは、意味を考えずに、音や響き、その言葉の持つフォルムとか、そういう感覚的なものだけを大事にして選んでみようと思って。それでつけたのが『hair salon』だったんです。

――へぇ~!

MICO:でも、今回の収録曲は、そういう曲が多かったんですよね。音に導かれてできたというか。でもどうしても意味をつけないことができないタイプなので、そこに後から意味が乗ってくるような。言葉の音、硬さや柔らかさみたいなものが持っている雰囲気から導かれるストーリーや意味を楽しむというのは、豊かな遊びだなと思いました。今回は、そういう感覚で作った曲が多いです。そういう曲のほうが、聴いた時に一瞬で、例えば「これは夏だけど、爽快じゃなくてジトッとしてるなぁ」とか伝わりやすいなと思って。

――うんうん。確かに。

MICO:今までは私の描く歌詞は、少し説明的な部分もあったかもしれないし、共感してもらえることも多かったかもしれない。なのでお客さんもライブで聴き入ってくれるという感じのものが多かったんです。そういう曲がありつつ、みんなで滝を見に行ったり、海の波がザバーンとなっているのを見て人が癒されるように、同じ風景を見て癒される感覚になる曲がライブの間に何曲か欲しいなと思ったんです。特に今回の作品の前半の曲は、風景が浮かんだり、匂いがしそうだったり、そういう感覚をどれだけ掻き立てられるかみたいなことを意識して作りました。それって今までのSHE IS SUMMERのライブにはなかった立ち位置の曲なんです。そういう曲によってもっとライブがよくなるといいなと思って。

――五感で感じられるみたいなね。

MICO:そうですね。無理せずにみんながライブで楽しめる曲が作りたくて。ゆったり揺れることができたり、隣で同じ気持ちになってるなって、わかるような曲ができたらいいなぁと思って作りました。

――なるほど。今の話を聞いて、さらに『hair salon』というタイトルがしっくり来ました。このタイトルを見た時に、美容院のあの独特の香りを思い出したので。あの匂い、すごく癒されて好きなんですよ。

MICO:あぁ~! 私も好きです。『hair salon』って癒される場所だし、おしゃれな場所だし、リフレッシュする時に行くところ。そうやって後付けで「この曲だと『hair salon』というタイトルと、こういう意味でつながるよね」って繋がっていったんです。最初は仮タイトルだったのに(笑)。他にも考えたんだけど、『hair salon』が一番しっくり来て。

――うんうん。

MICO:SHE IS SUMMERのジャケットのデザインを担当してくれているデザイナーさんに、「こういうタイトルだから、こういうのを表現したい」って、まずはタイトルから伝えるんですよ。「今回は『hair salon』です」って言ったら、「えっ!? ヘアサロン!?」って(笑)。『hair salon』(仮)の時は私もそう思ってた。でも、1日寝かせると「『hair salon』だ!」ってなるんですよね。で、デザイナーさんからもタイトルを伝えた翌日に「『hair salon』、すごくいいわ!」ってLINEがきて。そういう不思議な気持ちが沸き起こるタイトルなんです。名前ってすごく大事だなと思います。漫画のキャラクターとかでも、どういう名前をつけるかによって、そのキャラクターの動きが変わってくるっていうのと一緒で。名前に導かれてしまう行動というのもあると思うんです。「こういう名前の子って、こういう子が多いよね」っていうのがありますよね。だから、最初にタイトルを決めると、そのタイトルが導いてくれることがあるんです。ちなみに『hair salon』っていうのは、作っている途中でつけたんですけどね。

――今作が今までと違うやり方だったというのはどういう部分で?

MICO:大きくいうとプロデューサーに片寄(明人)さんを迎えたことですね。今までは楽曲提供をしてくれたアーティストと一緒に制作をしてきたのですが、ヴォーカルディレクションを含め、トータルで制作まではしてもらってなかったんです。なので、いつもヴォーカルテイクは自分で選んでいて。今作は、片寄さんには総合的にプロデュースをしてもらいました。いつも最初に歌い方で悩むんですけど、私が「この曲はこういう風に歌いたいと思っている」ということをまず伝えて。以前はAメロやBメロを分けて録っていたんですけど、一曲通して歌うというのを何回もやって、録り終わったら、その中から、片寄さんが一個ずつテイクを選んでくれるっていうやり方でレコーディングをして。その作業が以前とは大きく違いました。

――いつもと違う工程を経てどうでした?

MICO:自分では見つけ出せない声の良さを引き出してもらった部分があったし、自分だったらそこにそれをハメなかったかもしれないけど、確かにこの流れで聴くといいテイクだなっていう発見があったりして。


――第三者が選んでくれるって、客観的だから視点も変わるものね。

MICO:写真とかも、人がいいっていう写真と自分がいいと思う写真は違うというのと一緒で。ヴォーカルテイクも全然違ったりするんですよね。新しい試みでした。今までの作品を聴いてる人は、歌い方も結構変わったので、そっちの方が先に「うぉっ!」と思うかもしれないです。

――歌い方が変わったことには何か理由が?

MICO:『Swimming in the Love E.P.』までは、歌うことに対して世界観を固めて、「作品を作る」という気持ちで歌ってたんですね。その後に出した1stアルバム『WATER』は今作と比べたらその中間っていう感じ。今はもう少し、「話す」みたいな感覚のほうが強くて。私が日々生きていて、「こういうことを考えて面白かったよ」とか「こういう風になったらいいな」と思うことを、「私はこういう風に生活して、こういうことを思いついたけど、どうですかね?」みたいな気持ちで歌うことが多くなって。ライブが特にそうなんですよね。

――どうしてそうなったの?

MICO:何かを自分にデコレーションしていくと、必ず何かに寄って行っちゃうんですよね。「オリジナルが一番のオリジナルだ!」ってどこかで気づいて。例えば、服装を考えた時に、何かを足せば足すほど、何かっぽくなっていっちゃう。メイクも、今まであまりしたことがなかったけど、「してみようかな」って思った時に、すればするほど何かっぽくなるんですよ。実はそういうのって、歌い方にも取り入れてしまっているのかなって思って。もっと自分らしいものに近づこうと思えば思うほど、何もしないありのままに近づいていく感覚があって。

――なるほど。

MICO:バンド時代は、バンドの音のために作って歌っていた部分もあったんです。でも今は、普通のしゃべり声と同じような感覚で歌うようになっています。

――削ぎ落とされて、素が出てきたみたいな感じなんですね。

MICO:「何かを作り上げる」みたいなのも面白いんですけど、今の私のブームが「よりオリジナルに!」みたいなところにあって。『Swimming in the Love E.P.』の時のように、みんなで、「ガーリーでこういう世界観を作り上げる!」みたいなエンタメもいいなと思うんですけどね。今回はやらなかっただけで、またいつかそういうのをやるかもしれないし。

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