隙間三業、日本のロックやポップの質をひとりでちょっと上げているカフェオレーベルより注目のアルバム『kitsutsuki』リリース

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日本のロックやポップの質をひとりでちょっと上げているカフェオレーベルから、またおそるべきアルバムが登場した。バンドの名前は「隙間三業」、アルバム名は『kitsutsuki』。彼らの二枚目のフルアルバムである。

隙間三業にはヴォーカルはいない。つまりインストゥルメンタル(演奏のみ)ということになる。マスロックやマスコアに慣れている人にはまったく問題ないだろうが、そうでない音楽ファンのなかには「インストゥルメンタルってなに? どう聴けばいいの?」という方もいらっしゃるかもしれない。

そういうリスナーにお答えしよう。インストゥルメンタルには歌がないわけではない、ちょっといつもより耳に集中すればいいだけだ。そうするといままで聴いたことのない「歌」が聞こえてくる。この隙間三業を例にとれば、ギターのシングルノートのうねりに、ベースの人を食ったフレーズに、空間をペイントするようなドラムに。


『kitsutsuki』は全7曲収録である。全体として、変拍子の使用など、マスロック的な印象があるのだが、その一方で、短いフレーズのリピートに、クラブミュージック的な要素も感じられ、ミニマルなものの喚起力をよく理解していることが伝わってくる。

しかしジャンルとしてはロックとしか言いようがない。なぜならスリーピース編成の作りだす荒々しいミニマルは、クラブ的トランス感を生むと同時に、感情の昂揚や飛翔感も提示してくれるからだ。

楽曲の質はどれも高い。渾身の7曲から少し具体的に紹介しておこう。3曲目の「hayate」はこのアルバムでは一番マスロック的だろうか。4分の3拍子に時折4分の4が混じる構成であるが、それにもかかわらず素晴らしいスピード感である4曲目の「asagiri」はポリリズムが心地よい。5曲目の「amefurashi」は、胸をつくイントロで一気に持っていかれる。これは大音量で聴きたい。ブレイクビーツ的な処理やダイアトニックなコード進行が、ぐいぐいと心の奧の襞や入江に食いこんでくる。6曲目「先陣を切る」のベースのメロディーの非凡さ、薄く追いかけるギターの美しさ。7曲目「kitsutsuki」のミニマルの原始的情念。

隙間三業にはスケールの大きさがあって、何重にも新しい。そしてまだ道のないところに立っている。行け行け隙間三業、きみたちが足を下ろすところがそのまま道になっていくだろう。

西崎憲:作家・dog and me records 主宰


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