【ロングレポート】未来に繋がる<FUJI ROCK '18>
この初の試みに関してまず頭に浮かんだのが、今年<コーチェラ・フェスティバル>がYouTubeでライブ配信された際に日本でもビヨンセのパフォーマンスに多くの人が熱狂した現象と、フェス文化を日本にもたらした先駆者であるフジロックのパイオニア精神だ。今回は行きたくても行くことができなかった人、参加に二の足を踏んできた人にとっても配信を目にすれば、2018年のフジロックに触れた、という意識を少なからずもたらすことができるだろうし、それはもちろんフジロックのさらなる浸透につながる。これだけ音楽フェスが乱立しているなかで、やはりフェス(本来的な意味での“祭り”)とは、当事者意識をいかに多くの人々にもたらすことができるか?という命題がキーになってくるはずだ。
そのため、YouTubeでの配信によって来場者が減る可能性も頭をよぎるが、「未参加者がフジロックに興味をもつ機会になったら」「フジロックやその出演者、特に邦楽アーティストを世界に紹介したい」という思いが主催者側にはあったようで、未来に投資できるこのフェスの精神性を垣間見たような気がする。ちなみに、配信の合間に流れていたハライチ岩井が歌うソフトバンクの動画「気がしれない FUJIROCK2018」は、お茶の間とフジロックの架け橋になったかもしれない(?)。さらには、「ライブ配信を観て、くやしい想いをした人々が翌年来場してくれることに期待している」という主催者サイドの意図からは、いかに自らがフジロックに自信をもって運営しているかを理解できる(参考:ハフポスト日本版「フジロックは、なぜYouTubeでの世界同時配信を決めたのか。『若干の懸念はありますが…』」)。
今年度は、サカナクション、Suchmos、マキシマム ザ ホルモン、エレファントカシマシ、The Birthday、MONGOL800、GLIM SPANKY、浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS、cero、小袋成彬、eastern youth、MISIA、D.A.N.といった、邦楽シーンを牽引してきた/牽引していくであろうアーティストのライブが世界に配信された。邦楽アーティストにとっても、あまたある音楽フェスの中でフジロック・フェスティバルへの出演は特別だという声を多く聞くが、YouTube生配信によって今後さらにフジロック出演に対する意欲は高まりそうだ。それとともに、「世界で聴かれる」という意識が邦楽シーンを活性化させることも楽しみである。洋楽勢では、N.E.R.D、スクリレックス、オデッザ、アンダーソン・パーク、チャーチズ、ジャック・ジョンソンらも配信されていたが、バスクのバンド、エスネ・ベルーサのようなフジロックならではの世界の音楽に心奪われるのも面白い。来年以降もこのYouTubeライブ配信はおこなわれるのか、配信アーティストを増加させるのか等はまだ不明だが、ぜひ続けて欲しい取り組みだ。荒れていたチャットの書き込みが悪影響をおよばさないことを願う。
▲サカナクション
▲マキシマム ザ ホルモン
▲cero
▲ジャック・ジョンソン
だが、ライブ配信されないステージにこそフジロックの精神が宿る、という見方も十分できると思う。ヘブンのさらに奥地へと進めば、フジロックの最果ての地である「カフェ・ド・パリ」で加藤登紀子の絶唱を今年も吸収し気高さと活力を受け取ることができたし、ホワイトとヘブンの間に位置するオーガニックなステージ「ジプシー・アバロン」では、折坂悠太という新しい才能と出会った。緊張が見え隠れしながらも、「やってるかー!」という挨拶をかましてくれた粋な態度も頼もしかった。宝物のような出会い。また、2日目の夜23時近く、結構な暴風のなか「ピラミッド・ガーデン」で観たタップダンサー・熊谷和徳も興味深いアクトであり、ヴォーカル/パーカッションとのセッションは情熱的なコミュニケーションと受け取った。
▲夜のピラミッドガーデン
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FUJI ROCK FESTIVAL
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