【インタビュー】MONO、これが世界基準・世界の実状

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MONO。1999年に東京で結成された、1年のうち半分以上の時間を海外で音を鳴らすインストゥルメンタル・ロック・バンドである。この唯一無二の美しい音を鳴らす集合体は、世界のロックミュージックファンに最も知られている日本のバンドと言っても過言ではない。その証拠に、世界最高峰の音楽フェスティバル<モントルー・ジャズ・フェスティバル>や<オール・トゥモロウズ・パーティ>等、名だたるフェスからオファーを受けての出演実績を持つ、数少ない日本人のライブバンドであり、これまでに約60カ国でライブを開催してきた。

しかし、2017年末に結成当時からのメンバーだったドラムのTakadaが脱退。ファンを心配させたのも束の間、その数ヶ月後の今春には、ザ・キュアーのギタリスト、ロバート・スミスがキュレーターを務める25年の歴史を誇る音楽フェスティバル<Meltdown>(開催地:イギリス・ロンドン)に、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ナイン・インチ・ネイルズ、モグワイ、デフトーンズ等と共にヘッドライナーとして出演するというニュースが世界を駆け抜けた。

そうした快挙がどのようにして成し遂げられたのかを探るべく、MONOのリーダーでありギタリストであるTakaakira 'Taka' Gotoに話を訊いた。


──お帰りなさい。さっそくですが、6月22日に出演された<Meltdown>はいかがでしたか?

Takaakira 'Taka' Goto:最高だったね。若い頃からのヒーローに呼ばれて、演奏してさ。いくつかの会場を使って同時にライブをやっているフェスだったんだけど、俺らのショーも完売だったしね。それに去年はゴタゴタがあって、あの日は新生したMONOの最初のスタートだったし、時間としても1時間45分くらいのワンマン・ショーだったし、フルセットで新しいドラマーとやると決めていた場だったから、セットの半分は新曲をやったんだよ。お客さんには少し戸惑いもあるかなと思ったけど、俺たちとしては新しいチャプターのチャレンジでしかないから…死んでねえよって。リスクもあったけど、結果的にはやって良かったなって思ってる。

──新しいドラマーとは、先日のリキッドルーム公演で叩いていた人ですか?

Takaakira 'Taka' Goto:そう。彼はアメリカ人で、ニューヨークに住んでるから、日本でリハやってから上海、台湾、その後にロンドンへ行って、やっとキチッとしたスタートができたっていう感じだよ。彼の正式なアナウンスは9月に予定しているよ。




──<Meltdown>は、いつ、どのようにオファーが来たのでしょうか。

Takaakira 'Taka' Goto:(MONOの)ヨーロッパのエージェントに、ロバート・スミスから直接オファーがあってね。今年に入ってからだったかな。

──直接ですか?

Takaakira 'Taka' Goto:そうなんだよ。オファーの段階から、ロバートには彼自身が観たいと思うMONOのショーへのアイディアが明確にあって、アイスランドのバンドのムームを前座にして、MONOのショーにストリングスを入れてやったらいいんじゃないかって言ってくれた。俺もムームとやるならこういうことがやりたいなって考えたりして、音楽的なアイディアがたくさんあって。ムーム側も「ぜひやりたい」って言ってくれていたんだけど、うまくいかないことがあったみたいでその話はなくなっちゃったりもしたんだけどね。

──ステージはどうでしたか?

Takaakira 'Taka' Goto:すごい楽しかったよ。すべての出演者が年上の先輩バンドで、その人たちがあれだけオルタナやってて、あれだけお客を呼んでさ。まだまだ先へ行けるんだなって、そう思えたよ。日本じゃあり得ないことだけど、ナイン・インチ・ネイルズやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインとか、自分の好きなバンドたちが自分たちよりも先にいることが嬉しいっていうか、追いつく側の方がいいからね。「ああ、こうなれるんだな」って夢があるし、目標にできる。

──未来を重ねて見れる?

Takaakira 'Taka' Goto:そうだね。彼等を観ていたら、何が自分に足りなくて、何にワクワクできるのかとか、日本では感じることができないものを感じた。キャリア20年のバンドになるのにワクワクする余地がまだ残っているって、ほんとにすごいことだよ。ロバート・スミスのセンスの良さには本当にビックリだったね。

──そうそうたる顔ぶれでしたもんね。Twitterを見ていたら、「NINとかぶった!ふざけんな!でも、MONOを選んだ俺、最高」と泣きの絵文字入りの英語のつぶやきがありました。

Takaakira 'Taka' Goto:それは嬉しいね。

──現地ではロバート・スミスと会いましたか?

Takaakira 'Taka' Goto:会えるかなって思ってたんだけど「会えないです、ごめん」とスタッフを通して言われて。あの日は隣り(の会場)がナイン・インチ・ネイルズで、同じ時間帯にぶつけられてたし、他のバンドもほとんど見れなかった。翌日のマイ・ブラッディ・ヴァレンタインは見せてもらったんだけど。でも昨日、ロバートからメール来たんだよ。メルトダウン終わった時にロバートに花を送ったら、ブッキングエージェントを通じてMONO宛に手紙をもらったんだけど、そこにアドレスがあったから御礼のメールをしたら返事がすぐに来て、10月のイギリス公演には見に行きたいって言ってくれてたから近々会えるかもね。それにしてもひとつひとつのバンドに手紙を書くなんてすごいよね。

──ホストであり、ミュージシャンであり。

Takaakira 'Taka' Goto:こういう繋がりが嬉しい。マネージャーを通して「適当に御礼しといて」っていうのじゃなくて、当たり前のことを当たり前にできる人なんだなって思った。

──今回のように、ロバート・スミスに呼ばれて<Meltdown>で演奏するということは重大なことですし、他の出演ヘッドライナーは、<フジロック>や<サマソニ>のヘッドライナーと変わりません。同じ日本人として誇らしく思います。

Takaakira 'Taka' Goto:そうね。そういうところで闘っているというか…ありがたいよ。俺たちはマネジメントも自分たちでやっているし、日本ではレーベルもないから日本のメディアにはあまり載らないんだけど、世界には今回のフェスのように、居心地のいい信じられる世界があるからね。それは俺がフロントで体験している実在の世界だから。

──以前から、ザ・キュアーまたはロバート・スミスとの接点はあったんですか?

Takaakira 'Taka' Goto:19歳の俺は、キュアーみたいに髪立ててああいう格好してたよ。多くの日本のバンドの場合、その髪型とメイクだけが残って日本風な曲へと変わっちゃってキュアーの世界感からは断絶してしまったように見える。でも俺らの場合はキュアーが好きっていうのは残りつつも、自分の道を辿っていたらロバート・スミスに呼ばれた。だから間違ってなかったなって。外タレへの憧れと自分なりのものを表現することは違うじゃない?

──物真似で終わることなく、憧れや受けた衝撃、刺激を自分の血肉に変えてものにできるMONOだから言える言葉であり実績ですね。なぜそうなれたのでしょうか?

Takaakira 'Taka' Goto:世界を旅して自分の目でいろんなものを見たからだと思うよ。自分のハートで感じて、匂い嗅いで、何が自分にできるだろうって。日本にずっと居たら、キュアーのコピーみたいなことになっていたかもしれない。マイブラのここが格好いいからこういう曲やってみようとかね。そういうバンドは多いけど、それだとマイブラからは誘われないよね、絶対に。それじゃ世界では闘えない。そんなバンドは自国にだっていっぱいいるんだから、わざわざアメリカやイギリスに影響を受けたアジアのバンドを輸入してまでって思うじゃない。



──世界で勝負するために必要なことは何だと思いますか?

Takaakira 'Taka' Goto:イギリスにないもの、アメリカにないもの、世界にないものを求められている。世界で誰もやっていないこと、この人が死んだら替えが効かないっていうのが俺らが生きている証。MONOの場合は曲を書いてバンドのメンバーと形にしていくんだけど、楽曲を誰かに気に入ってもらうために書いているわけじゃないんだ。ただ、自分たちが信じられるまで納得がいって嘘がなくて、自分たちが表現するものはこれしかないっていう域にまで研ぎ澄まさせてきたらここまで来れたっていうのはあるね。本物の音楽を追究したい、本物の音楽と共に生きていたいと思っているし、本物の音楽の道は世界にはきちんとある。それがメルトダウンみたいなイベントでパッケージされていたりすると、まだまだ夢が広がるなって思う。だけど日本の土壌だと、やりたいことをやろうとしても、ライブやる場合にはノルマがいくらで、お客さんは20人しか入らなくて、結局音楽では食べていけない。クリエイティブなことやオリジナルでいること、自分自身を表現することがとても難しい。そういう環境から変えていかないと、世界をあっと言わせるような新しい独自の音楽なんて生まれるはずがない。

──そうした世界と日本の音楽業界のズレを問題提起してコンセプトに据えた<After Hours>をMONOがやる意味は大きいと思います。

Takaakira 'Taka' Goto:若いバンドに伝えたいことや変えたいシステムがあるからね。グローバルなシステムで音楽をやっていかないと、絶対ダメじゃない? だって、おかしいじゃない、慣習とかさ、何十年も世界から遅れている。実際に大きなマネジメントがなくたって世界には出て行けるし、あくまでも実力勝負なんだ。10年以上前の話なんだけど、ヨーロッパのレーベルのオーナーが僕に言ってくれた忘れられないセリフがある。「素晴らしいアーティストは世界がほっておかない」。俺たちはアフター・アワーズを通じて、日本の古く保守的な音楽業界の概念や体制を変えたいと思っているんだ。日本にも素晴らしいアーティストやバンドがいるからね。



──<After Hours>のお客さんのように、他力で売れている音楽に面白みを感じない人たちも増えてきていますし、上海、台湾でも開催して、海外ファンも獲得していますよね。

Takaakira 'Taka' Goto:これはギターのYodaの言葉なんだけど、「結局、俺たち以上に世界のリアルな音楽シーンを知っている人が日本にいない。1億2千万人もいて、誰一人やり方を知らない。だからしょうがないですよね」って。少し傲慢な発言に聞こえるかもしれないんだけど、実際のところがそうなんだ。例えば、日本で売れているバンドが世界でやりたいからといって大手のレーベルと契約しても、結果的にデジタル配信リリースをするだけ。巨額の無駄なお金を海外に支払って海外公演を無理やりやって、蓋を開けてみれば日本から来たファンでなんとか会場は埋まっているだけなのに、海外で認められたというニュースを流す。何十年経っても同じことをやり続けてる。そんなことをやっていても世界の扉は開けられるはずがない。

──昨今、日本の音楽文化という捉え方で開催されるフェスもありますが、それとはまた意味が異なりますよね。

Takaakira 'Taka' Goto:エンターテイメントとは違うからね。日本のエンタメを世界に売ることと、俺たちがやろうとしていることは別物だから。例えば、俺が武士で“俺流”っていう切り方を持ったなら、どっちが強くて素晴らしいのか、世界中の人と闘ってみたい。その点、サッカーならW杯とか分かりやすいんだけど、音楽に関しては、世界で実際に起きているリアルなことは日本にいる人にはわかりにくいとは思う。

──ロンドンのカムデンで超満員のMONOのショーを観たとき、「MONO!」とバンド名を熱狂して叫ぶ外国人の群れる光景を目の当たりにして、世界基準・世界の実状とはこういうことなんだなと衝撃を受けました。あれからニュースを見る目も変わりました。あの日の後藤さんは屈強な外国人1000人以上を相手にする侍のようでしたよ。

Takaakira 'Taka' Goto:ああいうファンがいてくれるのがありがたいね。

──MONOのライブの特異性で言うならば、2009年のNYでのオーケストラ共演と今回の<Meltdown>は観たかったファンが多いと思います。

Takaakira 'Taka' Goto:NYでは俺も初めてオーケストラとの共演だったから、どのくらいの音量でやったらいいか分からないし、どうなるのかわかんなくて気がついたら楽しめずに終わってしまった。だから、メルトダウンでは意識的に終始楽しんでやれたから良かったね。あのNYの時のように駆け抜けて終わりじゃなくて、「これは人生の貴重な瞬間を過ごしているに違いない」と感じながら過ごすのは気持ちよかったし、光栄だなって思いながら過ごせたよ。メンバーとも話したんだけど、キュアーからオファーが来るとか、こういうことが起こるものなんだなって。でもね、オーケストラとはまたやるよ。

──それは朗報ですね。さて、今後の予定は?

Takaakira 'Taka' Goto:8月はイギリスで行われる<ArcTanGent Festival>にソロプロジェクト "Behind the Shadow Drops”として出演するよ。MONOは9月にインドのフェスに出演した後に、そのままロシアやギリシャを含めたヨーロッパツアーを1ヶ月間行う。新しいアルバムは来年の頭にリリース予定だよ。その後は2020年まで、またワールド・ツアーだね。来年はバンド結成20周年だから、スペシャルな計画もあるよ。とても楽しみにしている。

──日本でのライブは?

Takaakira 'Taka' Goto:来年、新しいアルバムをリリースした後にワールド・プレミアとして、まず東京公演をやろうと計画しているよ。あとアフター・アワーズも来年は東京で再び開催したいと、共にオーガナイズしているノブくん (envy)とロビン(downy)と話し合っているところだよ。

──日本のスケジュールが恐ろしく少ないですね。間は海外でいっぱいあるんでしょうけど(笑)。

Takaakira 'Taka' Goto:そうなんだよね(笑)。この後でまた、スティーヴ(・アルビニ)とレコーディングだからシカゴへ行くんだよ。

──それはアルバム『Requiem For Hell』(2016)に続き、次作もスティーヴ・アルビニをプロデューサーに招くということですか?

Takaakira 'Taka' Goto:そう。スティーヴとはもう17年の付き合いになる友人であり、世界で最も尊敬できる人でもある。すっごい深いところで繋がっていて、いつも「この人がいてよかったな」って音楽的にも精神的にも助けられるし、「この人と出会えて、俺は本当に幸運だな」って思える人なんだ。

──人としてですか? それとも音楽制作的に?

Takaakira 'Taka' Goto:全部だね。あんな人がいてよかった。まだまだベイビーだなって言われるけどね。まあ、確かにそうなんだけど。

──どんな人ですか?


Takaakira 'Taka' Goto:一言で言うと天才だよね、エンジニアとしてもプロヂューサーとしてもアーティストとしても、本物の音楽が何かを知っている人。とてもクールな人だよ。以前、シェラックの22年ぶりだっかな? 日本ツアーを一緒にやったんだけど、いつかアフター・アワーズにも出演して欲しいなと思っているんだ。フガジとか、スリント、ニューロシスとかと一緒に来てくれれば最高だね。

──それは意味合い的にも面白くなりますね。

Takaakira 'Taka' Goto:日本でアフター・アワーズをもう一回やるんだったら、俺もリクエストが結構あってさ。でも俺が呼びたいバンドは、日本では集客が厳しい伝説があるからわかんないけどね(笑)。

取材・文=早乙女‘dorami’ゆうこ
写真=Yoko Hiramatsu(Meltdown、London風景)

MONO

Takaakira 'Taka' Goto (Guitar)
Tamaki (Bass, Piano)
Yoda (Guitar)

1999年結成、東京出身4人組インストゥルメンタル・ロック・バンド。オーケストラとシューゲーズギターノイズを合わせた、オリジナルな楽曲スタイルが非常に高い評価を受け、もはやロックミュージックの域では収まらない音楽性を発揮し、イギリスの音楽誌NMEでは"This Is Music For The Gods__神の音楽"と賞賛される。ライブにおいても23名のオーケストラを従えた編成でのスペシャルショウをニューヨーク・東京・ロンドン・メルボルンで2009年に行った。

毎年およそ150本におよぶワールド・ツアーはこれまでに約60カ国以上に渡り、日本人バンドとして世界で最も多くのオーディエンスを獲得したバンドの1つともなっており、ロックミュージックの中では評論家、ファンから世界最高のライブバンドの一つと名声を受けている。

NYでのオーケストラとのライブアルバムを含め10枚のアルバムをリリースし、国内外でも高い評価を獲得し続けた中2015年には、コラボレーション作成した短編映画「Where We Begin」でカルフォルニアの国際的なフィルムフェスティバルIdyllwild International Festival of Cinemaからベストミュージカルスコア賞"The Marshall Hawkins Awards: Best Musical Score - Featurette"を受賞。

2016年3月にニュー・アルバムをプロデューサーに旧友Steve Albiniを迎え、シカゴのElectrical Audioにてレコーディング。9作目となる『Requiem For Hell』2016年10月14日リリース。

2018年6月、The Cureのロバート・スミスのキュレーションでロンドンで開催される<Meltdown Festival>にMy Bloody Valentine, Nine Inch Nails, Mogwai, Deftones等と共にヘッドライナーとして出演。

2019年、10枚目となるニュー・アルバムをリリース予定。

◆MONOオフィシャルサイト
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