【インタビュー】DORO、「オールドスクールのやり方でやりたい」と言い続けた

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ジャーマン・メタルの女王、ドロ・ペッシュは、1980年代の初期からヘヴィ・メタルの旗を誇らしげに振り続けている。40年近くの間に彼女は幾つかのバンドのフロントを務め、世界中を幾度となくツアーして廻り数多くのアルバムとその他の形態の作品をリリースしてきた。

◆ドロ・ペッシュ映像&画像

彼女はその間ずっとあまりにも忙しく過ごしてきたために、子供を持つ時間もいわゆる普通の家庭を築く時間も持てなかった。彼女にある時間はヘヴィ・メタルのために使う時間だけなのだ。もちろんドロは全く後悔していない。この音楽のスタイルは、これまでも、そしてこれからも最後の瞬間まで彼女の人生で最も重要なものなのだ。

ドロの最新アルバムである2枚組『FOREVER WARRIORS, FOREVER UNITED』は、そのタイトルで既に示されているものを全て明らかにしている。そう、ドロが現役でいる限りへヴィ・メタルも活き活きと存在し続けるのだ。


――あなたの最初のバンドはSNAKEBITEという名前でした。そしてその後WARLOCKを結成しました。当時の良い思い出話はありますか?

ドロ・ペッシュ:たくさんあるわ。ハイライトになった出来事のひとつは、オランダのプロモーターから連絡をもらったこと。彼から「アメリカから来る前途有望な新しいバンドとショーをやらないか?」と訊かれて、私達の答えは「いいじゃないか。凄く良い話に思える。やろう!」というものだった。その夜、ツヴァーグヴェステインデという小さな町に数百人が集まり素晴らしい雰囲気だった。ファンは熱狂して、ヘッドバンギングをしたりステージダイヴィングをしたりしていた。自分達のセットを終えると、私達は「そのアメリカのバンドとやらも観てみよう」ということになったの。実はそのバンドとはMETALLICAだったわ。そして、それが、彼らがヨーロッパで最初にやったショーだった。1980年代初期は本当に魔法のように素晴らしい時代だったわ。

――あなたの新しいアルバムは『FOREVER WARRIORS, FOREVER UNITED』というタイトルで、何と2枚組です。今回の曲作りにおいても、プレッシャーも苦労も一切無縁だったようですね。

ドロ・ペッシュ:全くなかった。すべては2016年に30周年記念の3枚組DVD『STRONG AND PROUD』をリリースした時から始まったの。あれは素晴らしいリリースだった。とても満足したわ。その後、レミーが亡くなって、物凄く悲しい出来事ではあったけれど、そのことが私に沢山のエネルギーを与えてくれて前に進ませてくれたのよ。自分の中で炎が燃えているのを感じたわ。そして、「今、レミーのために新しい音楽を書かなくてはいけない。言い訳なんかしている暇はない」と思っていた。その後、新しい曲がどんどん出てきたわ。そして少し経つと、35曲から40曲ほどの素晴らしいへヴィ・メタル曲を書き終えていた。でも、その直後、少し不幸な気分になったの。25曲ぐらいを外さないといけない、新しいアルバムのために10曲から15曲ぐらいを選ばなくてはいけないと思ったからよ。

──それは辛い作業ですね。

ドロ・ペッシュ:そこでしばらくの間じっくり解決策を考えて、レコード・レーベルのNuclear Blastに「2枚組のアルバムをリリースしたい。新しい曲のどれも外したくないから」と伝えたの。彼らは、最初は何となく疑っている感じだった。レーベルの人達は「今のこの時代に、誰もそんなことはやらない。今はシングルしかリリースしないアーティストだって大勢いるくらいだし」と言って私を説得しようとした。でも、私はNuclear Blastに「オールドスクールのやり方でやりたい」と言い続けた。そして最終的に「わかったわかった。2枚組を出そう。問題ない」という返事をくれたわ(笑)。

──素晴らしい。

ドロ・ペッシュ:まさにそれが、私がNuclear Blastが大好きな理由よ。彼らが考えているのはビジネスのことだけじゃない。以前、メジャー・レーベルと契約していた頃、レコード会社で働いている人達はいつも私に「もっとラジオ向きのヒット・シングルを書かなくてはいけない」とか何とかあれこれ言ってきていて、それが私にとってはいつも凄く大きなプレッシャーになっていた。今は、自分が書きたい音楽を書きたいとおりに書けるという完全な自由が私にはある。もちろん最近だっていくらかのプレッシャーは感じているわ。でも、それは良いプレッシャーよ。私はただ自分が完全に満足を覚えられる、とても良い曲を書きたいだけだから。

――新しいアルバムの歌詞について、話していただけることはありますか?


ドロ・ペッシュ:歌詞は非常に幅広いものになっているわ。まず、ビデオ・トラックになっている「All For Metal」だけど、ゲストが大勢参加しているわ。例えばミレ(KREATOR)、ヨハン・ヘッグ(AMON AMARTH)、チャック・ビリー(TESTAMENT)、ジェフ・ウォーターズ(ANNIHILATOR)、SABATONのみんな、そしてロス・ザ・ボス(元MANOWAR)といった人達がこの曲に参加しているの。この音楽の炎をずっと燃やし続けようという歌詞で素晴らしいヘヴィ・メタル・アンセムになっている。「Bastardos」も少しとそれと繋がっている。こっちは南米の私のクレイジーなファンの皆のことを歌った曲だから。

──政治的なものもありますね。

ドロ・ペッシュ:例えば「Resistance」がそうで、これはこの前のアメリカの大統領選挙が行なわれていた時に書いたものよ。世界中が混乱していると感じたの。その歌詞で私が実際に言っているのは、“良い者達”は団結しなくてはいけない、そして正しい価値観と良いことのために戦わなくてはいけないということ。悪い奴らに支配させるわけにはいかない。もちろん、ちっともシリアスではない歌詞もあるわよ。「Turn It Up」がそうで、これはただの愉快なロック・ソング。深い意味なんて全くない。それと似た感じで、「Blood, Sweat And Rock 'N' Roll」も、私のバンドのギタリストがショーの後にバックステージで頭を酷くぶつけてしまって、そこら中が血と汗まみれになったのがきっかけで生まれたの。そういうのって、絶対曲にするわよね。

――ヘヴィ・メタルはこれまでも、そして今も、男性中心の世界ですが、それが理由で苦労した経験はありますか?

ドロ・ペッシュ:いいえ、特にないわ。私はいつもその場に相応しいユーモアのセンスを忘れないでやってきたから…。例えばこんなことがあったわね。1986年にキャッスル・ドニントンでの『MONSTERS OF ROCK FESTIVAL』にWARLOCKとして出た時、ステージ衣装の着替えを手伝ってくれる人が必要だった。私にはパーソナル・アシスタントが着いていなかったから。それでスタッフの中に手伝ってくれる女性がいないか探したの。でも、1人もいなかった。バックステージには500人ぐらいいたはずなのに全員が男性だったのよ(笑)。最近はその頃とは全く違っている。メタル・フェスティヴァルのバックステージに行っても女性が大勢いるわ。アーティスト、マネージャー、ツアー・マネージャー、アシスタントと様々な女性達がね。私は同僚の女性達が大好きよ。ARCH ENEMYのアリッサ(ホワイト=グルーズ)、元NIGHTWISHのシンガーのターヤ(トゥルネン)、今のNIGHTWISHのシンガーのフロール(ヤンセン)、BATTLE BEASTのノーラ(ロウヒモ)、HALESTORMのリジー(ヘイル)といったように、リストはとても長くなっている。みんなラヴリーな人達であり素晴らしいシンガー達よ。実は、古くからの友人であるリタ・フォードにも数週間前に会ったばかりなの。そして、また一緒に仕事をしようという話をした。私とリタが一緒の写真を投稿したんだけど、インターネットが爆発寸前になったのよ。コメントを残してくれた人達は全員が「何か一緒にやるべきだ」と書いていた。いつか彼女と何かをやるかもしれないわ。

――今後の予定はどうなっていますか?

ドロ・ペッシュ:その答えは既に知っているわよね(笑)。これから数ヵ月間、猛烈にツアーをする。そして日本まで行けたら凄く嬉しいと思っている。数えられないほど多くのショーをやった後、また次のアルバムをリリースする。このサイクルが、私が死ぬまで続くことになるわ。

取材・文:ティモ・イソアホ
写真:Tim Tronckoe, David Havlena


DORO『フォーエヴァー・ウォリアーズ, フォーエヴァー・ユナイテッド』

2018年8月17日 世界同時発売予定
【50セット限定直筆サインカード付き2枚組CD】 WRDZZ-771 / ¥4,000+税
【2枚組CD】 GQCS-90615~6 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
[DISC 1]
1.オール・フォー・メタル
2.バスタルドス
3.イフ・アイ・キャント・ハヴ・ユー - ノー・ワン・ウィル(feat.ヨハン・ヘッグ)
4.ソルジャー・オブ・メタル
5.ターン・イット・アップ
6.ブラッド、スウェット・アンド・ロックンロール
7.ドント・ブレーク・マイ・ハート・アゲイン
8.ラヴズ・ゴーン・トゥ・ヘル
9.フロインデ・フュアス・レーベン
10.バックステージ・トゥ・ヘヴン(feat.ヘルゲ・シュナイダー)
《ボーナストラック》
11.ビー・ストロング
12.ブラック・バラッド
13.ブリング・マイ・ヒーロー・バック・ホーム・アゲイン
[DISC 2]
1.レジスタンス
2.リフト・ミー・アップ
3.ハートブロークン(feat.ダグ・アルドリッチ)
4.イット・カッツ・ソー・ディープ
5.ラヴ・イズ・ア・シン
6.リヴィング・リフト・トゥ・ザ・フレスト
7.1000イヤーズ
8.ファイト・スルー・ザ・ファイア
9.ロスト・イン・ジ・オゾン
《ボーナストラック》
10.カルーソ
11.トラ・コモ・エ・カリオバラム(インストゥルメンタル)
12.メタル・イズ・マイ・アルコール

【メンバー】
ドロ・ペッシュ(ヴォーカル)
ルカ・プリンシオッタ(ギター)
バス・マース(ギター)
ニック・ダグラス(ベース)
ジョニー・ディー(ドラム)

◆DOROオフィシャルサイト
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