【インタビュー】androp、温かみや繊細さに溢れたバラード・チューン「Hikari」

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andropのニュー・シングル「Hikari」が、8月29日にリリースされた。フジテレビ系TVドラマ『グッド・ドクター』の主題歌となるタイトル曲は、温かみや繊細さに溢れたバラード・チューンであると同時に、andropの新たな魅力を味わえる1曲に仕上がっている。彼らが「Hikari」に込めた思いや、同曲が完成するまでの間にあった様々なドラマ、カップリング曲が持つ意味合いなどについてメンバー4人が大いに語ってくれたインタビューを、お届けしよう。

■『グッド・ドクター』は必ずいいものになると思っていたから
■曲もいいと思ってもらえるまでやり遂げるという約束をしたんです


――新曲の「Hikari」はTVドラマ『グッド・ドクター』の主題歌です。ドラマサイドからリクエストなどはありましたか?

内澤崇仁(以下、内澤):一番最初の打ち合わせのときは、『グッド・ドクター』は木曜日の22時から放送されるドラマなので、一週間の残り1日の金曜日を乗り越えようという気持ちになれるような曲にしてほしいと言われました。

――それは、結構難しい注文じゃないですか?

内澤:そうなんですよ(笑)。それと、『グッド・ドクター』は医療ドラマで人の生死を描くドラマなので、毎回ハッピーな感じで終わるわけではなくて、すごく悲しい終わり方になる回もあるらしい。なので、基本的にはミディアム・テンポのバラードなんだけど、悲しいシーンではそれを崩してスローなバラードのバージョンにしたいから、それに対応できるものにしてほしいと。あと、andropは結構エレクトロな部分もあるんですけど、今回はそうではなくて、人間の温かみを感じるような部分を出してほしいというリクエストもあって、「だから、ピアノが合うと思うんだよね」という話もされました。

――具体的かつ難易度の高い要求がきましたね。

内澤:曲作りは大変でした。今年の4月くらいからデモを作り始めて、5月の前半に2回目の打ち合わせがあって、そのときにデモを持って行ったんです。今回の曲は歌詞も重要になるなと思ったし、細かいディテールも聴いてほしかったので、メロディーとコードだけではなくて全部の楽器を入れて、歌詞も乗せた状態のデモを4曲くらい作ったんです。それを会議室で聴いてもらったら、ドラマのプロデューサーに、「すごくいい曲だけど、これらの曲は僕がイメージしているドラマとは仲良くなれないな」と言われたんです。そこからが本当のスタートになりました。


――4曲持っていって、全部違うと言われたら心が折れてしまう人もいるかと思いますが、むしろやってやると思われたんですね。

内澤:やる気満々になりました。『グッド・ドクター』は、韓国ドラマが原作で。韓国のドラマはすごくいい作品で、日本版も必ずいいものになるなと思っていたので、それに携われるなら楽曲も本当にいいものにしたいという想いが強かった。だから、打ち合わせの場でプロデューサーを始めとして、ドラマに関わっている人みんなにいいと思ってもらえるものができるまで僕らはやり遂げるという約束をしたんです。そこから毎週デモを作って聴いてもらうというやり取りが始まって、ドラマが始まるのが7月の2週目だったんですけど、曲の最終形ができたのが7月に入ってからだったんです。それまで、ひたすら曲を作り続けていました。

前田恭介(以下、前田):ドラマサイドとやり取りをするにあたって、内澤君は僕らにもデモを送ってくれていたんですけど、結構な曲数になっていました。一体、何曲あったんだろう?

内澤:何曲あったんだろうね。わからないけど、アルバムが1枚できるくらいは確実にあったと思います。毎回具体的なデモを作ったし、メンバーみんなは曲が決まったらすぐにレコーディングできるように待機していたんです。

――粘り強さを発揮されましたね。そうやって「Hikari」ができあがって、レコーディングするにあたって、デモをもとにして皆さんでアレンジされたのでしょうか?

佐藤拓也(以下、佐藤):いえ、内澤君が作ったデモを、ほぼそのまま再現しました。デモの完成度が高かったこともあって、このまま形にしようということになったんです。レコーディングするにあたって思っていたのは、ドラマのプロデューサーもすごく熱い気持ちで僕らの曲を聴いてくれているからこそ時間がかかったというのがあって。ドラマ側にしてみれば、これでいいと言えば先に進めるところを、もっといいものができるはずだと僕らのことを信頼してギリギリまで粘ってくれたんですよね。その期待に応えるために内澤君も何度も何度も曲を作っていて、すごく想いが入っていることがわかっていたので、それを楽曲に落とし込むにあたって、僕のギターで濁らせてはいけないなというのがあって。内澤君の想いがストレートに届くような演奏をしようという気持ちでレコーディングに臨みました。


▲内澤崇仁

――楽曲重視のスタンスで楽曲の繊細さを深めているギター・ワークが光っています。

佐藤:「Hikari」は本当に歌とメロディーと歌詞が一番映える形ということだけを意識したギターになっています。それこそ、2番の歌中はギターが入っていないんですよ。そういうことも気にならない……というか、むしろ前向きな気持ちで、2番は弾かなくていいだろうと思いましたね。ギターの見せ場がないから、ギター・ソロを弾かせてほしいというようなことも全く考えなかったです。

――さすがです。それに、ギターの音作りを入念に行ったことを感じました。ゲイン感の設定が絶妙ですよね。

佐藤:この曲はストリングスも入っているし、ピアノも入っているので音数が多い。そこでギターも厚みのある音を鳴らすと、壁になってしまうんです。なので、歌や他の楽器がクリアに聞こえて、なおかつギターもちゃんと聞こえる音ということを意識して音作りをしました。

前田:内澤君が曲を作っている期間が2ヶ月くらいあって、その間楽器隊の僕らは特になにもできないので、基本的に自宅待機なんですよ。そうなると、楽器の練習をするしかないんですよね。海とかに行きたいなという気持ちが湧きつつ、そういう邪念は抑え込んで練習をするという(笑)。で、さっきも話したようにドラマが7月12日に始まったんですけど、レコーディングしたのが7月に入ってからだったんです。その日に録らないと、もう間に合わないという状況でスタジオに入ったんですけど、その段階ではまだ曲がきていなかったんです。

――えっ、マジですか!?

前田:はい(笑)。朝からレコーディング・スタジオに行って、ドラムをセッティングして、ベースをセッティングして、ギターもセッティングしても曲がこなくて、とりあえず待つ…みたいな。そうしたら昼過ぎに、「曲ができました。オケはこれでいきたいです」というメールがきて。それをみんなで聴いて、そのまま録りに入るという。そんなふうに瞬発力勝負になったけど、内澤君が曲を作っている間に、どんな曲がきても対応できるようにしようと思って準備していたので問題なかったです。ベースに関しては、内澤君が考えたものをおおむね活かしつつ、そこに自分が弾いている意味を入れました。そうじゃないと、バンドでやっている意味がないから。Dメロだけは結構自分の色を入れたんですよね。デモを聴いたときにDメロはベースが埋めたほうが楽曲が映えるなと思ったんです。そういうところで面白いことをして、みんなが喜んでくれたり、カッコいいねと言ってくれるといいなと思いながらフレーズを考えました。そういうスタンスを採ることで、9年間このメンバーでやってきたものを、ちゃんと込められたかなと思います。


▲佐藤拓也

――この曲の心地好いハネは、バンドならではのものといえます。

前田:ハネ感は難しいですからね、特にこういう曲は。そこは、伊藤君がドラムを良いところに落とし込んでくれたので助かりました。

伊藤彬彦(以下、伊藤):いやいや(笑)。内澤君が作るデモは完成度が非常に高くて、いつもハネ感とかの情報もしっかり入っているんですよ。デモを聴くたびに、このままリリースすればいいのにと思う(笑)。

一同:おいおいっ!(笑)

伊藤:(笑)。それくらいしっかりしたデモを作ってくれるので、「Hikari」もデモのリズム・トラックをソロで一度聴かせてもらって、それを完全再現するところを目指しました。ただ、機械のようなドラムを狙っても、どうしても人間味は出ますよね。それくらいの塩梅が僕の中でクオリティーとして、ちょうどいいんですよ。人間味が出過ぎていると、僕の中ではクオリティーが低くなってしまうんです。いつもそういう意識で取り組むし、僕は内澤君が作るデモは僕らが得意な感じになっていると感じているんです。僕らのことを知らない人がアレンジしたものに取り組むときはどうしようかなと考える瞬間が必ずあるけど、内澤君がアレンジしたものに関してはそういうことはない。だから、「Hikari」もデモを聴いて、すぐに録りという流れになったけど、いっさい迷うことはなかったです。

――皆さん、本当にスキルが高いですね。ドラムは2番のリム・ショットが2発ずつ鳴っているように聴こえますが、ダビングされたのでしょうか?

伊藤:そこは、フラムをしているんです。普通リム打ちをするときはクローズド・リム・ショットといって、左手に持ったスティックをヘッドの上に寝かせて叩くんですけど、左手をスネアに置いているので自動的にスネアはミュートされるんですよ。その状態で、リムにスティックをかけつつ、ちょっとヘッドにも当てるという。そうすると、クローズド・リムよりも音量が出るんですね。それで、フラムをやっているんです。

内澤:それは、デモには入れていなかったんですよ。だから、伊藤君がいい装飾をしてくれたなと思いますね。

伊藤:いや、内澤君の“ここは、なにかくれ”という声が聞こえたんです(笑)。

佐藤:わかる!

前田:俺も聞こえるときがある(笑)。

内澤:そうなんだ(笑)。歌は、実はこの曲の歌は2回録っているんです。ドラマの第1話が放送されるときは、まだテレビサイズしかできていなかったので、テレビサイズ用に歌を録って。その後『グッド・ドクター』の第1話を観て、もうちょっと柔らかく歌ったほうがドラマに寄り添えるかもしれないと思ったので、フルサイズができたときに優しく歌い直しました。

――温かみに溢れた歌が、心に染みます。

内澤:ありがとうございます。歌録りは2回とも本当にスケジュールがタイトで、ギリギリまで歌詞を書いて、歌詞ができた瞬間にスタジオに向かうという状態だったんです。だから、どっちも寝てない。寝ていなくて、クタクタの状態で歌ったんです(笑)。飾ったり、とり繕ったりできるような状況ではなかったので、とにかくいい歌を録りたいという一心で歌ったことを覚えています。


――「Hikari」はピアノ・バージョンもそうですが、歌にリバーブやディレイなどがほとんどかかっていなくて、すごく生々しいというか、耳に近い仕上がりになっていますね。

内澤:そうですね、歌を近くに聴かせたかったんです。だから、マスタリングも、より歌が映えるように、トム・コインの弟子のランディー・メリルという人にお願いしました。ミックスの段階でも歌を前に出していたけど、マスタリングでさらに映えるようにしたかったんです。それは、テレビで流れるときのことを想定した部分もあった。今までの経験上、一般的なミックスでテレビで流れると、テレビの音はハイ上がりなので、こもって聴こえてしまうんですよね。ドラマだと、役者さんのセリフの後ろで、こもった曲がモゴモゴ鳴っているという状況になってしまう。なので、歌をより出すと同時に、テレビで映える帯域をちょっと持ち上げるということもしました。

――本当に納得できるものにするために、時間がない中で隅々まで心を配られたんですね。「Hikari」の歌詞についても話してもらえますか。

内澤:歌詞は、普遍的な愛でどんな人にも届くようにしたかった。だけども抽象的になり過ぎるとボヤけてしまうので、本当に普遍的な部分だけを残して、でもクッキリと輪郭があるような歌詞にしたいと思っていました。

――皆さんの話を聞くと、「Hikari」は関わった全員がプロフェッショナルだからこそ生まれた曲だということがわかります。

内澤:『グッド・ドクター』の第1話の放送があった後もドラマの制作サイドからいろいろな意見が出て、よりいいものにしていこうという熱量をすごく感じたんです。今の時代にそこまで熱いチームというのは中々いないから、きっといいドラマになるだろうなと思って。僕らの中にも、その熱意に応える曲を作りたいという強い気持ちがあって、妥協したり甘えたりする気は一切なかった。ただ、ドラマだけに寄り添うものというのは、バンドとして違うなというのもあったんですよ。自分たちは今年の12月に10周年を迎えて、今まで自分たちがやってきた音楽というものがあるし、自分たちの音楽を楽しみにしてくれている人もいる中で、自分たちがいいと思うものを、そういう人達に届けたいという想いは捨てたくなかった。だから、ドラマサイドからのオーダーとandropであるということを両立させたかったんです。

◆インタビュー(2)へ
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