【インタビュー】布袋寅泰「またケンシロウとラオウに会える」

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■兄弟のような曲に仕上がったと思います
■なによりもがっかりさせたくなかった

──少しずつヴィジョンが見え始めていますか。

布袋:そうだね。日本にいる頃は、作品を作り続けるスピードも、追い立てられるようにというか、常に締切が自分を応援してくれるところがあったんだけれど、ロンドンに移住してからは時間をゆったりと感じながら、自分の本質的なものを見つめる余裕が出てきた。だから、いい作品を作らなければいけないという気持ちはもちろんあるんだけど、あまり焦ってはいない。そこが大きいよね。あと、今年の前半に、いろんな場所で新しい空気を身体に入れることができたこともよかった。ツアーが終わって、2月からすぐにレコーディングをしていたら、また全然違う方向に向かっていたと思うから、できるべくしてできる作品になるとは思うんだけど、そこに今回のコラボレーションが飛び込んできたので、ちょっとギアを入れなおしたところはありましたね。少し封印していた熱き布袋モードに火をつける企画だったので。

──その「熱き布袋モード」が炸裂しているのが、今回リリースされる「202X」。『北斗の拳』連載35周年を記念した「202Xテーマソング」として書き下ろされた楽曲です。『北斗の拳』とは、2010年に発表された「STILL ALIVE」から8年振り、2度目のコラボになりますが、お話がきたときにどんなことを思いましたか?

布袋:「来たな!」っていう感じだったよね。またケンシロウとラオウに会えるという。それはまんざら大げさな話でもなくて、『北斗の拳』の世界と向き合うことで、自分の中でちょっと眠らせていた熱いギターのリフや、疾走感のあるビートに立ち戻れたところがあったんですよ。布袋寅泰でありながら、布袋寅泰から脱したい思いや気負いをなくしてくれたというか。特に『Paradox』がそうだったんだけど、フルスロットルなモードを少し抑えて、奥行きや深みのあるサウンドやスタイルを求めていたから、今回は久々にちょっと出ちゃったなっていう感じ。

──ハードな部分が。

布袋:そうだね。このイントロを聴くと、「あ、これは布袋だな」とみなさんが思うぐらい、いわゆる僕のシグネチャータイプの曲だと思うんですよ。ただ、「STILL ALIVE」に比べると、血管が浮き出ていないというかね。激しさはもちろんあるんだけど、聴いた後の印象を、戦いの向こう側にある清々しさみたいなものにしたいと思ってレコーディングしたので、「STILL ALIVE」とはまたちょっと表情が違う。あと、「STILL ALIVE」の歌詞では、ケンシロウの「お前はもう死んでいる」という決め台詞を持ってきたけど、今回はラオウの「我が生涯に一片の悔い無し」という名言をモチーフに、森 雪之丞さんと描いたので、対になっていますね。北斗ファンはニンマリとするような、布袋ファンには似て非なる兄弟のような曲に仕上がったと思います。

──森 雪之丞さんとは、他にどんな話し合いをされたんですか?

布袋:『北斗の拳』が描いた199Xという近未来を遥かに超えて、今は202Xを迎えようとしている。幸い核戦争は起こらなかったけれども、『スターウォーズ』や『ブレードランナー』、『マッドマックス』がそうだったように、昔のSFが描いた未来を超えて、今があるわけじゃない? この「202X」というテーマは、これから僕らが描くべき題材でもあるんですよ。今も過去も大事だけど、やっぱり表現の中では「未来」や「これから」というものは、絶対的なテーマですから。そこは次のアルバムでも向き合いたいと思っていたので、強烈なコラボレーションではあったけど、その入り口として、森さんとトーンはあわせやすかった。

▲布袋寅泰/「202X」

──『北斗の拳』とのタッグはこれで2度目になるわけですが、「第2弾」になることで生まれる縛りや苦労もあったのかなと思ったんですが。

布袋:まあ、北斗ファンは熱いですからね。海外で活動していると、僕の名刺代わりの曲は映画『キル・ビル』で使われた「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」だと思うんだけれど、いろいろ調べてみると、やっぱりアニメファンや北斗ファンは世界中にものすごくたくさんいて。場所によっては「BATTLE~」よりも「STILL ALVE」のほうが検索率が高かったり、人気があったりするんですよ。「STILL ALIVE」は北斗ファンによって世界に広まったところもあったので、そこへ目掛けてアプローチをするチャンスでもあったし、なによりもがっかりさせたくなかった。そういう意味では、初めの段階でラオウの目線にしたのは正解でしたね。次はユリアかな。

──(笑)。女性目線というのもおもしろそうですね。カップリングの「BOMBASTIC」は、豪快でグラマラスでファンキーなブラスロックになっていますが、この曲はいつ頃に制作されたんですか?

布袋:これはかなり最近ですね。ワールドワイドにアプローチするときは自分らしいスタイルでしていきたいと思っているんだけれど、僕のサウンドに欠かせないのがブラスだったりするんですよ。それはシンセでもそうなんだけど、僕のギターとブラスのリフというものは、BOØWYの「DREAMIN’」の頃から一体化しているところがあったので。それをちょっと強調したスタイルを追求したいなと思って、リフから作っていきました。

──試行錯誤の時間から、次の方向性としてひとつ浮かんできたものが「ブラス」だったということでしょうか。

布袋:そうですね。10月にユーロツアーが控えているんだけれど、ロンドンでのコンサートはブラスセクションを入れることが決定していて。イギリスには、60’sスタイルのハードロックやブルース、あとはジャズとか、昔の流れで根強いギターファンは多いんだけど、僕はいわゆるオーセンティックなギタリストではないし、僕みたいなタイプがいない故に、象徴的なスタイルをひとつ作っていかないとちょっと伝えづらいなというのは、かねがね思っていたので。ギターとブラスのダンスミュージックというのは、今後世界にアプローチしていく上でおもしろいキーワードになると思いますよ。

──ちなみに「BOMBASTIC」というタイトルはどういうところから出てきたんですか?

布袋:「BOMBASTIC」は「大仰な」という意味なんだけど、ドラムで参加してくれたフランキー・トントーが、途中に出てくる3連の派手なキメをやるたびに「ここはボンバスティックだ!」って、スタジオで何度も叫んでいたんですよ。「なんて大袈裟なキメだ!」という、その言葉がすごく気に入ってね。こけおどしではないんだけど、大袈裟なまでに誇張したギターとブラス、それに新しいリズムという意味合いではすごくマッチした言葉だったから、彼の一声からですね。

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