【インタビュー】グッド・シャーロット「このALの僕達は、若い野生馬に戻って走り回っている」

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2016年の6thアルバム『Youth Authority』から2年、グッド・シャーロットが早くもニュー・アルバム『Generation Rx』を9月14日(金)にリリースした。“処方箋世代”と冠したこのアルバムには、孤独や悩み、得体の知れない不安など、生きづらさを抱えた現代の人々が映る。深淵を覗くリアリティのある歌は、かつて彼ら自身もそうした暗闇を生き抜いてきた経験があるからこそのものだろう。『The Young and the Hopeless』(2002年)など、初期の作品を思わせる、苦痛や怒りや、問いかけに満ちていて、それをエモーショナルなメッセージや力強いアンセムとして昇華した。彼ら自身が、音楽やロックミュージックが持つ普遍的で、ポジティヴな力を信頼しているからこそ、痛みやダークな虚空をグロテスクに切り出した曲もある。あるいは大人になり、親になったからこそ見える角度から、道筋となる光を照らす曲もあるだろう。

ポップでパンキッシュな曲や、キャッチーでアンセム感のある曲で、つねにキッズの側に立つ作品を生み出し、今作もその軸足は変わらないグッド・シャーロット。友人であり、次世代のラッパーとして、また繊細なスタイルでエモキッズの心を捉えていたリル・ピープの死や、音楽シーンの若い才能が去ってしまうことが続いたことも、影響はあったかもしれないし、エモーショナルな今作の制作へと駆り立てたこともあるだろう。それくらい、彼らの思いが濃く詰まった一枚となっている。今回は、リリース直前に緊急来日したベンジー&ジョエルのマッデン兄弟に話を訊いた。

  ◆  ◆  ◆

■ あらゆる人の手元にはいつもスマートフォンがあって
■ ある意味、自分の感覚を薬でマヒさせている

── 最新作『Generation Rx』はバンドの成熟を感じさせ、且つチャレンジのある、エネルギッシュでエモーショナルな作品だと思います。前作から2年という短いスパンでのリリースですが、今作へのモチベーションはどういうものだったのでしょうか。

ベンジー・マッデン(Gt):この2年は、自分たちがなぜここにいるのか、自分たちがやってることにどんな意味があるかを問う模索の時期だったね。だから今回は、何より自分に正直に、弱さをさらけ出すようなアルバムを作ろうと思ったんだ。それに、世界で起きていることも気になっていて。だから『Generation Rx』は、僕にとっては全世界をテーマにしたアルバムなんだ。こうして世の中を見ても、あらゆる年の人──それこそ5歳児から55歳の人まで、ボロボロになっているように思えて。いつもスマートフォンが手元にあって、嫌な感情や出来事から逃れたいと思えば、こうすれば(スマートフォンを見る仕草)済むっていう。ある意味、自分の感覚を薬でマヒさせているみたいなね。そんな中だからこそ、このアルバムは「僕たちはちゃんと、自分の内面を見つめているだろうか?」という問いを突きつけている。生きていれば、心が痛むようなつらい経験は誰もが味わうもので、その痛みは決して消えることはない。つらさをごまかそうと“薬”に手を出し、ボロボロになって、逃げようとしても、痛みが消え去ることはない。つねに自分のどこかに潜んでいるからね。逃げるのではなく、痛みときちんと向き合わない限り、解放されないんだ。僕にとっては、このアルバムはそういう意味を持つものだね。

── そうなんですね。困難を生き抜いていくというテーマは、初期の作品を彷彿とさせる内容だな、と思っていましたし、今の話を聞いてよりそう感じました。

ジョエル・マッデン(Vo):そうだね。

ベンジー:めぐりめぐって戻ってきた、ってこと? 確かにそうだね。これはさっきのインタビューでも言ってたんだけど、バンドを始めたころって、僕たちはまるで野生の馬みたいだったなって思う。若いころは自意識っていうものがまったくなくて、何の裏表もなく、ただ自分を表現しているだけだった。でも世の中に出て、批判されたり、孤立したりすることが増えると、だんだんと世の中にもまれて自意識が芽生えてくる。それで最初のころにあった正直さっていうのが失われてしまうんだ。今回は若いころの、弱さもむき出しにしていた時期──「自分の思ったことをそのまま言うのは良くない、隠さないと」なんていう決まりも知らなかったころに戻ったわけだけど、これは誰もが通る道だと思うよ。ただ、アーティストである以上、僕たちはそれを、誰もが見ている前で経験することになった。辿ってきたそういう道は、今までの作品にも出ていると思う。このアルバムは、正直で弱い、初期の自分たちへの回帰なんだ。表情を隠していたマスクを脱ぎ捨てた、っていう。だから、アルバムのカバーもすごく気に入っているよ。ぱっと見、マスクのようだけど、実は一皮剥いたところにある頭蓋骨があらわになっているっていう。どんな言葉を話す人も、どこの国出身でも、人はみんな、最後には土に還り、肉体はなくなってしまうわけだからね。

▲アルバム『Generation Rx』

── さきほど「5歳から55歳まで」という話をしていましたけど、特に10代をはじめ、若い世代にはより響くメッセージになってるんじゃないかなと思うんですね。日本でも、そのくらいの世代は生きづらさを抱えている子たちもいますが、アメリカでも同様なところはあるのでしょうか?

ベンジー:もちろん。これは文化や宗教、言葉、あらゆる違いを越えて、僕たち誰もが共通して感じていることだと思うよ。若い時のつらさに違いはないからね。ただヘンな話、僕たちみんな、大人の皮を被っているだけで、中身は子どもなんだと思うんだ。子どもの部分は、いくつになっても決してなくならない。だから、14歳から16歳くらいの、人格形成期っていうのかな?

ジョエル:自分ができていく年頃だよね。

ベンジー:そうそう。そういう時期に感じたこと、刻まれたことはいつまでも残るよ。大人になると時には、そういう自分の中の子どもを守りたくなって、どこかに閉じ込めて隠してしまうこともある。でも、人は子どもの部分から離れるほど、自分らしさを失ってしまう。僕たちにもそういう時期があった。このアルバムは、自分の中の子どもにもう一度手を差し伸べて、みんなの前に出してあげようよと、みんなに呼びかけるものなんだ。自分らしさをもっと出そう、っていうことだね。

── 「Prayers」という曲では、「祈りの言葉はなんの意味も持たない」という、非常に痛烈な歌詞があるんですけど、そういう自分自身に向き合う、内面的なところを掘っていく作業は、辛いところもあるのではないでしょうか。

ジョエル:確かにね。疑問を突きつける、っていうか。それは自分自身への問いかけでもあるし、自分たち以外のすべての人に対するものでもある。本当に、僕たちは真実を大事にして生きているのか? それとも表向き、そういうフリをしているだけなのか?っていう。今のアメリカは、過激な主張をする人たちがそれぞれグループを作って、ひどい争いを繰り返している状態で。そういう人たちが自分の主張の根拠にしているのは、どれも「すばらしい理想」なんだよね。でも僕からすると……。

ベンジー:何の意味もない話ばかりっていう。

ジョエル:そう、矛盾だらけでね。理想を掲げながら、争い、相手を傷つけてるんだから。そんな連中が言う理想なんて、何の意味もないよね。言葉上だけのことだもの。そこで僕たちが疑問に思ったのは、「僕は本当に真実を行動に移しているのか? それとも口だけで実行してないのか?」っていうことなんだ。

◆インタビュー(2)へ
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