【インタビュー】CREAM、5thアルバムの到達点「時代の音をどんどん乗りこなす」

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■突発的に歌ったものが、良いのか微妙なのかってだけ

――いいメロディを生み出すための仕掛けみたいなものはありますか?

Staxx T:踊りながら書くこと(笑)! 盛り上がってビートを聴きながら、めっちゃ踊ったりとかして。体がノレるグルーヴ感ってやっぱ大事ですよね。

Minami:あと私がメロディを書いていて詰まった時は、徐々に変えてってくれてる。“詰まってるんだったら、これじゃないんじゃない?”って。柔軟に変えていく。

Staxx T:音楽って頭を悩ませるものじゃないと思うんですよね。突発的に歌ったものが、良いのか微妙なのかってだけ。だから頭で考えても意味はないんです。だから、Minamiが2、3ライン書いて“こんな感じ!”ってなると、“1ライン目と2ライン目はめっちゃよかったけど、3ライン目は微妙”ってすぐに言う。それで、“こうしたらどう?” “良いね!”って、次の流れもすぐできたりもします。良い悪いって初めて聴いた時にすぐ分かるから、どんどんクイックにジャッジしていくようになりました。メールでメロディをもらっていた時のような、1番の最初はいいけど後半が微妙なのをどう伝えたらいいかな…っていう悩みが今は無いですね(笑)。これまではMinamiが傷ついたら嫌だから、2日くらい寝かせてから伝えたりしてたんです(笑)。

Minami:そんなこと考えてたの? 私は全然傷つかないし、寝かせる間がもったいないよね(笑)。

Staxx T:逆に自分がデモ送って、反応がなかったら微妙だったのかなってならない?

Minami:あー、わかるけど、私たちは2人とも柔軟だから別に傷つかないんじゃない? プライドはあるけどエゴは無いから。でも今回のアルバムでうまい具合にバランスが整ってきた気がする。

――サビの作り方も大げさじゃなくて、シンプルな展開でいいメロディがあって。とてもいい作り方だと思います。

Staxx T:最初はバースと思って書いていたけど意外とサビっぽいね、みたいなのもあるんですよね。Aメロ、Bメロ、Cメロがあったとして、歌ってみるとAがCのパートになったほうがいいとか、B→C→Aって並べ替えたほうが今時のヒップホップっぽいんじゃないかって、フレキシブルに作ったりしてましたね。メロディを切ったり、良い部分だけを繰り返したりと、今回はいい意味でラフな作り方をしていたかもしれないです。

――サウンド的にもミニマルで、そのなかで世界観が統一されているように感じられますね。

Staxx T:そうですね。決めた枠のなかでどれだけの幅を見せられるかっていうか。最近のアメリカのヒップホップのアルバムを聞いたら、ほとんど全部同じようなトラックじゃんって思うんです(笑)。そういう作品でも、スマッシュヒットするものが3、4曲あればどうにかなるみたいな風潮。でも、僕がアルバムを作る時は、全部の曲が粒ぞろいでいいクオリティに仕上がっていて欲しいし、どれかがヘコむのが嫌。それでいてCREAMのサウンド感をもっと強めて、狭められた中でいろんなバリエーションの音でお腹がいっぱいになるようなフィーリングを感じてほしいなと。もちろんサビだけ四つ打ちになるような今までのCREAMっぽさもあるけど、アコースティック・ギターだったり、ガチャガチャしてない四つ打ちの音だったり、別の要素を加えたことでリスナーが飽きないような工夫をしました。

―― “狭められた中でのバリエーション”という方向性を見いだした曲といったら、アルバムのなかでどれになりますか?

Staxx T:「PLAYBOY」がそれで、アルバムのなかでこの曲が一番最初に世の中に出ています。前回のアルバム『BLACK』に収録した「Girl Like Me」をきっかけに、CREAMのことを知ってくれた人がけっこう多かったんです。そういう子たちがライブに来ると『CHANGE』ってアルバムの「Milk & Honey」って曲でけっこう盛り上ってくれて。それで「Girl Like Me」~「Milk & Honey」って流れを考えると、最近のウエスト・コーストで流行っている、音数が少なめなDJ MustardやNic Nac的な路線の音が好きなことが分かったんです。これがなぜかっていうのを遡って考えると、僕たちはOmarionの「Post To Be」をカバーしていて、それがバズったときにCREAMを知ってくれた人も多かった。それで「Girl Like Me」がどんな曲かって言うと、真面目というかちゃんとした恋愛の曲なんです。押しては引いての、彼氏・彼女にならない微妙な関係を歌った曲なんだけど、それをもっとチャラくやったのが「PLAYBOY」。ちょっとトロピカルな木琴のようなサウンドと、ダンスホール・レゲエっぽい要素を入れて。そうやって狭めた中でもバリエーションを出そうという意識はこのときからありましたね。


――「Selfish」はアコースティック・ギターの弾き語りの曲で、英詞のみでしたね。

Minami:そうです、あれは英語のままで残しました。SZAの「The Weekend」って曲がインスピレーションのもとになっていますが、この曲はふたりの女性と付き合っている男性がいて、SZAは“週末の女”って歌なんです。じゃあ、週末じゃない“Weekdayの女性”は、どういう気持ちなんだろうって気持ちで書いた曲が、そのアコースティック・ギターの「Selfish」って曲ですね。2000年代にニーヨの「So Sick」だったり、Eamonの「Fuck It」に対してFrankeeが「F U Right Back」ってアンサーソングを勝手に書いたりしてたんですが、そういうノリで曲を作るのも面白いかなって。

――日本詞と英詞の使い分けは、どのようにしていますか?

Staxx T:この曲はアコギの弾き語りっぽいし、他の曲でブリッジまである曲をけっこう作っていたから、2分くらいの短い曲も作ってみようっていうイメージもあって。あと、Minamiの第一言語が英語だから、英語で歌ってる彼女も聴いてほしいと思ったから。それにこの曲を作っていた時から俺がラップを入れると世界観を壊すんじゃないかと思っていたので、そのままいこうってなりました。こういう曲も、もともと僕らが持っているものだし、作品の幅を広げてくれる気がしたんです。


――逆に今回難産だった曲は?

Minami :「Kissing pt. 2」!

Staxx T:「Kissing pt. 2」を作ることになった時、初めてのパート2ってことでプレッシャーがあって、すごい悩んだんですよ。ビートのパターンを4つくらい作って、Minamiに“パターン2のピアノ弾いてる時に泣いちゃったから絶対これだと思うんだよね”って言うと、“ちょっとトゥー・マッチ”かな!って言われたな(笑)。

Minami:感動系に持って行き過ぎちゃって。でも、本当に泣いたんだろうなって伝わるぐらい感動系だった(笑)。

Staxx T:でも、確かにあれは、ちょっとやり過ぎだったね。そうやって、色々自分で作れちゃうからこそ広げ過ぎちゃうから、ジャッジが難しかったですね。基本的に2人ともにエモーショナル過ぎるのは好きじゃないんですよ。ブリッジのサビが終わった後で転調するとか絶対にありえないし。

Minami:そう! 転調したら笑っちゃう。“出たー!”って(笑)。

Staxx T:やっぱり僕たちはループ・ミュージックが好きなんで、基本的にヒップホップなんです。2000年代初期のヒップホップが自分達にとってのルーツ。だから、ベタなバラードというよりも、ループの中でバラードっぽいニュアンスのものはあったりもするくらいですね。

――Minamiさんは気に入ってるメロディはありますか?

Minami:「PLAYBOY」ですね。私はアルバムを作っている途中から“この曲がシングルじゃない?”ってずっと言ってて。結果的にいい曲が出来たから良かったんですけど“まだだね”ってずっと言われてて。でも、数字を見ると「PLAYBOY」が1番回ってるらしいんだけどね(笑)。

――今回のアルバムを作り終えての感想を教えてください。

Staxx T:すごく気に入っていて、どの曲も好きです。今は聴く人がどう受け取ってくれるのかなって反応を楽しみにしています。ちょうど今、13週連続で毎週アルバムのなかから1曲ずつ発表しているから、なんとなくレスポンスは見てるんですけどね。アルバムが出た時に、どの曲がみんな一番好きなんだろうなって、ワクワク待ってる感じです。まず耳で楽しんでもらって、あと、ライブで聴くのってまたちょっと違ったりするので、生で観てもらうのも楽しみです。もうすでにライブでやっている曲もありますが、今は作った曲をライブでやりたい欲求が強くなってます。今後はワンマンライブも計画しているので楽しみですね。

取材・文◎伊藤大輔

『Sounds Good』

2018年9月19日リリース

■CD+数量限定段ボールスピーカー付
RZCD-86614 ¥5,400(税込)

■CD+DVD
RZCD-86554/B ¥4,104(税込)

■CD
RZCD-86555 ¥3,240(税込)

収録内容
[CD]
1. Good Good
2. PLAYBOY
3. Kissing Pt.2
4. 7 Days A Week
5. first love
6. Check Plz
7. Mr. & Ms. Lonely
8. Selfish
9. Luv Song
10. B with U
11. 4:55
12. Complicated
13. Kissing Pt.2 feat. SWAY
[DVD]
Kissing Pt.2 MUSIC VIDEOほか

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