【ライブレポート】キズの“救い”

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キズが9月24日、Zepp Tokyoにてワンマンライブ<さよなら>を開催した。

◆ライブ写真

キズにとって4度目となるワンマンライブ。始動を発表してからまだ2年に満たない若いバンドだが、これまでのワンマンライブも数秒でチケットをソールドさせるなど話題に。本日の舞台であるZepp Tokyoにも、一般的なバンドよりも早いスピードで駆け上がってきた。


キズがどうしてこんなにも人を惹きつけるのか。それは、彼らが“救い”を与えてくれるからだ。人生は楽しいことばかりではない。生きていれば悲しみ、怒り、孤独、不安、憤り、悔しさ、やるせなさ…といった思いを感じることもあるだろう。しかしこういった負の感情は、ともすれば抱くこと自体を悪く捉えられがちだ。負の感情を抱いている自分自身に嫌悪感を覚えることもある。キズの来夢(Vo)はこういった感情を“生きている痛み”と表現する。生きているからこそのものだと、負の感情を抱くことを決して否定しないのだ。

世の中には前向きでポジティブな歌がたくさんある。負の感情に陥ったとき、前向きな歌を聞いて「励まされた」「元気になれた」と思える人は多いだろう。だが、暗闇にいるときに無理やり光の中に連れ出されることを望まない人もいる。そんな人たちに聞いて欲しいのが、キズの歌だ。キズの歌はそれを聞くことで直接的に前向きになったり元気が出たりするものではない。はっきり言って、必要のない人には必要のない音楽だ。その分、必要としている人にだけは深く刺さる。キズの歌は、負の感情をうまく昇華できないままの人、ポジティブなモノが眩しすぎて辛いと感じてしまう人、前向きな歌に賛同できない人など、生き辛い人々を救う歌なのだ。


“君の中で生きたい”ともがく「傷痕」、神へ祈る価値を問う「十五」、誰かの真似をして生きることの無様さを嘲笑する「豚」。ワンマンライブ<さよなら>でも、序盤からものすごい勢いで感情のナイフを突きつけてくる。そこには無責任な励ましや無意味なポジティブの押し売りはない。あるのは不器用ながらも必死にもがく姿だけ。だが「救われたいやつだけついてこい」という来夢の言葉に多くの拳が上がったのは、それだけキズの音楽で救われている人が多いということだろう。

中盤にはアコギの優しい音色とともに奏でられる「美しき日々」や、切ない雨の映像とともに「夢」も披露された。しっとりと響くバラード寄りの曲にも、前向きな言葉はない。世の中に溢れている歌のように「生きよう!」と直接訴えかけてくるのではなく、 またヴィジュアル系にありがちな気軽な「死にたい」でもなく、あくまで“生きたいなら生きればいいんじゃない?”というスタンスだ。その達観は、ある種の優しさとも言える。死んでしまいたいような負の感情にのまれつつも、生きたいと不器用にもがく人たち。キズはそんな人たちの心に寄り添ってくれるのだ。


ちなみにライブでは全曲にイメージ映像がつけられ、曲の世界観を補完。華やかな舞台装置も用意されている。来夢は過去のインタビューで、「(ライブには)キズを100%引き出す演出を入れたい」と語っていたが、その言葉通り、会場にいるだけでどんどんキズの世界に引き込まれていく。そして曲を聞きながら、自分自身の心の奥底にある感情と対峙しているような錯覚に陥る。もちろん、それだけ曲に引き込ませていくのには、各メンバーのプレイヤーとしての実力も大きい。このサウンドがあるから歌の説得力が増すのは言うまでもない。

キズらしい最高の愛の歌、「ラブソング」「ELISE」も披露された。痛烈な言葉で綴られた歌詞は一見すると、とても厳しい。が、そんな言葉から感じるのは“自分がどう生きるか”ということ。どんな不条理な人生でも、どんなつらいことがあっても、“自分の力で生きる”ことを改めて考えさせられた。そして「おしまい」で締めくくられた本編。そもそも最初から人生に正解などないし決められたハッピーエンドなんかはない。だったら自分なりに、生きたいように生きることこそが大切なのかもしれない。この「おしまい」まで聞いて、キズが提示する“救い”の一端に触れられたと思った。


来夢はステージで「やるべきこと、義務というか、使命というものがまだまだ残っている。一度は捨てた命かもしれないけど、音楽で救われて生きて、残りの命は音楽で救われたい人だけ救いたい。生きてて良かったと心から思います」と述べた。「使命」という言葉には一度は本当の死の淵に立った来夢だからこその、覚悟と決意が現れている。彼らはまだまだこれから、闇の中でもがいている傷を負った人たちを救っていくのだろう。

なお、キズは本公演終了後に5枚目のシングル「0」を12月11日にリリースすること、2019年1月11日に東京キネマ倶楽部にてワンマンライブを行うこと、2019年3月31日に大阪・松下IMPホール、4月7日に東京・国際フォーラムCにてホールワンマンツアー<「天罰」X「天誅」>を開催することを発表した。これまで“音楽で救われたくても救いがなかった”という人は、一度キズの世界に触れてみて欲しい。

写真◎川島彩水
取材・文◎服部容子(BARKS)



<クロフクゲンテイ単独公演「0」>

2019年1月11日(金)
東京キネマ倶楽部

[出演]キズ
[開場 / 開演]17:30 / 18:00
[前売 / 当日]4,300円(D代別)/ 4,800円(D代別)

チケット
■e+プレオーダー先行予約
受付期間:9月24日(月・祝)21:00~9月28日(金)18:00
結果確認・入金期間:9月29日(土)13:00~10月2日(火)21:00

■一般発売:10月4日(木)※e+のみ

<キズ ホールワンマンツアー「天罰」X「天誅」>

2019年3月31日(日)「天罰」
大阪・松下IMPホール

2019年4月7日(日)「天誅」
東京・国際フォーラムC

◆キズ オフィシャルサイト
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