【ライブレポート】VALSHE、今生は世知辛いが、“この世こそ、美しい”

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VALSHEが10月6日、マイナビBLITZ赤坂にて<VALSHE LIVE TOUR 2018 「YAKUMO」ファイナル公演>を開催した。同公演は“和”をコンセプトにした5thミニアルバム『今生、絢爛につき。』のテイストを更に昇華させ、一つの物語として作り上げられたもの。必ずしも和曲ばかりではないVALSHEの楽曲の数々たちは“YAKUMO”という“和”を象徴するライブタイトルの中、どのような姿を見せたのか。そのオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆VALSHE 画像

ライブはオープニングから予想を裏切る展開だった。和太鼓と三味線の小気味良い調べが鳴り、さながら寄席の出囃子を思わせる雰囲気のままスクリーンに和服の男性が映し出された。その男は「珀芝亭 八雲」と名乗り、楽しげで少し怪しい噺へ。八雲は「私の遠い遠い知り合いの知り合いに、“太郎”という男がおりましてね」と、VALSHEが扮する、どうしようもない遊び人だった“太郎”が辿った数奇な運命と、その物語がステージで展開されることを予告した。

八雲の噺とクロスして、アルバムの序曲である出雲(※1曲目収録)の「まそカがミ照るべき月ヲ白タえの誰か隠せる天ツ君かも」がSEとして流れ、それに合わせてダンサーが次々と登場。ここで早速のサプライズが。地方公演には出演していなかった、「今生、絢爛につき。」ミュージックビデオのキャストである“椿(大野愛)”と“牡丹(村井芽依)”の姿があった。満を持してVALSHE扮する“太郎”が登場すると、BLITZのステージは一気に華やいだ。


1曲目は同コンセプトライブの中核となる「今生、絢爛につき。」キレの良いパフォーマンスが魅力の和ダンスチューンは、ライブツアーを共に回ったダンサーNAOKIとKyo-heyに椿と牡丹が加わり、さらなる絢爛さを帯びていく。VALSHEの衣装はアルバムでも使用された振袖のある和装、赤と黄色と黒のコントラストが眩しい。振り付けに呼応してなびく両袖が流麗だ。

「今生、絢爛につき。」の後、ステージは“太郎”が過ごした街並みへ変貌。過去とも未来ともわからぬそこには、様々な声が飛び交うなど不思議な雑踏の中、流れ始めたのは「インスタント・セレブリティ」だった。淡々としたダンスチューンに合わせたダーティな照明が、スタイリッシュなパフォーマンスを照らす。そして、「EVALUATION」「vluger gem」のメドレーへ。東京公演ではTAKAMASAとYU-TAが加わった4人のダンサーによるパフォーマンスと久々の披露となる2曲に観客は大興奮。「EVALUATION」は煙管と扇子を小道具にしたダンスが、今回のライブとの親和性を高めた。


VALSHEがステージを去ると、始まった小噺に合わせて狐面をかぶったダンサー4人がパフォーマンス。“覆水盆に返らず”という諺をオチに据えた“太郎”のエピソードは、次に始まる「激情型カフネ」への伏線だ。同曲は「今生、絢爛につき。」の1000年後を描いたもの。男女の愛情と情念と失意とを織り交ぜた激しい曲調にはやはり漆黒の衣装が似合う。「激情型カフネ」アートワークの衣装に着替えた“太郎”が、それまでの3曲とは異なる憂いを含んだ表情で熱く歌い上げる。八雲の語りが挿入されたアウトロでは失望が語られる。「世にも、無情だなあ…。」とVALSHEがポツリ呟くと、舞台が暗闇に包まれた。

闇と調和するような静寂の中で奏でられたのは「君がため」。VALSHEのアカペラが導く同曲は失意を象徴する。続く「暗い夜の行き路」と共に悲しみが決壊するなど、物語の展開としてはもとより、独立したテーマ性を持つVALSHEの楽曲パワーが冴え渡る。それまでの煌びやかとは一変したステージに涙ぐむオーディエンスも少なくない。「暗い夜の行き路」の最後で聞こえた雨音は、VALSHEの表情や歌声と相まって冷たさを感じた。


雷鳴が鳴り響いて「EXECUTOR」へ。ダークなロックチューンがステージに激しさを呼び戻し、最新アルバム収録曲「PERSONA」では和装からスーツという洋装に変えたダンサーが登場。アコースティックギターとドラムが描くグルーヴと、統率のとれたダンスがVALSHEの歌声を引き立てる。そのアウトロで再びVALSHEがステージを去ると、ダンサーによるソロパフォーマンスをフィーチャー。4人それぞれが個性豊かなダンスを披露し、曲が終わる頃には失意を超えて、完全に熱さを取り戻していた。

「是は是、非は非として、(感情を)吐き出したほうが、実際スッキリするのかもしれない」

という八雲のナレーションを皮切りに、失意の呪縛から解放された“太郎”が感情を爆発させていく。その口火を切ったのは和ロックチューン「羽取物語」だ。黒地に銀のスパンコールがあしらわれたライブ用の新衣装は、和のコンセプトを踏襲した陣羽織風の様相ながら、流行のファッションテープをふんだんに使用したもの。手を振りあげるたびになびき、光る衣装はステージに輝く。また、重厚なシンセサウンドによるクラブチューン「DOPE」は、三味線と笛の音や、男性の掛け声が加わったライブアレンジが新たな一面を見せた。その掛け声に合わせた空手の型を思わせる力強いダンスも会場の熱量を高めていく。コール&レスポンスが盛り上がったロックナンバー「microSOLDIER」、定番のタオル回しが最高潮にいざなう「RADICAL COASTEЯ」で場内が一体化。そして、VALSHEの楽曲の中でもとりわけ激しい「ジツロク・クモノイト」での明滅するストロボ演出が、1秒たりとも同じ表情を見せることのないVALSHEを浮かび上げた。

怒涛の展開をクールダウンさせるヒグラシと爽やかな水音が聞こえてくると、“太郎”の物語もいよいよ終盤へ。バラード「夕暮花火」は熱い夏が通り過ぎていく哀愁と、純粋な気持ちを切り取ったもの。この季節にぴったりなナンバーに身を委ねる観客の姿も印象的なワンシーンとなった。「ラストー!!」と勢いよく叫んだVALSHE。本編最後の「追想の理」は、“ただ生きる、それは誰かの明日になる”という希望を込めたナンバーであり、このコンセプチュアルなライブを締めくくるにふさわしい。本編エンディングには冒頭と同じ囃子が。小さく一礼をしてステージを後にしたVALSHEに続いて、八雲の最後の語りが入った。

「今生ってのは世知辛いねえ。なあ、太郎さんよ、あの世ってもんはどれだけか美しいんだろうなあ?」と八雲に尋ねられた“太郎”の答えは、このライブを代弁するようにシンプルで、明快な一言だった。「この世こそ、美しい」。


会場からの「アンコール!」をかき消すように突如サイレンが鳴り響くと、再びVALSHEとダンサーが登場した。2017年のライブツアー以来、定番となりつつある“コドモ団”によるパフォーマンスから「ドミノエフェクト」へ。“コドモ団”のコール&レスポンスも2018年仕様へとパワーアップ。本編とはまったく異なるポジティヴ全開の空気が充満した同曲の後、この日、初となるVALSHEのMCへ。

「改めまして、<VALSHE LIVE TOUR 2018「YAKUMO」ファイナル公演>へようこそ! VALSHEです! この日を待ち望んでいました。でも、始まってしまえば本当にあっという間に、駆け抜けるように、本編が終わってしまいました。まだまだ楽しんでいきたいと思います! この(マイナビBLITZ赤坂の)広さ、空間だからこそ伝えられることがあるんじゃないかと思います。」──VALSHE

本編で演じた“太郎”ではないVALSHEの笑顔。演出上、本編中にVALSHEとしてのMCは入らなかったこともあり、“演じきった”後の充足感を噛みしめて披露されたナンバーは、MCで語られた通り、この空間にマッチしたバラードチューン「ラピスラズリ」。PCゲームのエンディングテーマに起用されたストリングス主体の同曲はライブ本編を浄化させるように澄み渡る。客席はブルーのペンライトが一面に敷き詰められたような美しい輝きを放った。

「青一色の景色はとても美しいです。今日も「ラピスラズリ」でどんな風に見えるのかなと想像していましたが、想像以上に綺麗な景色を見ることができました。ありがとう。YAKUMOを作るにあたって、折り重なった景色の、その先を見たいと思って、このツアーを企画しました。過去の経験からだけでなく、未知の世界・景色、見たことがないこと聞いたことがないことを見てみたいとそう思っていました。次の楽曲も、予想がつかない景色を見てみたいと思って作りました。このツアーは「Are you Ready?」を演って、初めてYAKUMOとして完成します」──VALSHE

「Are you Ready?」は同ツアー開幕直前に“特別販売CD 七雲”として会場販売されることとなった新曲だ。ミニアルバム『今生、絢爛につき。』には“六雲(6曲)”を収録。同ツアーは<YAKUMO(八雲)>と名付けられており、“七雲”の存在に注目が集まっていたところでの会場販売であり、楽曲披露となる。ある意味では、この七雲「Are you Ready?」がミニアルバムとツアーをつなぐ楽曲だち言い換えることもできるだろう。そして演奏された同曲は爽やかなロックソングであり、会場が一体となるコール&レスポンス付き。ダンサーも再登場したノリの良いナンバーだった。「Prize of Color」で会場はさらにハッピーな雰囲気に。地方公演ではこれにてセットリスト終了となっていたが、ここでファイナルらしい展開が待ち受けていた。


「みんな、まだ終わりたくないんでしょ? おかわりほしいか!?」と始まったのは、冒頭で披露された「今生、絢爛につき。」。しかし、それとは雰囲気が少し異なっていた。「また、楽しいこと、面白いこと、知らないこと、見たことないことを怖がらず、一緒に未来へ、明日に向かって進んでいきましょう!」と会場へ呼びかけ、大声援の中、<YAKUMO>ツアーは幕を閉じた。

まるで一つの演劇のような充実感に包まれた<YAKUMO>ツアーは、その名の通り、楽曲たちが幾重にも折り重なり、ファンとの想いが重なってこそ描かれた八雲の景色が素晴らしいものだった。この世は無情、世知辛いもの。しかしやはり、この世こそ、美しい。

■<VALSHE LIVE TOUR 2018 「YAKUMO」ファイナル公演>10月6日(土)@東京・マイナビBLITZ赤坂SETLIST

〜出囃子〜
OPENING SE.
まそカがミ照るべき月ヲ白タえの誰か隠せる天ツ君かも
01. 今生、絢爛につき。
02. インスタントセレブリティ
03. メドレー 〜EVALUATION / vulgar gem〜
04. 激情型カフネ
05. 君がため
06. 暗い夜の行き路
07. EXECUTOR
08. PERSONA
〜Dance solo〜
09. 羽取物語
10. DOPE [和アレンジ ver.]
11. microSOLDIER
12. RADICAL COASTEЯ
13. ジツロク・クモノイト
14. 夕暮花火
15. 追想の理
END SE.
encore
en1. ドミノエフェクト
en2. ラピスラズリ
en3. Are you Ready?
en4. Prize of Color
en5. 今生、絢爛につき。



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