【インタビュー】Ken Yokoyama、15年を物語るセルフコンピ盤完成「横山は一本気だなって」

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Ken Yokoyamaが10月10日、単独名義のアルバムとしては約3年ぶりとなるセルフコンピレーションアルバム『Songs Of The Living Dead』をリリースする。横山健がKen Yokoyamaとして、1stアルバム『The Cost Of My Freedom』を発表してから約15年が経過した。『Songs Of The Living Dead』は活動初期からの「コンピ用の曲や未発表の曲とかを集めて、いつか1枚の作品にしたいんだよね」という思いを実現したものであり、約15年にわたる活動が今作のリリースを可能にしたと言い換えることもできる。

◆Ken Yokoyama 画像

“ゾンビのような楽曲たち”というアルバムタイトルは、旧メンバー在籍時の楽曲が多数収録されているという意味でもふさわしい。これまでコンピ盤やトリビュート盤に収録された楽曲ほか、カバーを含む新録5曲が加えられた全20曲には、サウンド変遷も変わらぬ本質も、個々の楽曲に対する深い想いもすべてが『Songs Of The Living Dead』という名のもとに集束され、Ken Yokomayaのこれまでとこれからを示すように躍動的だ。

また、先ごろミュージックビデオが公開された「Brand New Cadillac」はチバユウスケをゲストボーカルとして迎え入れたもの。Ken Yokoyamaの前アルバム『SENTIMENTAL TRASH』収録曲「Pressure Drop」も同様にThe Clashがカバーしていたナンバーであり、チバとライブ会場で共演することも多々あったという。Ken Yokoyamaとチバの共通項はThe Clashだと横山健自身が思うところもあり、楽屋でチバに「The Clashで他にやりたい曲ある?」と聞いたところ、「カバーだけど「Brand New Cadillac」とかカッコいいんじゃない?」という会話から、今回のコラボレーションが実現。横浜ゲリラライブの模様が収録された同曲ミュージックビデオの破壊力はあまりにも大きい。これは遊び心溢れる事件でもある。

BARKSではKen Bandのメンバー全員を迎えてインタビューを行なった。収録楽曲が映し出したKen Yokoyamaならではの挑戦、サウンド&プレイの本質はもとより、ギターとスケボーのオリジナルブランド“Woodstics”、全国ツアー<Songs Of The Living Dead Tour>をもって脱退することがアナウンスされているMatchanとKen Bandのこれからに迫った1万字のロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■熱量も遊び心も変に高まりますよね
■そりゃ、おもしろいはずだわなって

──ずっと前から、コンピ用の曲とかを集めて1枚の作品にしたい、と思っていたそうですね。どういう気持ちからだったんですか?

Ken:思っていたのは、相当前からなんですよ。今回の『Songs Of The Living Dead』に入っている曲で、一番古い音源が「Hungly Like The Wolf」だと思うんですね。それを録ったころから、そういう発想はあったんじゃないですかね。でもどういう気持ちから……なんだろう。ただ、バンドのレアトラック集とか、たまにすごくいいのがあるじゃないですか? そんなようなものにしたいなってイメージじゃないですかね。

──コンピレーションに提供した曲や、オリジナルアルバムに入らなかったカバーとかに、名曲が隠れていたり、そのミュージシャンの趣味趣向も現れていたりしますよね。

Ken:うん、そうですよね。昔からこういうのを作りたいと思ったけど、結局、15年掛けて作ったのは、そこに旨味をギュッと詰め込むっていう、何となく作ったわけじゃないよと。その説得力を持たせる時間だったかもしれない。

▲Ken Yokoyama

──なるほど。それで聞きたいんですけど、コンピ用の曲やカバー曲などは、オリジナルアルバムのレコーディングとは全然違うタイミングや期間に録ることが多かったんですか?

Ken:今回、洗い出してみたら、だいたいがそうでしたね。フルアルバムのタイミングで一緒に録ったのが1〜2曲あった気がするんですけど。多分、「My Shoes」は『Four』(2010年発表)のレコーディングで録ったんですよ。

Minami:うん、そうっすね。「Nothin'But Sausage」はいつ録ったんです?

Ken:それは何かのシングルのときだった気がするな。シングル「Not Fooling Anyone」かな。

──「Nothin'But Sausage」は、当時のライブでいきなり初披露した曲でしたよね。2ndアルバム『Nothin'But Sausage』(2005年発表)のツアーで「アルバムのタイトル曲がないから、作ってきた。今からやるわ」って突然言って。確かライブ会場は渋谷AXでした。

Ken:そうですそうです。そのライブの後にスタジオで録ったんですよ、きっと。だから3rdアルバムに向かう段階でのシングルが「Not Fooling Anyone」なんだろうな。でも、「My Shoes」と「Nothin'But Sausage」以外は、ほとんどがアルバムやシングルのタイミングではない、そのためのレコーディングですね。

▲Hidenori Minami

──オリジナルアルバムでは、アルバムごとの作品像であったり、こういうものを作るんだって言う意志のもとで作っていると思うんです。そのタイミングではないレコーディングのときは、遊び心に近い感覚も入ってくるものなんですか?

Ken:やっぱりそうですね。オリジナルアルバムは、作品の全体像を想像しつつ曲を作っていくんで。そうではない突発的なレコーディングのときは、遊び心が出ますね。あとオリジナルアルバムのときは、一気にまとめて録っていくんで、例えば10数曲あるとしたら、良くも悪くも10数曲のうちのひとつになるんですよ。それが統一感を生むときもあれば散漫になってしまうこともありますけど。でもコンピのために1曲だけ録るとなったら、それだけに向けるんで、変に熱量も遊び心も高まりますよね。普段はやらないけど、時間あるからやっちゃえみたいなアイデアを、その曲のアレンジに放り込んじゃったりとか。やっぱオリジナルアルバム用のレコーディングとは違いますよね。そういったものが今回、ひとつのアルバムになっているんで、そりゃ、おもしろいはずだわなって気もします。

──遊び心というのは、その時々の次の作品に向かうための実験みたいなニュアンスもあったんですか?

Ken:どうなんだろうね。実験はたくさんありますけど、それが必ずしも次のアルバムに向かうためのものだったかは分からないですね。

──例えば「Going South」は、Minamiさんがバンドに加入して、さあ、どういう曲が生まれるのかってときに作ったものでしたね。それで裏打ちカッティングとかスカ要素とか入ってきて。当時は実験と遊び心を感じましたよ。

Minami:なるほどね。今はスカもやりますけど、当時のモードでは絶対にKen Bandではやらないだろうってことで、「Going South」をやること自体が遊びで。実験でもなかったですね。あとユーモアじゃないですけど、自分が前はKEMURIにいたってことをパロディにしちゃうみたいな。僕は遊び心しかなかったですね。

──でもその遊びが、音楽的に活性化されて、起爆剤みたいになった印象ですよ。今はメロディックパンクだけに縛られたバンドでもないわけですから。

Minami:でも「Going South」に関しては、そこまで真面目な思い入れもないです(笑)。

Ken:だから今になって考えてみると、「Going South」がKen Bandにとっての初めてのスカ……いや、スカでもないか(笑)。

Jun Gray:スカセクションがちょっとあるっていうだけ(笑)。スカナンバーと呼べるほどのスカではないからね。

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