【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.108「子連れでフェスろう!(5)<朝霧JAM’18編>」

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全国的に秋フェスが多く開催された先週末10月6日〜8日の3連休、我が家は2泊3日で<It’s a beautiful day〜 Camp in 朝霧Jam>に参加してきました。初日は雨風に泣かされた散々な天候でしたが、2日目には暑いくらいの秋晴れの空の下、富士山も虹も現れ、その自然美に包まれた最高のロケーションで色彩豊かな音楽にどっぷりと浸かることができました。



子連れでは初参加且つ10年振りくらいで<朝霧JAM>に舞い戻った昨年は、私も連れの友人たちも独身時代の「いい酒といい音に酔えて朝霧は最高だった♡」という良き思い出と豪雨もあってダウンを着ていた時もあったという程度しか覚えておらず、準備に役立つ記憶は皆無でした。さらに子連れで初めてのキャンプ、そのための参加準備もイマイチしっくりこない上、往路で利用予定だった東名高速道路はまさかの通行止めに。仕方なく乗った中央道では大渋滞に巻き込まれながらもなんとか辿り着き、ようやくテントを張り終えた頃には日が暮れて、その日最後のアクトだったベルセバへ向かおうとした時に2歳の息子が「ママーーー! ウエエエエン!」と絶叫。水たまりにダイブして全身ずぶ濡れに仕上がるというコントのような展開のおかげでベルセバを諦めたのでした。

ライターという役割で現地入りしているにもかかわらず、場内へ足を踏み入れることすらできなかった初日の夜はさすがに凹み、息子が寝た後で焚き火を見つめながら「ああ、もうクビだな、こりゃ」と達観しながらポン酒を呑んで現実逃避。しかし後日、SMASH広報のHさんとお話する機会があったので自分の身に起きた残念話をしたところ、こんな言葉をかけていただきました。

「それがリアリティなんだと思う。だからそのままを書いてください。きっとその情報が役に立つ人がいると思うから」

このHさんのお人柄とオーディエンスへの愛を感じる言葉に<朝霧JAM>がオーディエンスを惹きつける理由のひとつを垣間見た気がします。それに“うまいことレポートしよう”としか考えていなかった己の愚かさに気づかされ、なんだかいろいろ恥ずかしかったことは否めません。


そして、数あるフェスに違いを感じるのには訳があると思います。それは出演者のカラーだけではなく、作り手側のフェスにかける愛情の大きさに寄るのかもしれません。2017年、BARKSとしてフジロック制作チームを取材したとき、フェスへの深い愛情と来場者に楽しんで欲しいという想いが全員の言葉から溢れていました。フジロックの場内に入ったときの心地よさは作り手側のこうしたマインドによるものなのだろうと気づき、どれだけ大きなフェスであってもその空間を創り上げる人たちがオーディエンスを第一に捉え、フェス自体に愛情が注ぎ込まれていると、それをオーディエンスは察知してリピーターとなり、客席には笑顔が溢れ、フェス自体のファンが生まれるという構文が頭に浮かんだのでした。<朝霧JAM>もフジロックと同じ方々が創り上げているので、通じるものがあるのでしょうね。

場を盛り上げ、美しい景色を魅せてくれる国内外の才あるアーティスト、フェスを創り上げる人たちの信念と懐の深さ、自分たちも楽しもうというボランティア・朝霧JAMS’の皆さんが集結する<朝霧JAM>。今年も最高でした。それから、すべてのライブを観てはいませんが、ベストアクトは息子と踊ったジョン・バトラー・トリオ+。これから書くレポート作業がとても楽しみです。

文・写真=早乙女‘dorami’ゆうこ


◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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