【ライブレポート】アサキ、先鋭的なトラックと内省的な歌詞が多くの人の心に届いたライブ@新代田FEVER

twitterツイート

2018年10月11日(木)新代田FEVERにて行われた<術ノ穴presents ササクレ4マン>に、2018年3月にデビューした注目のアーティスト・アサキが出演、最新作『Moldy』からの曲や未発表曲を含めたライヴ・パフォーマンスを行った。

アサキは、渋谷でのストリートライヴで経験を重ね、2018年3月7日にミニ・アルバム『ぼくはバカだよ。』でデビューした20歳のラップシンガー。1月に先行配信リリースされた「Gender」によって瞬く間に話題となった、作詞作曲からトラックメイクまで自ら手掛ける新鋭アーティストだ。

彼女の魅力はアンニュイな雰囲気と囁くように歌いラップする楽曲……と思っていたのだが、僅か20数分のライヴを体験して、そんな思い込みがあまり的確ではないことを実感した。そのパフォーマンスは、等身大の10代にしか描くことがができない揺れ動く心情に基づいた曲の世界観を、曲に寄り添うトラックと確かな歌唱力で聴かせるオリジナリティのあるもので、儚くも力強いものだった。


この日のライヴは、11月17日に開催される<ササクレフェス2018>のプレイベントとして行われたもの。アサキは吉田凜音のライヴの後を受け、19時40分頃にステージに登場した。ステージの背後にはVJによる映像が映し出される。水中のクリスタルのような、光が差す映像を前に立ったアサキは、未音源化の楽曲「inocence」からライヴをスタート。幻想的な映像とトラックに包まれたその歌声は少しずつ輪郭をハッキリと描き出し、徐々に伸びやかな歌声へと変わって行った。

「アサキっていいます、よろしくお願いします」

短い挨拶を挟み、よりビートが強調されたサウンドに乗せて、これも未発表曲「ラベンダー」を披露。マイクを両手で握り上を向きスクリームするように歌うアサキの影がスクリーンの映像と重なる。2018年6月には食品まつり a.k.a foodmanによるリミックスも配信された「Give me a hand」では、ラップを織り交ぜて歌い、サビで“届かないgive me a hand”と繰り返される歌詞が切実に響いた。都会の夜を彷徨うようなサウンドスケープに浸ってると、対照的にキラキラしたパレードを思わせるサウンドが音符が飛び交うようにフロアに流れ出す。リズミカルに、身振り手振りを交えたパフォーマンスの「bright」。“雨降っても地固まらないや”という詞が印象的だった。


観ているうちに思ったのは、ステージに立つアサキは観客を目の前にしてパワフルに歌っているにも関わらず、こちら側はまるで自室で呟いているアサキをじっと観ているような気分にさせられるということ。そこにあるのは極めて内省的な世界で、なぜそんな少女が渋谷駅前でストリートライヴをしようと思ったのだろう、と考えながら聴いてしまった。

ローが強調された大陸的な音と共に歌い出したのは、「Moldy feat. ハシシ (電波少女)」。となれば、電波少女も出演しているイベントだけに、もちろんコラボが実現。曲中でサラっとハシシがステージに上がると、ドッと歓声が上がった。アサキのヴォーカルと会話するようにラップするハシシに、観客も体を揺らして呼応する。「ハシシさんでした!ありがとうございます」と紹介されて袖に下がるハシシ。くどくど強調しない、じつにスマートなコラボでカッコよかった。続くデビューミニアルバム『ぼくはバカだよ。』からの「FR」では、緩くもアタックの強いビートに乗せて見事な歌唱力、表現力を聴かせる。

「最後の曲です、今日は来てくれてありがとうござました。最高のメンツなんで、楽しんで行ってください」

そうイベントについて触れながら告げ、歌い出したのは、デビュー曲「Gender」。火花が飛び交う映像をバックに熱唱するアサキ。抑揚をつけた歌声と緊張と緩和を繰り返すトラックで1曲のストーリーが浮かび上がる。後半、転調してさらに熱を帯びるヴォーカル。ラスト近く、フェイクも織り交ぜて昇り詰めるように“大切にしてよずっと”とロングトーンで歌ったところは、痺れるほどに胸に迫ってくるハイライトシーンだった。歌い終わると、ポツリ「ありがとう」と呟きフロアに感謝してステージを後にしたアサキに、大きな拍手が贈られた。


曲ごとに寄り添うように作られたシンプルかつ洗練されたトラックと、あやうい雰囲気を感じさせながらも力強い歌唱力で堂々としたパフォーマンスを魅せたこの日のライヴ。先鋭的なトラック・メーカーとしての感性と、内省的な歌詞は、“みんな一緒”じゃない居場所を求めている多くの人の心に届くのではないだろうか。新世代の稀有な才能に今後さらなる注目が集まるはずだ。

取材・文:岡本貴之

セットリスト

<術ノ穴presents ササクレ4マン>
2018年10月11日(木)新代田FEVER
出演者:DOTAMA / 電波少女 / 吉田凜音 / アサキ
<アサキ セットリスト>
1.inocence
2.ラベンダー
3.Geve me a hand
4.bright
5.Moldy feat.ハシシ(電波少女)
6.FR
7.Gender

リリース情報

「Moldy」
発売日 : 2018.08.01
XQND-91001 ¥1,250+税
01.Moldy feat. ハシシ (電波少女)
02.Ghost
03.FizzY

関連リンク

◆twitter
twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報