【インタビュー】キング・クリムゾン、来日直前のバンドの姿をビル・リーフリンが激白

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最新作『メルトダウン~ライヴ・イン・メキシコ』を引っ提げての来日公演を11月に控えているキング・クリムゾン。ブルーレイは、2017年北米ツアーのハイライトとしてバンド、ファンともに認めているメキシコ・シティ公演の熱気をそのまま映像化しており、ロバート・フリップから『ラディカル・アクション』映像コンテンツを超えた現時点での最高傑作と賞賛を得たという。今作のミックス・ダウンを担当したビル・リーフリンは、2015年の来日ではドラムを叩き、今回はキーボードを担当する。そのビル・リーフリンにインタビューする機会を得ることができた。『メルトダウン~ライヴ・イン・メキシコ』のこと、バンドのいま、そして来日直前の様子について、ビルが激白してくれた。

■ツアーが進むにつれパフォーマンスは良くなり高揚感が体験できる
■それはオーディエンスのおかげだ。彼らなくしては成り立たない


──そろそろイギリスに向かわれるそうですが、すぐにリハーサルですか?

ビル・リーフリン(以下、ビル)リハはまだ少し先なんだけど、時差ボケ対策のため、早めに入ることにしたんだ。最近は、身体がノーマルモードに戻るまで3週間くらいかかってしまう。だから必要な対策だ。実際のリハは、たしか3日か4日間で、そのままツアーに突入する。

──リハの期間っていつもそのくらいなんですか?

ビル:いや、今回は短いよ。というのも、7月までのツアーのファースト・レグが非常に良い感触で終わったものだから、その雰囲気そのままに次のレグに入りたかったのと、バンドの状態がとても良いから、わりと楽に再開できると思ったんだ。ここ数日、前回最後に訪ねたイタリア・ベネチア公演の音源を聴き直しているんだけど、確かにとても良い。そこから再開できれば問題ないし、まだまだ発展の余地すらある。


──素晴らしいですね! 2017年のツアーも、今回のファースト・レグも、どこに行っても大変な盛り上がりですが、ビルさん自身、ツアーは楽しめていますか?

ビル:うーん、文句を言い始めたらキリがない(笑)。正直、楽しいことより大変なことの方が多いよ。でも、僕らの思いはひとつであって、とてもシンプルだけど、その都度ベストを尽くすこと。これにつきる。そして今回実感したのは、ツアーが進むにつれ、パフォーマンスはどんどん良くなっていく。あと、時々、夢のような高揚感が体験できる。それは、オーディエンスに担う部分が大きい。彼らなくしてパフォーマンスは成り立たないよ。公演の善し悪しが評価される時、どうしてもバンドの演奏にばかり注目が行くけど、本当はオーディエンスの存在ももっと評価されるべきだ。例えばブダペストに行った時、オーディエンスが本当に素晴らしくて、彼らは完全にパフォーマンスの一部と化していた。それってステージ上にいるパフォーマーにも完璧に伝わるから、いい気分になれるんだ。アムステルダムは、会場がやりづらくて好きじゃなかったけど、その穴埋めをオーディエンスがしてくれた。正直、今のクリムゾンのオーディエンスはどこに行っても素晴らしいと思う。

──『メルトダウン~ライヴ・イン・メキシコ』からはメキシコ人の熱狂も伝わってきますね!

ビル:メキシコ人には独特な雰囲気があるよね。北米、つまり、アメリカとはかなり違う。音楽に対する姿勢かな。言葉にするのは難しいけど、メキシコ人の方が、音楽を力強く受け止めてくれる気がする。

──なるほど。そもそもメキシコ公演をライブ盤にした理由は?

ビル:メキシコを選んだのは、単純に、演奏するのが楽しいから。それくらいイージーな理由さ。あと、個人的にはメキシコ料理が大好きだから行くのが楽しみ(笑)。

──大事ですよねー

ビル:とても大事だよ。こんなこと言っては何だけど、過去にいろんな国や町で公演してみて、パフォーマンスの印象がほとんどなく、食べ物のことしか覚えていない町も多いんだ(笑)。知っているとは思うけど、怖ろしいことに、我々はすべての公演を録音して残している。それらは、利用されるかもしれないしされないかもしれない。その中で、メキシコ公演に関しては、どれもとても良いショーだったというのが共通認識だったから、それなら、ちょっと形にしてみない?と言うことで始まったのがこの作品だ。僕が素材を聴いて、ラフ・ミックスを作りロバートとデイヴィッド(シングルトン)に送り、二人の賛同を得たから進めることにした。


──つまり、最初から商品化目的があったわけではなく、結果的にメキシコ公演が作品になったということ?

ビル:そう、そういうこと。僕らは、どうしても作品を出したいと思っていたわけではない。けど、とても良いショーだったし、「やってみてはどうかな?」という気持ちから調査を始めたら、実際とてもいい素材だったから、それなら作品にしてみようってことになったんだ。

──あなたは音源のMIXプロデュースを担当されていますが、ミックスで特に心がけたこと、こだわった部分はどういうところですか?

ビル:先に告白しておくけど、作り終えてから一度も聴いていない。だから、かなり曖昧な答弁になってしまうかもしれないよ(笑)。えーっと、ミックス作業はいつ終わったんだったかなあ。今年の初め、1月から3月ぐらいに最初のミックスを行なって、そのあと4月にツアーのリハがあって一度中断して、終わってから作業に戻ったんだ。だけどその時、実際のミックスを担当したドン・ガンに電話して、こう言ったのを覚えている。「ドン、僕が話し終わるまで何も言わないでくれ。特にヴォーカルのミックスが正しくない。やり直そう」って。ドンはしばらく考えていたけど「わかった、キミが言うとおりにしよう」と言ってくれた。

──つまり、リハーサルの前に、すでにミックスは上がっていたと言うことですか?

ビル:そう。作業は終わったと思っていたけど、どうしても変えたくなった。結果的により良くなったと信じているよ。

──そのあたりを詳しく聞く前に、ドン・ガンを紹介していただけますか? あなたとはどのような繋がりなんですか?

ビル:ドンもドラマーなんだよ。僕よりずっと巧い(笑)。レコーディングもミックスもこなせるエンジニアで、長年フリーランスで働いている。かなり前に、彼の方からアプローチしてきて、それ以来とても良い関係を続けている。正直、それがいつだったかも忘れてしまった。それくらい前だよ。僕は、仕事のパートナーとして、必ずしも楽な相手じゃないはずだ。音に対して「これが聴きたい」というこだわりが強く、それ以上に「これが聴きたくない」というこだわりが非常に強い。だからそれを理解できる人とじゃないと組めない。ドンは、僕の指向を把握しているから、僕の脳内で鳴っている音をそのまま形にして表現できる。技術をもって媒介してくれる、とでも言うのかな。僕自身エンジニアリングはできないけれど、仕組みは理解しているから、ドンとは技術用語で会話できるし、普通の人間らしい会話もできる。それがとても良い。僕らは作品に取りかかる際、まず言葉で、どんな音を目指したいかディスカッションする。作品の善し悪しは三つの点で決まる。素材、パフォーマンス、そしてサウンド。この三つが同じくらい重要で、ひとつでも劣れば成り立たない。僕らはその中でサウンドを担当するわけで、まずはじっくり話し合う必要があった。自分が思っていることを言い、場合によっては、参考になりそうなEQプロフィールを持つ、別の作品を例に出したりもした。そのうち、僕ら自身がこれまでやったことのない、新しい要素は何かという話し合いになり、少しずつ全体像が見えてくる。素材もパフォーマンスもすでにそこにある。最後の決め手となるのはサウンドだから、こだわるのは当たり前。それによってリスナーを引き込めるか否かが決まってくるのだから、極めて重要な役割だ。サウンド、イコール、作品のフィーリングだからね。


──ミキシング作業中の、おもしろ話があったら是非。

ビル:パフォーマンスの、ミスタッチを聴き直すのがおもしろすぎたよ!(笑)ほとんどの時はなかなか上手に演奏しているんだけど、時々ひっくり返るくらい酷いミスがあって、そういう時は笑い転げていた。でもまあ、あとは黙々と、粛々と、地味な作業だね。

──ブルーレイに関して、ロバート・フリップから『ラディカル・アクション』を超えたとの賛辞の声があったとのことですが……。

ビル:ほんとに? ロバートがそんなこと言ったの? 僕は聞いてないけど、もし本当なら嬉しいよ。僕としては、ただ、究極のクリムゾン・アルバムを作りたかっただけなんだ。僕も人間だから、様々な物に対して意見を持っている。その中には、過去のライブ盤に対する意見もある。誰だって「僕ならこうしたのに」って考えるだろ? それはこだわりのある人間なら仕方ないことだ。そしてそんな僕に作品を作るチャンスが訪れた。だったらこだわり抜くしかないよね。と言っても、僕にできることと言ったら、僕の感性を応用することくらいしかないのだけど、もしロバートがそう言ってくれたのだとしたら、二人の感性が同じ線上にあるってことなんだろう。

──このミックスを聴いて思ったのは、各楽器の分離の良さ。気持ち良くクリスピーなサウンドで、各プレイヤーがステージのどこにいるのか映像を見なくてもはっきり判ります。

ビル:それはとても嬉しい感想だ。ありがとう。

──先ほどから何度もこだわりと出てきますが、もう少し具体的にお願いできますか?

ビル:怖ろしく技術的にならないよう説明してみるけど、まず、僕は、リヴァーブというものに対してとても細かい。いや、言ってしまえば、リヴァーブが嫌いだ。いなければならないのはわかっているけど、できればそこにいて欲しくない。世の中の作品で、リヴァーブが気に入らなければ、僕はまず聴かない。説明するのが難しいんだけど、僕にとっては耳障りなんだ。ただ、それを言うと、多くの人に反論されるし多数決で負ける(笑)。でもリヴァーブに対して細かいことは確かだ。それと僕は、音楽は“腹で聴くもの”だと思っている。わかるかな? 腹にガツンとこなければ音楽じゃない。まさにガッツ(gut=肚)。音楽で、腹の底から揺るがしたい。震わせたい。だからこの作品も、自然とカラダが震えるようなものにしたかった。あと、僕は、messy(散らかった、だらしない)な部分も好きだから、あえて、少し、そういう要素を残そうと思った。完璧にクリーンアップされた、ナイスすぎる作品ではなくてね。例えるなら、しばらく髪を切っていなくて、そろそろ切りに行こうかなと思わせるギリギリのところ。ちょっと乱れてコントロールのきかない感じが好き(笑)。つまりこれは、緊張感があって、腹の底から揺るがして、少しだらしない作品というわけだ。個人的に、今回のスターはトニー・レヴィンだと思っている。だから、許されるギリギリのところまでベースを上げてみた。実は、最初のミックスはこれよりもっとベースが大きかったんだ。バカみたいに大きかったとも言える。本当は、そっちも最高にカッコよくて気に入っていたんだけど、さすがにバランスを考えるとね。少し控えざるをえなかった。

──ところで、ライヴ盤としては珍しく全曲カットイン・カットアウトになっています。これの意図は?

ビル:えーっと、それはマスタリング・エンジニアの仕業だから僕にはわからない。

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