【インタビュー】鳴ル銅鑼、ポップな親しみやすさの中に毒と色気をはらんだ下剋上スピリットみなぎる四人組

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■自分の身の回りにあることしか歌ってないんです
■遠い未来とか遠い誰かとかじゃなくて


――それを経て、今回の3連続リリースへ至る。また違うモードに入ってきているということなのかな。

三輪:今回の3か月連続リリースは、僕がこうしたいと言ったよりは、メンバーやマネージャーが言ったことなので。僕が作り続けていた曲を送って、選ばれた曲たちという感じです。僕は全部シングルにするつもりで書いているので、どれがなってもいいと思っているし、それが今回選ばれて、ありがたい話です。

――見事にバラバラですよ。一発目の「狂言」がロカビリーっぽい歌謡ロック、ミュージック・ビデオを作った「イケスカナイ」がクールでファンキーなダンス・チューン、「ベスタ」が哀愁のギターロック。

三輪:曲のバリエーションが広すぎて、激しいロックな感じに行くのか、バラードに行くのか、お洒落なダンスミュージックに行くのか。選択肢が多すぎて、メンバーもマネージャーも「鳴ル銅鑼は次にどういうふうに見られたいか」という感じで決めるんだと思います。曲がいいという以前に。

――逆に言うと、それしかできない。

三輪:こっちは変わりようがないんで。でも「イケスカナイ」がリード曲に選ばれるとは、僕は絶対思っていなかった(笑)。暇つぶしというか、曲は特に思い浮かばないけど作った方がいいよなーという時期に、PCの編集の練習がてら作っていて。たまたま家に来たマネージャーがそれを聴いて、「それやろう」ということになった。こんな感じで(寝転がって)作ってたんですよ。

――やる気ないなあ(笑)。でも曲はかっこいい。

三輪:はい。僕もすごいかっこいいと思う。

――みなさんミュージック・ビデオを見てもらえると。かっこよくて、最後は怖いですよ。炎がブワーッて。

三輪:あれはガソリンをまいて、Zippoを投げて。

グローバル:ちょっと、ビビっとるもんね。


▲『SAKIGAKE』

――そうそう(笑)。投げたあと、ビクッとしてるのが面白い。でも「イケスカナイ」はメッセージ的にも鳴ル銅鑼の本質を突いてると思っていて、「なめんなよ、気に入らねえ」っていう反抗スピリットが思いっきり前面に出ているでしょう。

グローバル:いつもの和也が出ていますね。ストレート。

三輪:“手首の傷が増したって/別に知らないフリもできるんだよな”は、我ながらかっこよすぎるな。そんなこと、この邦ロックの詞でよう言えるな?って。

グローバル:“袋の鼠が集まって/一纏めに燃やして次の種へ”とか、右向け右な奴全員死ねってことでしょ。お前ら、仲良しこよしでやってんじゃねえよって。

三輪:別にそれを駄目だと言ってるわけじゃなくて。ステレオタイプに対するアンチテーゼで、その中で消されてしまう個性がもったいないというか。

グローバル:本当に嫌いってわけじゃない。だから音楽の土台に立って言うんですよ。

三輪:そうそう。馬鹿のフリは馬鹿同士でやってくれたらいいし、僕はもう馬鹿は飽きたから、賢くなろうと思いますという歌なんで。賢くなりたい人は一緒に賢くなったらいいし、馬鹿のままでいたい人はそれでいいと思いますけど、僕はもう相手にしないですという歌なんで。鳴ル銅鑼らしいと思います。

――「俺」と「おまえら」を鋭く対立させて「どう思うんだ?」と突きつける。鳴ル銅鑼ってそんな歌詞が得意でしょう。

三輪:メロディが乗っていなかったら、自己啓発本になっちゃうような内容が多いんで(笑)。

グローバル:「イケスカナイ」は特にそうだよね。

三輪:自分の身の回りにあることしか歌ってないんです。遠い未来や遠い誰かじゃなくて、身の回りの大事なもの、嫌いなもの、好きなものの曲しか書いていないから。

グローバル:しゃべってる感覚に近くなるよね。

三輪:そう。だから僕の言葉は、人に届くのが速いと思うんですよ。非現実ではなくて、みんながどこかで思ってることだったり、それが僕の場合はこういう不満だったり怒りだったりするけど。

グローバル:悲しさだったりね。恋愛もそう。

三輪:そう。終わることへの欲望とか、カタルシスとか。すごく近いことを歌っていると思います。

――「ベスタ」もそうだよね。“未来を君だけのものにできるよ”と歌っておきながら、最後に“冗談さ”で全部ひっくり返すという。

三輪:きれいごとだけではやっていけないのは、みんなも僕もわかっているから。

グローバル:泥水すすっているからね。

三輪:本当にできることなんですよ。未来を自分のものにすることは。でも、「できない」と思ってやったほうが、いいことだと思うから、あくまで僕の言ってることは冗談ですよと。だけど、どこかで絶対できる瞬間があると思っているという、そういう歌です。


――微妙なところだけど。わかる。

三輪:嘘はつきたくないんで。きれいごとだけでは、きれいなだけで終わってしまうんで。汚いものがちゃんとないと。鳴ル銅鑼は、正直に歌を歌ってるだけだと思いますけどね。

――あと、そうそう、「狂言」で、近松を引用してるでしょ。

三輪:わー。さすが。初めて言われました。うれしいです。

――“あだしが原の道の霜”。なんか聞いたことあるなーと思ったら、「曾根崎心中」だよね。

三輪:ふと出てきたんですよ。メロディを歌ってる時に、“あだしが原の道の霜”というのがハマって出てきて。これって誰やっけな? そうだ、近松やと思って、引用しました。

グローバル:降りてきたんや。語呂が良かった。

三輪:意味合いもすごくいい。死ぬことは致し方がないという、あだしが原に毎年霜が降りるのと同じように、死にゆくことは自然なことですみたいな。降りてきたというか、近松さんが僕に文学的にすごいパンチラインを残してくれたから、近松さんがすごい。

――文学、好きですか。

三輪:大好きです。

――CDの4曲目に入ってる新曲「斜陽」も、太宰だし。前のアルバムの1曲目の「兆し」にも“風立チヌ”というフレーズがあったし。絶対好きだろうなって。

三輪:不思議なもので、この4曲を作るにあたって、最近本を読まないようにしていたんですよ。文学的になりすぎずに、もっと人間的な曲を歌いたかったから。もっと人にわかる詞を書きたいと思って、できるだけ読まないで作ったんですけど、やっぱりどこかで出てきたりして、面白いなと思います。

――これから始まるワンマンツアーのタイトル「登楼」も面白い。遊郭用語でしょ。吉原とか。

グローバル:友達に、すごく登楼する子がいるんですよ。

三輪:自分で言うんですよ。風俗店の帰りに「登楼して参りました」って。

――文学的な人やね(笑)。

三輪:その響きが鳴ル銅鑼には合うなと思ったんですよ。極楽に向けて階段を上っていく、ライブハウスの階段を上っていく感じで。バンドとしても階段を上って、軽やかに遊郭へ遊びに行くみたいな感じのほうが、イメージが合うと思ったんですよ。

グローバル:ちょっとお洒落して。

三輪:勝負して一番になってやるとかじゃなくて、しゃあしゃあと「上へ参ります」みたいな。

グローバル:いい言葉よね、日本の。

――そうそう。鳴ル銅鑼は日本のいい言葉をよく使ってくれている。

三輪:それが合うのもバンドの武器ですから。そういう言葉を使って不思議じゃないというのも。

――そもそもバンド名の鳴ル銅鑼も、不思議に耳に残る日本語で。

グローバル:よくハードコアだと思われますね。未だにライブハウスで「ハーコーかい?」って言われる(笑)。

――映画から取ったんでしたっけ。

三輪:そうです。『愛のむきだし』という映画で、感動したシーンがあって、“愛がなければ私は鳴る銅鑼”というセリフが出てきて。調べたら聖書の言葉で、語呂もいいし、意味合いも好きだったので、みんなで表記を考えてこれになりました。

――実はまだ生ライブを体感してないので。次のツアーには必ず登楼しますよ。

三輪:ぜひぜひ。すごくいいバンドなので。

――知っています(笑)。

三輪:最近、鳴ル銅鑼に対して、いいバンドだなって言葉がしっくり来るんですよ。かっこいいとかよりも、四人の感じがいいバンドだなって最近思います。もっと良くなることがわかってやっていて、その方法もつかんでるから、あとはそれを洗練していくだけという感覚があって。客観的に、ライブを見るのがすごい面白いタイミングなんだろうなと思いますね。

――今でしょ、と書いときますよ。

三輪:今が面白いと思います。のるかそるか、どっちもあるやん? ズボーンと売れてまいそう、というのと、いなくなってるかもしれない、というのと。

――あはは。危ないね。

三輪:急に「飽きた」とか言って辞めそう、みたいな。

グローバル:それで、四人で農業やってそうやね(笑)。

三輪:一瞬で辞めそうだなというのと、手の届かない人になってしまいそうだなというのと、どっちもある。そこが面白いんだろうなって、勝手に思っています。

取材・文●宮本英夫


リリース情報

『SAKIGAKE』
11/3リリース
TPDR-0025 1200円(税込)
1.狂言
2.イケスカナイ
3.ベスタ
4.斜陽

ライブ・イベント情報

<鳴ル銅鑼 ワンマンツアー「登楼」>
2018.11.3(土) 大阪・福島2ndLINE
2018.11.17(土) 新栄APOLLO BASE
2018.11.24(土) 下北沢SHELTER

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